CO2削減とエネルギー供給
その2:CO2排出削減のための国内一次エネルギー供給

1.はじめに

化石燃料によるエネルギーの供給が生活の豊かさを支えています。温暖化対策では、必要なエネルギーの供給を確保しながら、この化石燃料をCO2が発生しない非化石燃料に置換する必要があります。今回は、2030年のCO2削減26%と2050年の80%削減のための一次エネルギー供給の構成について解説します。

2.基準年(2013年)のCO2排出量と2030年・2050年のCO2削減目標

CO2の排出は、エネルギー供給に伴うものと、工業プロセスや廃棄物等から発生する「その他」に分類されます。国内では、化石燃料のエネルギー供給に伴うCO2発生がCO2発生量全体の約94%を占めています。そのため、温室効果ガスであるCO2削減を目的とする場合には、化石燃料の供給量を削減することが必要となります。

図2-1に、日本のCO2削減目標と一次エネルギー供給の見通しを示します。一次エネルギーには、石炭、石油、天然ガスの化石燃料と、原子力、再生可能エネルギー(再エネ)の非化石燃料があります。

図で、CO2排出量は、基準年の2013年に13.1億トンでした。メタン等を含めた温室効果ガス全体の排出量は、CO2換算で14.1億トンになります。ここでCO2換算とは、7種類の温室効果ガスの排出量に、それぞれの地球温暖化係数を乗じた値の合計です。メタンを含むその他温室効果ガスの排出量の実測値は全体の約0.1%ですが、温室効果係数がCO2に対して大きいので、CO2換算で表示すると約1億トンの排出量となります。(注:地球温暖化係数とCO2換算に関しては、「CO2削減とエネルギー(その1)」を参照ください。)

日本は、パリ協定の中で2030年度に温室効果ガスを26%削減することを表明しています。この26%は温室効果ガス全体の削減目標ですが、ここでは排出量が大きいCO2に注目して削減の方向性を考えてみましょう。基準年である2013年度の13.1億トンから26%のCO2を削減するためには、2030年度のCO2排出量を9.7億トンに抑えることが必要です。また、2050年度のCO2削減目標は80%なので、CO2排出量を2.6億トンに抑える必要が有ります。厳密には森林等のCO2吸収源の効果を考慮するので、その分はCO2排出量が多くても良い計算となりますが、ここではCO2の排出量の抑制のみで削減目標を達成する場合を考えます。CO2排出量を削減するためには、一次エネルギーに用いる化石燃料の供給量を抑えて、CO2排出が少ない非化石燃料に置換する必要があります。

3.基準年(2013年)の国内一次エネルギー供給

図2-1から2013年度の国内の一次エネルギー供給は、合計で20,999ペタジュール(PJ)です。ジュール(J)はエネルギーの単位で、ペタ(P)は10の15乗を意味します。ペタジュールと聞いてもピンと来ないと思いますが、20,999PJのエネルギーを全て石油で補う場合に、国内最大級の30万トン級タンカー(全長が約330メートルで東京タワーの高さとほぼ同じ長さ)を約1,700隻も使用して運ぶ石油量に相当します。ドラム缶だと約25億本に匹敵する量です。

合計20,999PJの一次エネルギー供給の内訳を見ると、多い順に石油が42.8%、石炭が25.1%、天然ガスが24.2%、再エネが7.5%、原子力が0.4%です。この内で、石油、石炭、天然ガスがCO2を排出する化石燃料であり、一次エネルギー供給の92%の19,340PJを占めています。一方で、非化石燃料の再エネと原子力は8%の1,659PJです。東日本大震災の影響で原子力発電の稼働が停止していたこともあり、基準年の2013年度は一次エネルギー供給の92%を化石燃料に依存していました。この結果として、例年よりも多い13.1億トンのCO2が排出されています。

4.2030年の国内一次エネルギー供給の見通し

パリ協定における貢献として、日本は2030年に26%の温室効果ガスの削減を表明しており、そのシナリオが日本政府から公表されています。図2-1に示す通り、このシナリオでは2013年度の基準年に対して、エネルギー利用効率等を改善することで、2030年度の一次エネルギー供給の総量を18,719PJに削減します。その上で、化石燃料を2013年の19,340PJから14,226PJに減らします。化石燃料を削減した結果として、2013年度に対して2030年度に26%のCO2削減を目指します。

削減した分の化石燃料のエネルギーを補填するためには、非化石燃料による一次エネルギー供給が必要です。国のシナリオでは、非化石燃料を2013年の1,659PJから2030年度には4,493PJに増やす計画です。この非化石燃料の内訳は、再エネが13~14%、原子力が11~10%です。即ち、再エネでは、2013年度の約1,600PJから1,000PJを増やして約2,600PJに増やす必要が有ります。この1,000PJの一次エネルギーを100万kWの火力発電所への供給量に例えると、実に13基分への供給量に相当します。

再エネの供給だけでは不足する分は原子力を用いることになります。そのため、2030年度の原子力による一次エネルギー供給は約1,900PJです。この数字は、2000年代には原子力で約2,800PJを供給した実績があることから考えると、技術的には問題のない供給量です。

5.IEA-ETP2017におけるCO2削減のシナリオ

2050年度を考えてみましょう。地球温暖化対策計画の中で「地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す。」と定めています。また、2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」の中で「エネルギー転換・脱炭素化に向けた挑戦を掲げ、あらゆる選択肢の可能性を追求していくこと」と記載されています。このように方針は決まりましたが、一方で2050年に向けたシナリオの検討は緒に就いたばかりです。複数の研究機関から2050年のシナリオが報告されていますが、政府から2050年の一次エネルギー供給の見通しは公表されていません。

そこで今回は、国際エネルギー機関(IEA)が発行した「エネルギー技術展望2017」(ETP-2017)のCO2削減シナリオを参考にして試算しました。図2-2に、IEA-ETP2017のCO2排出シナリオを示します。図で、RTSとはパリ協定における各国の削減目標に基づくCO2排出量の予測で、2DSは2℃目標を実現するためのCO2排出のシナリオです。従って、2℃目標を実現するためには、RTSのCO2排出量(図の上限の線)から2DSのライン(図の下限の線)まで、CO2排出量を削減することが必要です。

IEA-ETP2017では、2℃目標のシナリオを実現するためのCO2削減の方法として、35%を再エネが、14%をCCS(CO2回収・貯留)が、5%を燃料転換が、40%を効率改善が、そして5%を原子力が担うと予測しています。この数字は世界全体での平均値であり、自国に適用する場合にはそれぞれの国の事情を考慮する必要が有ります。

6.2050年の国内一次エネルギー供給における燃料構成

2050年度に80%のCO2削減を達成するためには、CO2排出量を2.6億トンに抑制することが必要です。そのためには、従来通りに使用する化石燃料の供給を約3,800PJまで削減しなければなりません。そこで、化石燃料が3,800PJのみ供給されることを前提として、2050年度の国内一次エネルギーの構成を上述のIEAの削減シナリオを参考にして試算しました。

図2-1に試算の結果を示します。図で、先ず効率改善により40%に相当する約6,000PJのエネルギー供給が削減されます。その結果として、2050年度の一次エネルギーの供給量は約12,800PJとなります。一方で、この40%削減は省エネ技術が十分に普及していない発展途上国も含む世界全体での平均値です。従って、省エネ対策が進んでいる日本で40%削減を達成することは容易では無いと推察します。その場合には、2050年度の一次エネルギー供給は12,800PJよりも大きくなります。日本の省エネ技術が世界トップレベルであることを考慮すると、一次エネルギー供給が12,800PJよりも大きいと考える方が妥当かも知れません。このことを理解した上で、今回はIEAのシナリオに沿って2050年の一次エネルギー供給は12,800PJであると仮定して話を進めます。

必要となる一次エネルギー供給量の約12,800PJの内、約3,800PJは化石燃料で供給します。残りの約9,000PJに関しては、CO2を排出しない燃料で供給することになります。前述のIEAの削減シナリオに従うと、この9,000PJの内、非化石燃料である再エネで約6,000PJ(35%)、原子力で約900PJ(6%)を供給します。加えて、化石燃料を使用しつつ発生したCO2を回収して地下に貯留するCCS(CO2回収・貯留:CO2 Capture & Storage)と言う技術で約2,100PJ(14%)を供給します。この結果として、2050年の一次エネルギー供給12,800PJの内、9,000PJがCO2排出しない燃料となり、目標のCO2削減80%を達成することが可能となります。

化石燃料の種類をCO2排出係数が小さい天然ガスに切り替える燃料転換により、化石燃料分の3,800PJを増やすことが可能です。仮にIEA-ETP2017のシナリオに従いCO2削減の5%を燃料転換で行う場合には、更に約450PJが増えて化石燃料で約4,250PJを供給することになります。その増加分で、非化石燃料の供給量を減らすことが可能です。

(客員研究員 風間伸吾)

(2020年4月24日アップロード)


CO2削減とエネルギー供給 

その1:地球温暖化とCO2の排出削減

その2:CO2排出削減のための国内一次エネルギー供給

その3:CO2削減シナリオの実現に向けた取組み

その4:再生可能エネルギーの開発とエネルギー自給率の向上