フードロスとプラスチック包装

1.フードロスと食料援助

節分の時期になると恵方巻の大量廃棄のニュースが流れてきます。他にもおせち料理やクリスマスケーキ等の縁起物やお祝い事のために作られたものは注目度も高く、イベント後の食品ロス(フードロス)が社会問題化しています。

2016年1月1日に発効した国際連合の“持続可能な開発のための2030アジェンダ”に掲げられた“持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals(SDGs)”に、“12.つくる責任 つかう責任”があります(図1参照)。この中のターゲットに“12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおけるフードロスを減少させる。”とフードロスが項目立てされています。フードロスの状況として、“世界生産の3分の1にあたる約13億トンの食料が毎年廃棄されている。”という報告もあります(国連食糧農業機関(FAO)“世界の食料ロスと食料廃棄”(2011年))。

日本国内の情報は、農林水産省のホームページ“食品ロス・食品リサイクル(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/)”に詳細にまとめられていますので閲覧してみることをお奨めします。ポイントを抜き出してみると、農林水産省は食品リサイクル法と廃棄物処理法に基づく平成27年度推計データから、フードロスは646万トンと割り出しています。内訳は、事業系廃棄物と有価物を合わせて357万トン(55.3%)、家庭系廃棄物で289万トン(44.7%)です。前者では野菜等の規格外品、納品後の返品、お弁当の売れ残りやレストランでの食べ残しが、後者では自宅での食べ残しや冷蔵庫にしまっておいて結局食べなかったものが主とのことです。“国民1人1日あたりのフードロス量は約139グラムで、お茶碗1杯のごはんの量に相当する。”と示しています。そして、“国内フードロス量646万トンは、国連WFPによる2015年の世界全体の食料援助量約320万トンよりも2倍も多い。”、また、“世界人口の約8億人(世界の9人に1人)が栄養不足と言われています。”と、食料援助の規模と比較しています。

実際に行われている色々なフードロス削減のキャンペーンでは、「もったいない。」というのと、「食べ物を必要としている人に届けたい。」という人々の気持ちをつなげようとしています。

図1:SDGs 12番 “つくる責任 つかう責任” のロゴ

2.食料安全保障と環境・エネルギー問題

日本は食料を海外からの輸入に大きく頼っており、食料自給率は38%しかありません(農林水産省平成29年度食料需給表:カロリーベース)。今後も食料を海外から安定して輸入できるとは限りませんので、食料安全保障の面からは、フードロス率を下げつつ、安定した食料の確保に努める必要があります。

一方、環境・エネルギー問題の観点からみると、例えば農業生産から加工・販売、その流通過程でもエネルギーを使用しており、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量の増加につながっています(図2参照)。せっかく作った食料を廃棄するということは、CO2も無駄に排出されてしまったことを意味しています。そして廃棄する時には処理費用も発生します。

農業では大量の水を使います。また畜産では飲み水だけでなく穀物をえさとして与えます。2025年に世界で一年間に使用する水の量は4,912 km3、その内で農業用水は3,162 km3(64%)を占め、工業用水1,106 km3(23%)と生活用水645 km3(13%)を合わせた量の2倍近くになると見積もられています(平成14年度農林水産省パンフレット“世界のかんがいの多様性”(2002年))。

水需要のひっぱくしている状態の程度を水ストレスとよび、人口1人あたりの最大利用可能水資源量を指標とし、地域毎に水資源が十分にあるか不足しているかを判断しています。経済協力開発機構(OECD)は、2050年には、“淡水はより一層入手困難になり、アフリカの北部と南部、南アジアと中央アジアを中心に、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は、現在より23億人増加すると予想される(世界人口の40%以上)”と述べています(OECD Environmental Outlook to 2050(2012年)ISBN 978-92-64-122161)。

食料を大量に輸入するということを、生産地にある海外の水を大量に使用していることと同じであると捉える考え方があります。輸入している食料等を、仮に自分の国で生産したとしたときに用いる水の量に置き換えたとします。このときの水のことを仮想水(バーチャルウォーター)とよび、貿易で移動する水の量を数値化しています。食料自給率の低い日本は、水の輸入大国でもあるということです。輸入した食料を廃棄するということは、輸入した水も無駄に廃棄してしまったことを意味しています。

図2:農業生産から廃棄処理までの流れの例

3.プラスチック包装とバリア機能

食品衛生法によると、消費期限は“製造又は加工日を含めておおむね5日以内の期間で、品質が急速に劣化しやすい食品に表示”し、賞味期限は“期限表示をする食品であって消費期限を表示する食品以外の食品に表示”されます(図3参照)。すなわち食品は大きく二つに分類されており、お弁当やサンドイッチ等のいたみやすいものには消費期限を、スナック菓子やカップ麺のように長くもつものには賞味期限を表示しているということです。ここで注意しなければならないことは、スナック菓子やカップ麺も開封するとその瞬間から劣化が速まりますので、お弁当やサンドイッチ等と同じように早めに食べないと腐ってしまうことです。

プラスチック包装と一括りにされていますが、その役割は多岐にわたり適材適所の考え方で使用されています。消費期限と賞味期限の視点から説明してみます。

消費期限が表示されているお弁当やサンドイッチ等のいたみやすいものでは、食べるまでの衛生面や安全面が重視されています。例えば、調理してから輸送中に異物が混入されないか、店頭で不特定多数の人が触っても中身が保護されるか、飛来してきた虫・微生物・ほこりから中身が保護されるか、透明フィルムで中身の変化を目視で確認できるかが挙げられます。夏場は暑いので食品が腐り易く、梅雨の時期は湿度が高いので食中毒が起こり易いというように温度と湿度が影響してきますが、この点では消費期限が表示されている商品向けのプラスチック包装はあまり効果がありません。むしろ輸送中や店頭・倉庫での温度と湿度の管理をしっかりし、買ったら早めに食べることが大切です。

一方、賞味期限が表示されているスナック菓子やカップ麺のように長くもつものも、同じく食べるまでの衛生面や安全面が重視されています。それに加えて、長く保存できるバリア機能が付与されています。ほとんどの場合、製造・加工時に微生物の繁殖を抑えるために殺菌、静菌か除菌のいずれかの処理が施されています。図4にプラスチック包装の基本スタイルの例をまとめます。お弁当やサンドイッチ等のようにテープで留めてあるのではなく、どれも密封されています。袋状のパウチといわれるものとトレイ状やカップ状の容器での利用が一般的です。

乾燥食品を湿気からバリアする、逆に含水食品の乾燥をバリアするものから、真空保存で酸化を引き起こす酸素をバリアするもの、乾燥食品に不活性ガスの窒素ガスを充填し酸素や湿気からバリアするものがあります。乾燥したものですと湿気てしまうと食感に影響するだけでなく、水蒸気が入ると微生物が繁殖しやすくなるためバリアしています。食品は有機物ですので、中には紫外線等の光に弱いものもあり、光をバリアするものもあります。身近な例として、ポテトチップスを思い浮かべていただけるとイメージが湧くのではないでしょうか。その他にもコンビニやスーパーの商品がどれに当てはまるかイメージしてみてください。

お弁当のカレーは1日でいたんでしまいますが、殺菌処理を施したレトルトカレーはバリア機能で1年以上もつようになります。しかし開封したらそこからお弁当のカレーと同じようにいたみだしますので、早めに食べることが大切です。賞味期限は開封しない状態で大丈夫な期間を示しているということです。

また、発酵食品やフルーツも時間と共に変わっていきますが、「食べごろ」があり、個人の好みが加わってきますので、適切な包装のあり方の議論は難しくなります。

図3:消費期限と賞味期限のイメージ
図4:プラスチック包装の基本スタイルの例

4.素材のコラボ

プラスチックで包装されている商品を裏返すと、リサイクルをイメージした識別マークが表示されています。狙いは、消費者がごみを出すときの分別を容易にし、市町村の分別収集とリサイクルを促進することにあります。

プラスチック包装は、ポリエチレンやポリプロピレンのような一つの素材だけで利用するだけでなく、複数の素材のフィルムを貼り合わせて積層させるラミネート加工がされているものがあります。図5にプラスチック包装に使用されている基本ユニット構造の例を示します。この基本ユニットを組み合わせて積層されています。イメージとしてはミルフィーユのような構造で、個々の素材の機能を合体させて単独では得られない特性を発現させており、中には5層以上積層させているものもあります。素材のコラボのようなものです。プラスチック同士だけでなく、レトルト食品向けのようにアルミ箔を貼り合わせているものや、牛乳パックのように紙を貼り合わせているものもあります。単一素材と比べてリサイクル工程が増えますので、リサイクルし易い包装デザインに変更していく等の効率的なリサイクル方法について議論がなされています。

生分解性プラスチックフィルムが積層されているものもありますが、廃棄時の生分解性を期待しての利用ではありません。複合材ですので、そのまま土に埋めても分解せずに残ってしまうからです。枯渇性資源である石油を出発原料とするのではなく、再生可能資源(非枯渇性資源)であり光合成の過程でCO2を吸収して育つ植物からできたエタノールを出発原料としている点、すなわち枯渇性資源の使用量の削減とCO2排出量の削減の両立を目指しての利用です。

図5:プラスチック包装に使用されている基本ユニット構造の例

5.おわりに

日本では、単身者の増加や高齢化の進行などにより、お弁当や総菜を購入して食べる人が増えています。結果として販売される品数も増加し、お店での売れ残りや賞味期限前の返品も増えてフードロスにつながってしまっています。気象情報や常連さんの嗜好(しこう)等の情報を基に、食品の品質や物流の管理を、IoT(Internet of Things)やAI(Artificial Intelligence)の導入でより効率的に管理をし、フードロスの削減につなげる活動も出てきております。

5年後、10年後は、また今とは違ったライフスタイルになっていることでしょう。上述した個別の側面を俯瞰的に眺めてつなぎ、社会システムやライフスタイルも含めて議論を深める必要があると考えます。時代と共に求めるものが移り変わっていくことから、私達は常に柔軟かつ広い視点で地球に優しいプラスチック包装を考えていき、SDGsの目標達成に貢献する活動を進めます。

皆さん、ぜひ私達の取り組みに協力してください。

(永井一清)

(2019年4月4日アップロード)