2024年度行事報告
シンポジウム 図書館のしごとを伝える
2024年6月8日(土)、明治大学和泉キャンパス第一校舎にて「2024年度 明治大学図書館情報学研究会 シンポジウム 図書館のしごとを伝える」が開催されました。今回のシンポジウムでは、本学の卒業生である東京大学附属図書館の山口美咲氏と、東京都立中央図書館の高橋茉由理氏にご報告いただきました。参加者は本学司書課程・司書教諭課程の受講生を中心に62名に上り、本学同課程の青柳英治専任教授の開会挨拶の後、報告に移りました。
山口氏は「大学図書館を取りまく状況」と題し、現在自身が担当している仕事である、学習や研究を進めていくために必要な情報の使い方、探し方を支援する「学術情報リテラシー担当」についてお話いただきました。多岐にわたる仕事を担当していること、その中には講習会の実施やデータベース・Webサイトの管理、広報・リーフレットの作成なども含まれることを、説明いただきました。さらに、学術論文等のオープンアクセスのあり方やプレプリントの扱い方など学術情報の動向、AI技術等への対応といった図書館の現場で重要と考えられる事柄も紹介されました。
高橋氏は「実際、図書館司書って何してるの?」と題し、自身が勤務する図書館での司書としての仕事を中心にお話いただきました。多くの資料を所蔵する都立図書館では、都内の図書館を支援することや開架資料の選定など仕事が多岐にわたるそうです。また、レファレンスサービスでは、司書は「答え」そのものではなく、その情報源を複数明示することの必要性を強調されました。さらに、国内外の先進的な図書館の状況、デジタルアーカイブや著作権法改正による公衆送信サービスといった新たな動向についても紹介されました。
報告後、データベースのメンテナンス、レファレンスの仕事について報告者間で意見が交わされ、大学図書館と公共図書館の仕事の共通点や相違点が確認されました。質疑応答では、図書館の社会的役割・意義とは何か、「コロナ禍」を契機としたサービス活動等の変化、学生時代にやっておくべきこと、入職後のスキルアップの状況などについて、多様な質問が寄せられ、報告内容の理解が進みました。報告者並びに参加者の皆様、ご協力ありがとうございました。
文責:佐藤 大雅(明治大学大学院)
第1回例会図書館における生成AI活用の可能性
2024年7月6日(土)、明治大学和泉キャンパス第一校舎にて「明治大学図書館情報学研究会2024年度第1回例会」が開催されました。今回の例会では、「図書館における生成A Iの活用の可能性」と題し、鶴見大学名誉教授の角田裕之氏にご講演いただきました。参加者は本学司書課程・司書教諭課程の受講生を中心に34名に上り、本学文学部の齋藤泰則専任教授の開会の挨拶の後、角田氏の講演に移りました。
講演では、角田氏が現在研究している、「生成AI」というテーマの中で、とくに「対話型AI」に焦点を当てて、実際に生成AIを使いながら、図書館利用における現状や課題についてお話しいただきました。前半では、生成AIとはどのようなものであるのか、生成AIに活用の可能性を尋ねた結果や図書館での導入事例に関してお話しいただきました。後半では、「Chat GPT」、「Copilot」、「Gemini」の三つの生成AIを用いて同じ質問をした際にどのような回答を示すのか、画像を添付しながらの書誌記述や標目の作成、分類記号の付与は可能であるのか実演をしながらお話ししていただきました。実演の際には、成功と失敗のどちらもあり、それぞれ回答内容も異なりました。その中で、AIの特性を把握し使いこなすスキルの必要性や典拠などの情報の正当性に関する指摘に加え、1年でAIが進化していることを述べられました。また、ルールを細かく提示した場合では分類記号の付与が正確に行われることが示され、図書館業務の代替の可能性についても指摘されました。
質疑応答では、本の見た目からの情報検索や分類付与以外での業務代替の可能性、AIを利用した童話作成、図書館界としてのデジタル化の働きかけなどが質問にあがりました。これらの質問の中で、角田氏はAIの得意分野を活かした創作活動などの試みなどについて補足されました。本講演では、近年注目度が増している生成AIの現状や課題を知る良い機会となりました。角田氏をはじめ、参加者の皆様、ご協力ありがとうございました。
文責:古石 華子(明治大学大学院)
第2回例会図書館とゲーム −イベントとアーカイブ−
2024年11月9日(土)、明治大学和泉キャンパス第一校舎にて「明治大学図書館情報学研究会2024年度第2回例会」が開催されました。今回の例会では、「図書館とゲーム-イベントとアーカイブ-」と題し、上田女子短期大学専任講師の井上奈智氏にご講演いただきました。参加者は本学司書課程・司書教諭課程の受講生を中心に34名に上りました。本学図書館情報学研究会会長の齋藤泰則先生(本学文学部専任教授)による開会挨拶の後、井上氏の講演に移りました。
講演では、井上氏の関心分野である「図書館とゲーム」というテーマで、図書館がゲームを収集、提供することの意味合いなどについてお話いただきました。ゲームを取り上げる背景として、付属する説明書を介して遊び方を理解することで、文字を読む機会の一つになっていること、モチーフに歴史や神話などが使われていることが多いことから、ゲームの関心を読書に繋げられる可能性があること、などが挙げられました。公共図書館などでゲームイベントを実施している例もあり、イベント参加者の中には初めて図書館に来た人もいるなど、イベント開催が来館のきっかけとなっていることも紹介されました。
また、海外の図書館では、デジタルゲームを置く館があることにも触れ、日本との違いも説明されました。ゲームを収集・保管することに関してはハードルが高いものの、ゲームを使ったイベントを開催することは比較的容易であり、今後イベントを実施する館が増えてくるだろうとも述べられました。
後半では、実際に本を用いたゲームを体験する機会も設けられました。数人のグループをつくり、出題者を一人決め、他の参加者は出されたお題に合う答えを手持ちの本から一文抜き出し解答する大喜利形式のものでした。世代を問わず参加しやすく、異なる視点で本を読むことで新しい発見もありました。さらに、グループ間で本を交換しながらゲームを進めていくので、普段読まないジャンルの本にも触れる機会にもなっていました。
本講演は、図書館とゲームとを組み合わせることで、図書館サービスに新たな視点を得る良い機会となりました。井上氏をはじめ、参加者の皆様、ご協力ありがとうございました。
文責:古石 華子(明治大学大学院)