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第1回例会 国会図書館史の時代区分 役割の二重性を手がかりに

2021年6月23日(水)、「2021年度明治大学図書館情報学研究会第1回例会」が明治大学和泉キャンパス第一校舎にて開催されました。今回の例会では、「国立国会図書館70年史の時代区分:役割の二重性を手がかりに」というテーマのもと、慶應義塾大学非常勤講師の小林昌樹氏にご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生29名で、本学司書課程・司書教諭課程の三浦太郎氏の開会挨拶ののち、小林氏の講演に移りました。

はじめに、小林氏が国立国会図書館(以下、NDL)に入省した1992年と退官した2021年では、館内の雰囲気が大きく変わっていたこと、また、その間のNDLで起きた出来事や制度の改廃について説明されました。そこから、NDLが2021年に出版した3回目の正史『デジタル時代の国立国会図書館 : 1998-2018 : 国立国会図書館七十年記念館史』について触れ、正史には記載されていない事件や事業について把握することで、70年に渡るNDLの歴史を俯瞰的に通覧することをできるのではないか、と述べられました。

講演の前半では、NDLが設置されるまでの歴史的な経緯や、制度的な特徴について説明されました。NDLはナショナル・ライブラリーの機能として、国内出版物の収集や全国書誌の作成、国内ILLや国際交換など全国的なサービスがあります。また、首都圏の「参考図書館」として図書館を開館することが業務の大半となっています。一方、国会付属の「専門図書館」としての機能もあり、NDLは国立図書館と専門図書館の二つの館種を持つ図書館であると説明されました。講演の後半ではNDLの70年間を、事件、事業および政策、首脳陣、部局編成に基づいて、Ⅰ期からⅥ期に分けて、事件や事業・政策がそれぞれの時代にどのような影響をもたらしていたのか触れつつ、NDLの70年史を振り返りました。

講演後の質疑応答では、国立国会図書館における司書資格の扱いや、職員の雰囲気や考え方に関する質問などが寄せられました。今回の講演では、これまでのNDLの歴史だけでなく、館種の二重性などNDLの抱える課題についても知ることができ、国立図書館としての役割についても考える良い機会となりました。講演者・参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

第2回例会 書誌作成と文献探偵

2021年12月11日(土)、「2021年度明治大学図書館情報学研究会第2回例会」が明治大学和泉キャンパスメディア棟にて開催されました。今回の例会では、「書誌作成と文献探偵」と題し、中西裕氏にご講演いただきました。本学の司書課程受講生を中心に27名(学生24名、一般3名)が参加し、本学司書課程・司書教諭課程の齋藤泰則氏の開会挨拶ののち、中西氏の講演に移りました。

はじめに、中西氏はこれまでの経歴とともに書誌編集に関わってきた『日本古書通信』や「レファレンスクラブ」、『書誌年鑑』について紹介されました。書誌とは「文献のリスト」であり書誌データや書誌事項とは異なること、また、「一覧性」が特徴であると説明されました。書誌データは主に図書館で収集し、お一人で編集作業をされていたそうで、実際に出来上がった書誌からは細やかな工夫や長きに渡る苦労を垣間見ることができました。

また、講演後半は「文献探偵」と題し、筆名から著者を確定していく作業についてもご紹介いただきました。シャーロック・ホームズなどの翻訳家で知られる「延原謙」を例に挙げ、「天岡虎雄」や「小日向逸蝶」、「大井六一」などの筆名が延原であるかどうかを検討した経緯を詳細にご説明いただきました。作品やインタビュー記事を比較するだけでなく、延原が所属していた学会の名簿や住所などにも筆名のヒントが隠されており、それを紐解いていく様子はまさに探偵そのものでした。

講演後の質疑応答では、書誌データ収集の具体的な進め方に関する質問が寄せられ、講演全体を通して実際の書誌編集の様子や、筆名から著者を確定するまでの過程など、とても緻密な書誌の世界について知ることができました。講演者・参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

講演会 電子書籍及びデジタル単一市場における著作権法指令:教育、研究及び図書館の視点から

2021年12月4日(土)、「2021年度明治大学図書館情報学研究会記念講演」が明治大学和泉キャンパスメディア棟にて開催されました。今回の記念講演では、「電子書籍及びデジタル単一市場における著作権法指令:教育、研究及び図書館の視点から」と題し、英国ボーンマス大学のベンジャミン・ワイト氏にご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に58名(学生56名、一般2名)にのぼり、本学司書課程・司書教諭課程の齋藤泰則氏の開会挨拶ののち、ワイト氏の講演に移りました。

講演前半では、ワイト氏の自己紹介ののち、2019年に改正されたEUの「デジタル単一市場における著作権指令」について、情報解析の権利制限規定や著作権管理団体とのライセンス許可などについて説明されました。講演後半では電子書籍に焦点を当て、特に図書館で貸し出す場合の課題についてお話されました。電子書籍は印刷媒体に比べ購入価格が高いことや、一定の貸出回数を超えると再度、購入し直さなければならないこと、セット売りでなければ購入できない場合もあり、図書館が自由に蔵書構築できない点も問題であると指摘されました。

講演後の質疑応答では、イギリスの図書館における複写の状況や、国際図書館連盟の電子書籍に関する動向についての質問が寄せられました。今回の講演では、ヨーロッパにおける著作権の動向や図書館での電子書籍の扱いについて、ヨーロッパや日本の著作権法とともに学ぶことができました。講演者・参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

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