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第1回例会 学校司書の仕事

2017年7月8日(土)、明治大学和泉キャンパスメディア棟において、「明治大学図書館情報学研究会第1回例会」が開催されました。今回の例会では、東京都立府中東高等学校で学校司書としてご活躍されている米澤久美子氏をお迎えし、「学校司書の仕事」をテーマにご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に、現職の図書館員の方などを含む48名(学生46名、一般2名)にのぼりました。

講演冒頭で米澤氏は、学校図書法や「学校図書館ガイドライン」をもとに、学校図書館の設置義務と、学校司書の役割について説明されました。学校司書の仕事における三つの柱は、「つなぐ・つたえる・あたえる」であるとし、図書館資料の収集から資料・情報の提供、そして教育活動全般の支援まで、実際の仕事内容について年間スケジュールとともに紹介され、学校司書の仕事はすべて、学校における授業や行事の流れに対応していると述べられました。

続いてより具体的な例として、米澤氏が行った学校支援の内容や、学校図書館で生徒や教員から受け付けたレファレンス事例について紹介されました。中でもレファレンス事例に関しては、実際に受け付けたレファレンス質問と、それに対する米澤氏の提案についても説明され、会話によって、生徒や教員が何を探しているのかを明確にしているということが分かりました。また、レファレンスを通じて把握した生徒や教員の背景や要求は、その後、学校図書館における選書の参考にすることが多くあると述べられました。

さらに、「都立府中東高等学校図書館20連発」と題し、都立府中東高等学校図書館で展開しているサービスや企画展示について、写真とともに詳しく紹介されました。また、都立府中東高等学校図書館での新たな取組みとして「進路ナビ」についても説明され、学校の特徴やカリキュラムに対応した図書館を作ることが学校司書の重要な役割のひとつであると指摘されました。最後に米澤氏は、学校司書としての採用はまだまだ狭き門ではあるが、ぜひ大学で勉学に励み挑戦してみてほしい、と学生たちに呼びかけました。

講演後の質疑応答では、「生徒へのおすすめ本はどのように選んでいるのか」「本を読まない生徒へのアプローチとしてどのような取組みをしているのか」「市立図書館や県立図書館とどのように連携しているのか」といった講演内容をより深化させた質問が寄せられました。今回の講演を通して、学生たちは学校司書の多岐に渡る仕事内容について学び、学校という場における司書の役割について深く考える機会となったのではないでしょうか。米澤氏をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

第2回例会 ラーニング・コモンズと大学図書館

2017年10月17日(火)、明治大学和泉図書館1階ホールにおいて、明治大学図書館との共催で「明治大学図書館情報学研究会第2回例会」が開催されました。今回の例会では、パリデジタル大学の共同創設者兼次長のジョン・オージェリ氏をお迎えし、「ラーニング・コモンズと大学図書館」をテーマにご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に、現職の図書館員の方などを含む121名(学生95名、一般26名)にのぼりました。

講演冒頭、オージェリ氏は、世界の大学におけるラーニング・スペースの実践例を写真とともに紹介し、革新的なラーニング・スペースは教室、レクチャーホール、そして図書館の観点で見ていく必要があると説明されました。シドニーで大学生を対象に行われた調査によると、学生は多くの時間をラーニング・コモンズで過ごしていることが明らかになっており、その習慣を見ても、ラーニング・コモンズのあり方を検討していくことが、大学において大きな課題になると指摘されました。

続いてオージェリ氏は、ラーニング・コモンズについてテクノロジーとデザインに着目し説明されました。図書館の中にアクティブ・ラーニングの教室が置かれているシアトルのワシントン大学で、LCDスクリーンの前にペンで書き込むことができるガラスが設置されている例を紹介されました。その利用頻度が高くないことから、ラーニング・コモンズは多くのテクノロジーを導入しているから良いという訳ではなく、デジタルとアナログが共存しているのが理想であると述べられました。また近年、ラーニング・コモンズではローテクノロジーを目指すトレンドもあり、人と人とのコラボレーションを実現することも、ラーニング・コモンズの重要な役割であると解説されました。例として、大学側がさまざまな機器やデバイスを用意するのではなく、学生自らラップトップやパソコンを持ち込む"BYOD: Bring Your Own Device"という発想や、学生の交流や学びのスタイルに合わせて、机の高さや椅子の種類を変えるデザイン面での工夫について紹介されました。さらに、従来型の図書館に見られる、個人で勉強するのに適した空間設計と、人と人の交流に適した空間設計の両方が共存する本学の和泉図書館のようなラーニング・コモンズは、非常に効果的であると解説されました。

最後に、ラーニング・コモンズの今後の展望として、魅力的なデザイン設計と、他では得られないサービスを展開してくことが重要であると述べられました。ITサポートデスクや映像収録できる部屋の完備、プレゼンテーションエリアの充実等により、学生を長く学内に留め、さまざまなコラボレーションをより活発なものにすると解説されました。

講演後の質疑応答では、「学生としてどのようにラーニング・コモンズを活用していけばよいか」等の質問が寄せられ、オージェリ氏には更に多くのラーニング・コモンズの実践例をご紹介いただいました。盛会のうちに例会を終えられましたこと、オージェリ氏はじめ、関係の皆さまに厚く御礼申し上げます。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

シンポジウム 図書館はいま

2017年10月21日(土)、明治大学和泉キャンパスメディア棟において、「図書館はいま」と題するシンポジウムを開催いたしました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に、37名にのぼりました。シンポジストには、本学出身の埼玉県立久喜図書館の星野翼氏、信州大学教育学部図書館の山口美咲氏、そして、福島県立会津高等学校の佐野有季子氏をお招きしました。本研究会会長の阪田蓉子氏の開会挨拶ののち、御三方にご講演いただきました。

星野氏は「公共図書館のいま:埼玉の活動事例をもとに」と題し、まず埼玉県立熊谷図書館と久喜図書館における、資料収集や展開している図書館サービスについて紹介されました。特に、埼玉県立図書館が“あなたの「調べる」を応援します”とスローガンを掲げ取り組む課題解決支援について、健康・医療情報サービスやビジネス支援サービス、それらに対応した展示やイベントの様子を、写真とともに詳しく説明されました。最後に星野氏は、市町村立図書館を支える県立図書館の役割についても解説され、県立図書館のミッションの多様化に伴う、広報の充実やその他専門機関との連携に関しても、取り組むべき課題と指摘されました。

山口氏は「大学図書館のいま」と題して、まず大学図書館とは学生と教員、職員のためにあり、学習・教育・研究に必要な環境を提供することがミッションであると説明されました。さらに、信州大学と附属図書館の特徴やサービス対象について解説され、これまでご自身が経験された仕事について、図書館員と大学職員、両方の立場を比較しながら詳しく紹介されました。また山口氏は、資料や利用方法の多様化、学習方法や大学・社会の変化にいかに対応していくかが大学図書館の課題であると述べ、図書館員としてそれらの課題に取り組む姿勢についても解説されました。最後に、図書館員として心がけるべきことや、やりがいについてもお話され、大学図書館の魅力を学生たちに語ってくださいました。

佐野氏は「学校図書館で働くこと:福島県での活動事例をもとに」と題して、学校図書館がもつ3つの機能について説明されました。具体的には、「読書センター」としての機能、生徒の主体的な学びを支援する「学習センター」としての機能、多くの情報源から求められる情報を選択・活用することを支援する「情報センター」としての機能です。また、学校ごとの特色によって学校図書館のあり方は異なるとして、各学校の実態に即して学校司書の力量が求められることも解説されました。特に、学校図書館が学校生活の中で機能し、活用されるためには、生徒や教職員との関わりを深く持ち、利用者の意見や要望を取り入れていくコミュニケーション能力が重要である、と指摘されました。最後に佐野氏は、学校図書館で働くことを目指す学生たちに向け、やりがいやその魅力に加え、学校司書に関する書籍等を紹介くださいました。

講演後の質疑応答では、採用状況や複数館体制の経緯、今後の図書館の課題といった講演内容をより深化させた質問が多数寄せられました。今回の講演を通して、学生たちは3つの館種の現状について学び、さまざまな側面を持つ司書や図書館員の役割について深く考える機会となったのではないでしょうか。ご講演者の方々をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

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