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第1回例会 韓国の図書館事情

2011年6月27日(月)、明治大学リバティータワーにおいて、「2011年度明治大学図書館情報学研究会第1回例会」が開かれました。テーマは、「韓国の図書館事情」とし、本学大学院文学研究科研究生(韓国国立中央図書館在職)の曺在順(ジョ ジェスン)氏に、韓国における図書館事情を多様な側面からご報告いただきました。参加者は、本学の司書課程・司書教諭課程履修者や本研究会会員を中心に87名に上りました。

講演では、まず、韓国の図書館関連法規について、それぞれの概要などが紹介され、日本の図書館法との相違点を知ることができました。次に、韓国の図書館政策について、大統領直属の機関である「図書館情報政策委員会」主導のもと、政策のひとつである「図書館発展総合計画」が実行された状況などが説明されました。さらに、韓国の司書資格制度を3つの区分(1級正司書、2級正司書、準司書)から捉えた上で、司書養成教育機関の類型と設置数、司書資格証の発行状況などがデータとともに紹介されました。韓国における司書職制度が体系的に構築されている状況を理解できました。最後に、ご自身の勤務先である、韓国国立中央図書館が推進するデジタル図書館の概況と、そうした事業を実現するための著作権法改正について解説がなされました。

質疑応答では、講演の結びとして提示された、韓国の図書館界を取り巻く諸課題を踏まえて、講演者と参加者たちとの間で活発なやり取りが交わされました。講演は、自身の研究テーマを探求する研究者としての視点を含め、国立図書館の職員としての実務経験に裏打ちされた説得力のある内容となっていました。そのため、司書課程・司書教諭課程で学ぶ現役の学生たちにとっては、直接に海外の図書館事情を知ることができた貴重な機会となりました。

第2回例会 第1部 アメリカの大学図書館における学生向けサービスの歴史と現在
第2部 本学司書課程履修生による司書職内定報告会

2011年12月10日(土)、明治大学リバティータワーにおいて、「2011年度明治大学図書館情報学研究会第2回例会」が開かれました。昨年度と同様に2部構成とし、第1部では、卒業生の新見槙子氏(横浜国立大学附属図書館)に「アメリカの大学図書館における学生向けサービスの歴史と現在:大規模な研究大学に着目して」と題して、ご発表いただきました。参加者は、本学の司書課程・司書教諭課程履修者や本研究会会員を中心に137名となりました。

講演では、まず、大学図書館員と社会人大学院生としての側面から自己紹介がなされ、今回の講演テーマとの関連を把握することができました。引き続き、アメリカの大規模な研究大学に設置されている学部学生用図書館(undergraduate library)を事例として取り上げ、そこで行われてきた学生向けサービスの歴史的な変遷が紹介されました。具体的には、まず、大学図書館における学生向けサービスを、情報リテラシーとラーニング・コモンズの観点から捉えて、両者が相補的な関係にあることを説明しました。次に、1960年代から1990年代までの学部学生用図書館の歴史的な検討を行い、発展・減少の段階を経て、新たな方向に向かいつつあることを指摘しました。そして、こうした変化を実際に把握するために、新見氏が実施した学部学生用図書館の現状調査の結果が紹介されました。

今回の講演は、新見氏の修士論文の成果にもとづく内容となっていました。そのため、参加者にとっては、大学院生による図書館情報学分野の学術研究の一端に触れることができ、貴重な機会となりました。なお、新見氏の研究内容の詳細は、『Library andInformation Science』(No.66,2011,p.81-126)に掲載された「アメリカの学部学生用図書館のサービスと概念の変遷:1990年代以降の変化を中心に」をご参照ください。

第2部では、来年度の国立大学法人図書系職員の内定を得た本学学生(2名)に、就職活動の開始から内定までの流れ、採用試験の併願状況、試験(教養・専門・面接試験など)の傾向と対策などを報告していただきました。報告は、自身の経験にもとづく具体的な内容となっていたため、これから司書職採用試験の受験を検討している参加者に大いに参考になりました。詳細は、2012年3月刊行予定の『明治大学司書課程・司書教諭課程年報』をご参照ください。

シンポジウム 「学校図書館を活用した教育・学習の意義」

2011年10月22日(土)、明治大学リバティータワーにおいて、「学校図書館を活用した教育・学習の意義と方法」と題するシンポジウムが開かれました。参加者は、本学学生、本研究会会員ならびに、本テーマに関心のある方々を中心に約130名に上りました。

シンポジストには、堀川照代氏(青山学院女子短期大学教授)、富永香羊子氏(市川市教育委員会学校教育部教育センター指導主事)、五十嵐ふみ代氏(市川市立第六中学校教諭、本学OG)、小野翼氏(盈進学園東野高等学校司書、本学OB)をお招きしました。阪田蓉子会長による開会挨拶の後、3人の方々から、基調講演と事例発表をいただきました。

堀川氏は、基調講演「学校図書館を活用した教育・学習の意義」と題して、PISA調査(読解力)、中教審の答申(1996年)などの内容を踏まえて、情報リテラシー育成の重要性を提示しました。さらに、情報リテラシーを育成するための、学校図書館を活用した教育のあり方と現状を紹介しました。

富永氏は、事例発表(1)「『生きる力・夢や希望を育む学校図書館』をめざして」と題して、勤務先である市川市教育センターにおける学校図書館支援の状況について、3つのネットワーク(人・物・情報)の観点から解説しました。さらに、学校図書館を活用した授業例も紹介しました。

五十嵐氏は、事例発表(2)「図書館で読む、知る楽しさ」と題して、勤務先である中学校での実践事例を紹介しました。具体的には、1年生を対象にした「詩集から詩を選んで被災地に贈ろう」では、東日本大震災の被災者の方々の立場や状況を思いやりながら、負担にならないよう励ますことを心掛けた詩を記したうちわが披露されました。

次に、本学文学部の齋藤泰則教授のコーディネートによる、パネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションは、3人の講師に小野氏が加わり進められました。はじめに、各シンポジストから、ご講演いただいた内容や実務経験を踏まえて、コメントをいただきました。その後、聴衆から寄せられた質問にシンポジストが回答しました。たとえば、「司書教諭として仕事をするにあたり、どの程度、教科について把握する必要があるか」「学校図書館の役割とはなにか」といった講演内容をより深化させた質問が寄せられました。

今回のシンポジウムでは、参加者にとって、今日の学校教育を取り巻く重要な課題を踏まえたうえで、学校図書館における実践事例を知ることのできた貴重な機会となりました。

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