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第1回例会 ポストコロナ禍の大学図書館に期待される役割を考える:九州大学附属図書館の事例を参考に

2022年6月18日(土)、明治大学和泉キャンパス第一校舎にて「明治大学図書館情報学研究会2022年度第1回例会」が開催されました。今回の例会では、「ポストコロナ禍の大学図書館に期待される役割を考える:九州大学附属図書館の事例を参考に」とのテーマで、九州大学准教授の渡邊由紀子氏にご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に36名に上り、本学司書課程・司書教諭課程の三浦太郎専任教授の開会挨拶の後、渡邊氏の講演に移りました。

まず、コロナ禍にあって、大学がどのような状況に置かれたかについて説明がありました。大学図書館においては、感染防止のため利用に支障が出たことから、非来館型サービスの拡充が図られ、大学図書館のあり方を見直すきっかけとなったことが分かりました。大学図書館の機能や制度を巡る議論においては、教育研究支援機能や新たなサービス、また大学図書館間の連携などが論点となっていることが理解されました。

後半は、九州大学の事例が紹介されました。九州大学附属図書館は日本有数の蔵書数を誇り、各キャンパスに専門的な図書館・室が置かれており、「九州大学学術情報リポジトリQIR」を用いて、研究成果をオンラインで公開し学問に貢献しています。また、Cuter(キューター)と呼ばれる図書館TAが、2012年より学習ガイドを作成し教育を支援しており、対面でも遠隔でも、知識をオープン化し「場」を拡大していることが分かりました。

ご講演後の質疑応答では複数の質問が寄せられ、このうち、大学図書館の場と機能の今後に関する質問に対しては、交流を図ることのできる物理的な対面の場も残すことが望まれる旨、考えが示されました。また、バーチャル・レファレンス・サービスに関する質問に対しては、以前からのウェブ・フォームに加え、コロナ禍以後はMicrosoft Teamsでのリアル・タイム相談も始められているそうです。今回の例会は、大学図書館のあり方を巡る今後の議論について、さまざまな視点から学ぶことのできるよい機会となりました。ご講演者はじめ、参加者の皆様、ありがとうございました。

文責:西垣 翔(明治大学大学院)

第2回例会 大学図書館にみるヴァーチャルレファレンスサービスの変化

2022年11月18日(金)、明治大学和泉キャンパス第一校舎にて「明治大学図書館情報学研究会2022年度第2回例会」が開催されました。今回の例会では、「大学図書館にみるヴァーチャルレファレンスサービスの変化」とのテーマで、明治大学大学院生の松野南紗恵氏にご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に21名に上り、三浦太郎専任教授の開会挨拶の後、松野氏の講演に移りました。

まず、レファレンスサービスについて説明がありました。レファレンスサービスの定義としては、図書館員が仲介的立場から援助形式により、利用者に対して指導したり資料提供したりすることを指します。日本ではレファレンスサービスも利用指導として考えられていますが、アメリカ図書館協会の下部組織にあたる利用者サービス協会が2021年に発表した定義では、正式な利用指導と看做されないようです。また、質問回答サービスではレファレンスインタビューを通して、利用者の本当に欲している情報が何か、確かめることが最初に求められます。

「ヴァーチャルレファレンスサービス(以下、VRS)」とは、オンライン上のレファレンスサービスのことです。一概に遠隔の媒体と言っても、メール、Zoom会議、チャット、SNSなど、各種の方法があり、図書館ごとにいずれの方式を導入しているのか違います。新型コロナウイルス感染症の後で導入館は増加しており、明治大学図書館でもオンラインフォームによる受付が始められました。松野氏が実際に日本の大学図書館のホームページを調査したところ、VRSの実施を明記している大学図書館は先行研究にくらべて少なく、図書館ホームページにメールアドレスを掲示する形で消極的にサービスを行っている館が多く存在することが明らかになりました。

講演中、受講生にたいして最も使いたいVRSに対する問いかけがありました。メールを支持する声としては「お互いに書いたものを確認できる」、Zoom会議は「相談者の本当のニーズが声や表情で分かる」、チャットは「すぐに返信が返って来て、書いたものが形に残る」、SNSは「気軽に相談できる」といった利点が挙げられました。松野氏は、大学図書館では個人的な好みに応じる豊富な手段を採用し、それを広報することが重要と述べています。

講演後の質疑応答では、VRSとプライバシーに関する質問などが寄せられました。SNSの使用はプライバシーの公開にも繋がることから避けられる傾向にあり、図書館では全体的にメールが好まれる傾向にあるようです。今回の例会は、大学図書館のVRSを巡る議論について、現状を知って今後の展望を議論することのできるよい機会となりました。ご講演者はじめ、参加者の皆様、ありがとうございました。

文責:西垣 翔(明治大学大学院)

講演会 図書館評価の有効性:公共図書館を事例として

2022年7月2日(土)、明治大学和泉キャンパス第一校舎にて「2022年度明治大学図書館情報学研究会講演会」が開催されました。今回の講演では、「図書館評価の有効性:公共図書館を事例として」とのテーマで、国立国会図書館の田辺智子氏にご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に78名(うち学生69名)に上り、本学司書課程・司書教諭課程の三浦太郎専任教授の開会挨拶の後、田辺氏の講演に移りました。

田辺氏は政策評価がご専門で、留学を経て、筑波大学大学院で図書館評価を学ばれたとのことです。図書館評価は、比較的規模の大きな図書館が行っている傾向があり、図書館利用による利用者へのインパクトや利用者が得るアウトカムなどを測定する場合は指標の設定が難しい、ということでした。図書館評価の指標は国際規格(ISO)ともなっています。アメリカ図書館協会(ALA)による評価マニュアルでは、利用実績やサービス品質に関する指標が取り入れられているそうです。日本では2001年以降、「公共図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の制定に伴い、図書館評価へ注目が集まりました。アウトカム指標の設定も重視されます。

評価を行う際に、その方法が難しいとの意見もあるようです。公共図書館の場合、自治体の行政評価の一環として行う評価、図書館独自の取組として行う評価、そして図書館協議会等による外部評価があります。評価を通じて職員がサービス・業務の課題を認識したり、自館を客観視したり、そこから事業の見直しを行ったりするなどの効果が得られます。田辺氏の調査からは、直営館と指定管理館で課題が異なることも明らかにされました。評価指標を整備するだけでなく十分な分析も求められます。

ご講演後の質疑応答では複数の質問が寄せられました。評価に積極的な自治体の導入意図についての質問に対する回答では、首長や図書館長の熱意によるところもあれば、職員が積極的に評価を進めているところもあるそうでした。非正規雇用の職員が増えている状況にあるなか雇用形態が図書館評価に及ぼす影響はないのかという質問への回答では、職員レベルのアウトカムの影響要因の分析では雇用形態が影響していると考えられる結果が見られたということでした。今回の講演会は、図書館評価のあり方をめぐる今後の議論について、さまざまな視点から学ぶことのできるよい機会となりました。ご講演者はじめ、参加者の皆様、ありがとうございました。

文責:西垣 翔(明治大学大学院)

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