磁場応用

医療用高周波電磁石の可能性研究

がんの温熱療法の一つに磁気ハイパーサーミアがあります。磁気ハイパーサーミアとは,磁性粒子をがん細胞に誘導し,外部の高周波電磁石で磁性粒子を誘導加熱し,がん細胞を死滅させる治療法です。治療時間の短縮化を目指すために,高周波電磁石には,200 kHzで0.06 Tを300秒間発生させる仕様が期待されています。しかし,この仕様を満たす高周波電磁石を実現するためには,電磁石のコイル巻線に発生する高電圧の問題,電磁石の発熱の問題など技術的課題があります。当研究室では,磁気ハイパーサーミア用高周波電磁石の設計手法と工学的実現性を確立させるために,写真にある小型高周波電磁石モデル機を製作し,実験研究を進めています。

右の写真は高周波電磁石本体の写真です。この電磁石はフェライトコアを用いた磁心電磁石ですが,エアギャップ(磁心がない空間の部分)が広いため,通常はインダクタンスや発生磁場の計算など,有限要素法を用いて,電磁石の形が変わるごと解析することが一般的です。これに対して,当研究室では,電気磁気学の基本に立ち返り,インダクタンスや発生磁場の定式化に挑戦し,実験結果との妥当性を検証する研究を続けています。これにより,小型モデル機からスケーリング則を適用し,実規模高周波電磁石の工学的実現性を俯瞰的かつ体系的に議論できるようにすることを目指し研究を進めています。

画像処理技術と拡張現実(AR)技術を駆使した磁場の可視化

電磁現象は目に見えない物理現象です。そこで当研究室では,「磁場を何とか可視化できないか?」という課題に,画像処理技術や拡張現実(AR: Augmented Reality)技術を駆使して挑戦しています。これまで,磁場の発生源(コイル)の位置がわかっている状態で,一つの磁場センサを用いて,磁場分布と磁力線の描画(右の写真)に成功しています。また,反対に磁場の発生源(コイル)の位置を複数の磁場センサから推定できる可能性も示してきています。将来的にはARメガネで精度よく磁場が可視化できることを目指して基礎研究を続ける予定です。