大電流電源-超電導コイル用電力変換器の実験研究

サイリスタ変換器の直列補償

超電導コイルの電源にはkAから数十kAを超える大電流の制御が要求されます。サイリスタ変換器は核融合実験装置の大型マグネット電源や加速器の電磁石電源に数多く用いられており豊富な運用実績を有しています。しかしながら、サイリスタ変換器は遅れ力率により直流側のコイル電圧を制御するため無効電力補償装置が必要になります。サイリスタ変換器の無効電力補償に関してこれまで様々な研究開発が進められておりますが、 当研究室では、図に示すように可変直列コンデンサを用いたサイリスタ変換器の直列補償方式の可能性研究を進めています。可変直列コンデンサはゲート制御直列コンデンサ(GCSC: gate-commuted seriescapacitor)などを自励式のパワーエレクトロニクス機器を使用します。直列補償方式ではサイリスタ変換器は制御角一定で制御し、直流電力はGCSCを用いて進み力率で制御します。これと従来の遅れ力率で直流電力を制御するサイリスタ変換器と組み合わせた複合変換器とすることで、電力系統から見た力率を改善します。これにより、サイリスタ変換器に要求される無効電力補償装置の設備容量が従来の設備と比べて半減できる可能性があります。この研究は、自励式のパワエレ機器を組み合わせることで古典的なサイリスタ変換器の新たな可能性を探求する研究という位置づけになります。

サイリスタ変換器の直列補償法の可能性を検証するために、直流リアクトルを用いた実験装置を開発してきました。整流器運転時は制御角0度近傍で一定制御するので、直列補償側のサイリスタ変換器はダイオード整流器で代用しました。また、可変直列コンデンサはGCSCを利用し、最大進み角が60度となるようなコンデンサを使用しました。この実験では、複合変換器全体での遅れ力率運転、進み力率運転、力率1運転を確認しました。また、サイリスタ変換器をインバータ運転させた循環電流制御動作も可能であることを確認しました。今後は、ダイオード整流器をサイリスタ変換器に変更し、4象限領域での有効・無効電力制御特性を評価し、核融合用電磁石電源、加速器電磁石用電源、超電導磁気エネルギー貯蔵用変換器など超電導コイル用大電流電源としての可能性を検証していく必要があります。