電力貯蔵-超電導磁気エネルギー貯蔵の可能性研究

超電導磁気エネルギー貯蔵(SMES)

電気はスイッチひとつでいつでも使える便利なエネルギーですが,貯蔵が困難であることが欠点です。近年,地球温暖化の観点から太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの積極的な導入が求められていますが,電力システムでは常に需要と供給のバランスを保つ必要があり,電力システムの安定性を維持するためにもエネルギー貯蔵の重要性が今後ますます注目されています。

エネルギー貯蔵といえば,二次電池,特に最近ではリチウムイオン電池が生活の中で身近な技術といえるでしょう。しかし,大電力を短時間で急速充放電する用途には,寿命の観点から電池は適さない貯蔵技術になります。当研究室では,様々な貯蔵技術の用途に応じた技術的な棲み分けを常に意識しながら,高効率かつ即応性に優れた超電導磁気エネルギー貯蔵(SMES: Superconducting Magnetic Energy Storage)の可能性に着目し研究を進めています。

SMESとは,右の図に示すように,超電導コイルによって空間に強磁場を発生させ電気エネルギーを磁気エネルギーの形態として貯蔵する装置です。簡単に言えば,超電導の電気抵抗ゼロの特性と超電導コイルの自己インダクタンスによって電流が減衰せずに流れ続けようとする性質を利用して,電気をそのまま貯める貯蔵方法です。したがって,高効率かつ瞬時に大電力を充放電できる特長があります。充電するときは,交直変換器を整流器運転させ超電導コイルを励磁し,放電するときは交直変換器をインバータ運転させ超電導コイルを減磁します。

SMESに関する研究開発は,1970年代から80年代にかけて,夜間の余剰電力を貯蔵する日負荷平準化を目的とした揚水発電所代替規模のSMESの検討が進められてきました。90年代から2000年代以降になるとSMESの即応性に着目され,送電線に落雷事故が起きたときに瞬時的な電圧低下対策を目的に1秒以下で大電力を放出する瞬時電圧低下対策装置として実用化が進めらてきました。SMESの研究は,日本が常に世界の最先端を走り続けてきた研究分野であり,重要な研究成果と豊富な運転実績を有しています。

電磁力平衡コイル(FBC: Force-Balanced Coil)

SMESで大量のエネルギーを貯蔵するためには,超電導コイルの高磁場化,大電流化が必要になります。しかしこれに伴い超電導コイルには強大な電磁力が発生します。例えば,日負荷平準化用途のSMESでは,超電導コイルで発生する電磁力を岩盤で支持する方法が検討されていました。この問題を解決するために,当研究室では,イラストにあるような電磁力平衡コイル(FBC: Force-Balanced Coil)の研究を進めています。電磁力平衡コイルは,ドーナツ型の巻枠に超電導線をらせん状に巻いたヘリカルコイルであり,従来型のソレノイドやトロイダル磁場コイルで発生する電磁力を相殺し,エネルギー貯蔵に必要な最小限の電磁力支持材量(従来型の半減以下)にまで低減可能なコイルです。