自然エネルギー発電-パワエレ技術を駆使した発電量向上

直列力率調整スイッチを用いた風力発電機の直流連系

洋上風力発電設備では海上に交直変換設備を設置し海底ケーブルで高圧直流送電(HVDC)が行われています。電力の方向が一方向であることから、発電機側の電力変換器は無制御のダイオード整流器で構成する方法が検討されています。一方、近年、風力発電機の大容量化に伴い永久磁石式同期発電機が適用される例が多くなっています。しかし、永久磁石式同期発電機の場合、風況に応じた発電機出力電圧の調整ができません。そこで本研究室では、図に示すように、トライアックと直列コンデンサで構成された直列力率調整スイッチを用いて永久磁石式同期発電機の出力電圧を制御し、ダイオード整流器を介して直流連系する風力設備の可能性研究を進めています。この研究は、力率調整および直流連系設備で使用する半導体電力変換素子を他励式でどこまで構成できるのかを問う位置づけになります。

発電機とモータのセットを用いて風力発電機の発電量向上に関する模擬実験を行っています。当研究室では、研究テーマに関わる実験主回路は市販品を一切購入せず,必要な回路部品を選択して実験装置を学生自身で製作し組み立てます。

直並列切り替えスイッチ回路を用いた太陽光発電システム

太陽光パネルに部分的な影(部分影)が発生するとパネルの内部抵抗が上昇し焼損する恐れがあります。通常は、パネルに内蔵し並列接続されたバイパスダイオードに電流を流しパネルの焼損を防止します。この場合、部分影の生じたパネルは切り離されるため、太陽光発電システム全体の発電量が低下します。そこで図に示すように、スイッチ回路を太陽光パネル間に接続し、部分影の状態に応じてパネルを切り離さず直並列に切り替えることで発電量の低下を防止する方法について、原理検証実験を進めています。

右の写真は、パワーMOSFETを用いた直並列切り替えスイッチ回路の試作機写真です。89 Wの太陽光パネル3枚を用いた実験を行い、部分影の状態を様々に変化させて発電量向上に寄与する直並列切り替え運転の条件に関して検討を進めています。これまで、 1.日射強度の最も高いパネルに対し部分影が生じたパネルの日射強度が50%以下に低下したとき、パネルを直列接続から並列接続に切り替えることで発電量の向上効果が期待できる。 2.2枚以上の太陽光パネルに部分影が同時に生じた場合、パネルを直列接続するよりも、部分影が生じたパネル同士を並列接続させた方が発電量の向上がより期待できる。ただし、並列接続されるパネルの日射強度の和は、太陽光発電システム全体で最も高い日射強度の150%以下にする。 3.太陽光パネルの最大電力とその時の動作電流は日射強度に比例するので、直並列を切り替えるしきい値は太陽光発電システムを短絡させパネルのバイパス電流を測定することで評価できる。ということがわかっています。この結果は、回路学の論理から太陽光発電システムの部分影に対する発電量の向上効果を簡単な計算で評価できる可能性を示唆しています。今後はこの考え方の妥当性を示す検証実験を進めていく必要があります。