本研究の最終目的は、生体骨の「化学組成」と「配向構造」を模倣した新しいバイオセラミックスを創製することです。より具体的には、従来のアパタイト系人工骨のもつ骨形成能を大幅に越える「骨誘導能」を備えた次世代型人工骨を創製し、その機能発現メカニズムを解明するとともに、その次世代人工骨を「医工連携」および「産学連携」を通して医療用デバイスとして応用することを目指しています。
我々の生体骨中のアパタイトにはナトリウムやマグネシウム、炭酸イオンなど多くのイオン種が固溶しています。これらのイオン種の固溶はアパタイト構造を歪ませるため、生体骨は多くの欠陥を包含しています。我々はその欠陥構造がHApの生体活性を誘起していると考えており、そのようなナノレベルの欠陥構造を積極的にHApに導入することができれば、HApの生体活性を大幅に向上させることが可能であると推測し、生体骨の化学組成を模倣した骨ミネラル含有したアパタイト(Bone HAp)粉体を合成しています。この粉体を出発原料とし、緻密体や多孔体を作製し、その上に未分化間葉系化細胞を播種して、その細胞分化などについて調査しています。また、それをウサギ脛骨にインプラントして組織学的に評価する実験も行っています。さらに、前述したアパタイトファイバーのa面が多く露出した配向構造を利用して、a面が多く露出した緻密なセラミックスを作製し、その超微微細構造を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したり、細胞との相互作用についても検討しています。