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低侵襲治療を指向した多機能性キレート硬化型骨修復セメントの開発

 我が国は他の先進諸国に先駆け「超高齢社会」に突入しています。高齢化により骨粗しょう症などの疾病が増加するのは自明です。骨移植を伴う疾患に対する現在の治療法は、自家骨を補填する方法がゴールデンスタンダードですが、採取量の限界や二次的な侵襲などの問題があります。その代替手段としては、水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2; HAp)やβ-リン酸三カルシウム(β-Ca3(PO4)2; β-TCP)などのバイオセラミックスを利用する方法があります。実際、HApは骨組織と直接結合する「生体活性」を有するため、整形外科や口腔外科などの領域で骨充填材として臨床応用されている。また、-TCPは「生体吸収性」を有し、最終的に自家骨と置換される人工骨として利用されている。これらのバイオセラミックスは、緻密体・多孔体・顆粒・ペースト状人工骨(セメント)などの材料形態で使用されています。
 この研究では、主に高齢者の「圧迫骨折」などを適用症例とする注射器などで患部に注入可能な「低侵襲治療」を実現する「ペースト状人工骨(セメント)」を開発を目指し、以下の5つのサブテーマを展開しています。

1) 生体内安定性アパタイト(HAp)セメントの開発
2) 生体内吸収性リン酸三カルシウム(TCP)セメントの開発
3) 骨誘導能を備えたキレート硬化型骨修復セメントの創製とその機能評価
4) 抗菌性を備えたキレート硬化型骨修復セメントの創製とその機能評価
5) 抗腫瘍効果を備えたキレート硬化型骨修復セメントの創製とその機能評価

まず、1)および2)では、各ペースト状人工骨の材料特性を実用化可能なレベルまで引き上げ、さらにそれらの試料片のin vitroおよびin vivoにおける生体適合性を確認し、生体吸収性を制御可能なセメン開発を進めています。3)では、高齢者がこのセメントを使用したときに、確実に骨癒合が起こるように「骨誘導能」の付与を目的とし、生体必須微量元素などを含有した従来よりも高い生体活性を備えたセメントを試製しています。4)では、医者も患者も安心して使用できるように、細菌感染を起こさない「抗菌性」を備えたセメントの開発を進めています。5)では、セメント開発に使用している「イノシトールリン酸(IP6)」が抗腫瘍効果を有することから、試製したセメントの抗腫瘍効果について検討しています。

 各サブプロジェクトの連関性を図示しておりますが、1)および2)の研究成果を中核とし、次世代を見据え、ペースト状人工骨に新たな機能を付加する3)~5)の研究を併行して推進しています。図中の写真は、我々が開発中の注射器で注入可能なペースト状人工骨の外観です。

イノシトールリン酸のキレート結合を利用したペースト状人工骨の創製

 なお、このプロジェクトは2009年10月1日から2013年9月30日までの4年間、神奈川科学技術アカデミー(KAST) 「創造展開プロジェクト」として展開していました。

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Laboratory of Biomaterials Department of Applied Chemistry School of Science and Technology Meiji University