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Research研究内容

パターン形成現象

サンプル1 最初は空間的に均一な状態にもかかわらず、時間が経つにつれて規則的な模様や構造が形作られることがあります。生き物に見られる秩序構造も同様に、すべてが遺伝子に書き込まれているわけではなく、物理化学的な過程の結果として、規則的な構造が自発的に形作られるものもあります。当研究室では、このような魅力的な構造形成現象を発見し、その仕組みを明らかにしていくことにチャレンジしています。

Belousov-Zhabotinsky (BZ) 反応

chemistry化学振動反応の代表的な例であるBelousov-Zhabotinsky (BZ) 反応は臭素の酸化物と有機酸、プロトン、金属触媒の混合溶液で起こる化学反応で、リズムやパターン形成現象が認められます。はじめは小さな点状の酸化領域(青)が時間とともに円形に広がっていきます。同じ点で繰り返し点状の酸化領域が形成されるため、時間が経つと、ダーツの的のように同心円状の模様が形成されます。このように、時間とともに伝播していく化学反応の「波」を化学反応波と呼びます。この現象は、反応拡散方程式と呼ばれる数理モデルで再現され、その仕組みが明らかにされています。

【関連動画】

BZ反応の時空間パターン

還元状態(赤)の中に酸化領域(青)が現れ、波のように伝播することで模様が形作られます。

ターゲットパターン

同心円状に拡がるターゲットパターンの形成過程を表しています。

スパイラルパターン

化学振動波がスパイラルパターンを形成する様子を示しています。

【関連論文】
サンプル
Chemical Wave Propagation in the Belousov?Zhabotinsky Reaction Controlled by Electrical Potential
JPC A 123, 4853 (2019).
Link to Paper
サンプル
Competition between global feedback and diffusion in coupled Belousov-Zhabotinsky oscillators
Phys. Rev. E 99, 012208 (2019).
Link to Paper
サンプル
"Spontaneous Formation of Unidirectional Path"
Chem. Phys. Lett. 616-617, 248-253 (2014).
Link to Paper
サンプル
"Density Wave Propagation of a Wave Train in a Closed Excitable Medium"
Phys. Rev. E 84, 046203 (2011).
Link to Paper
サンプル
"Photoexcitaed Chemical Wave in the Ruthenium-Catalyzed Belousov-Zhabotinsky Reaction"
JPC A 115, 7406 (2011).
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水酸化アルミニウムの沈殿形成・再溶解反応により形成される時空間パターン

chemistryアルミニウムイオンは水酸化物イオンと反応すると沈殿物(酸化アルミニウム)を形成します(沈殿形成反応)。ただし、水酸化物イオンを大過剰に加えるとテトラヒドロキソアルミン酸イオンを形成して水に溶解します(再溶解反応)。そのため、アルミニウムイオンを含むゲルを用意し、その上に濃い水酸化ナトリウム水溶液を添加すると、水酸化物イオンが徐々にゲル中に拡散していき、沈殿を形成します。しかし、さらに水酸化物イオンの濃度が高くなるとこの沈殿は再溶解します。そのため、拡散によって形成される水酸化物イオン濃度分布のごく一部でのみ沈殿が形成され、それによってバンド状の沈殿が形成されたように見えます。このバンド状の沈殿物を上から観察すると、線状の欠陥が形成されており、それがスパイラルパターンを形成する様子が見られます。沈殿・再溶解系で広くみられるこの現象は、いまだその詳細が明らかになっていない、未解決問題の一つです。

【関連動画】

「沈殿・再溶解で形成されるスパイラルパターン」

水酸化アルミニウムの沈殿バンド上に形成されるスパイラルパターンです。

塩の樹状結晶成長

chemistry塩の結晶はよく知られているように直方体の粒に成長します。しかし、条件次第では異なる形状の固形物が成長することがあります。容器に飽和濃度の食塩水を入れ、乾燥させるだけで、容器の壁面に沿って樹状の塩の塊が成長す る様子が観察できます。なぜ上向きに伸びていくのでしょうか。どのようなメカニズムで樹状になるのでしょうか。これらの疑問はまだ解決されていません。

【関連動画】

「塩の樹状結晶」

食塩水の水溶液を容器に入れて蒸発乾燥させると、食塩が析出します。この時、ある条件下では食塩が壁面に析出し、さらに水溶液よりも上に向かって伸びていく様子が観察されます。

ミドリムシの生物対流パターン

chemistryミドリムシは光合成を行い、鞭毛を使って移動することができる単細胞微生物です。光に対する受容器を持っており、強い光から逃げる「負の走光性」を示します。このミドリムシの培養液を薄い容器に閉じ込めて下から強い光を均一に照射すると、下の図のような斑点模様が自発的に形成されます。これは生物対流と呼ばれる現象です。ミドリムシは強い光を避けるために上向きに遊泳するために、水面付近のミドリムシの密度(細胞密度)が高くなります。すると、ミドリムシの塊は自分の重さに耐えきれなくなり、沈んで行ってしまいます。このように、光を避ける上向きの遊泳と重力による沈降がバランスして空間パターンが形成されます。

【関連動画】

「ミドリムシの生物対流パターン」

ミドリムシの培養液を薄く広げて、下から強い光を照射すると、自発的に集まって対流パターンを形成します。これは生物対流と呼ばれる現象で、下からの強い光からミドリムシが逃げようとする(負の走光性)のために起こります。

「ミドリムシの生物対流パターン」

ミドリムシの培養液を薄く広げて、下から強い光を照射すると、自発的に集まって対流パターンを形成します。これは生物対流と呼ばれる現象で、下からの強い光からミドリムシが逃げようとする(負の走光性)のために起こります。

【関連論文】
サンプル
The Flux of Euglena gracilis Cells Depends on the Gradient of Light Intensity
PLoS ONE 11, e0168114 (2016).
Link to Paper
サンプル
"Localized bioconvection of Euglena caused by phototaxis in the lateral direction"
JPSJ 80, 064003 (2011).
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