自律運動
化学の力を使って自発的に運動する固体粒子や液滴が数多く開発されています。当研究室では、主に界面のエネルギーを利用して運動する固体粒子・液滴に着目して、その自発的な運動の特徴を実験的に明らかにし、数理モデルを通して普遍的な仕組みを解明しています。
内部状態を持つ自己駆動液滴
細胞内部では数多くの化学反応が進行しており、その状態に応じて細胞運動や外部環境への応答性が変化している。そのような内部状態を持った自己駆動系のモデル実験系の構築を目指して、代表的な化学振動反応である Belousov-Zhabotinsky (BZ)反応を内包した自己駆動液滴系を構築している。ここでは、BZ反応の状態と液滴運動の関係を調べ、液滴内部の化学振動と同期した液滴運動を創出することを目指している。
【関連動画】
BZ液滴の自律運動
液滴内部のBZ反応波の影響を受けて急激に加速する様子が見られます。
BZ液滴の集団運動
液滴内部が酸化状態になると急加速し、還元状態になるとゆっくり動きます。BZ反応によって酸化状態と還元状態が時間周期的に現れます。
【関連論文】
- "Effect of a product on spontaneous droplet motion driven by a chemical reaction of surfactant"
- Phys. Rev. E 102, 023102 (2020).
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- “Interfacial Dynamics in the Spontaneous Motion of an Aqueous Droplet”
- Langmuir 5, 11601 (2019)
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- “Oscillation of Speed of a Self-Propelled Belousov-Zhabotinsky Droplet”
- JPC Lett. 7, 3424 (2016).
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- “Evolution of Self-Propelled Objects: From the Viewpoint of Nonlinear Science”
- Chemistry - A Euro. J. 24, 6308
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- “Nonlinear Behavior of a Self-Propelled Droplet Coupled with a Chemical Oscillatory Reaction”
- Conplexity and Synergetics
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- 「化学エネルギーを利用して運動する固体・液体」
- オレオサイエンス 第15巻 (2015)
しょうのう円板・しょうのう船の水面滑走
しょうのう船の自律運動では、船の設計に依存して、分子拡散の制御により間欠運動が起こります。しょうのう粒を水面に浮かべると一定の速さで運動するのに対して、しょうのう船の間欠運動では停止と急激な加速・減速を繰り返す、特徴的な挙動を示します。この特徴的な運動が起きる仕組みは、水/プラスティック界面におけるしょうのう分子の拡散に着目して数理モデルを構築し、実験結果と対比させることで明らかにしています。
【関連動画】
しょうのう船の間欠運動
しょうのう船はほとんどの時間、停止していますが、ごく短時間、急激な加速と減速が起こります。
しょうのう円板の自律運動
しょうのう円板は自発的に空間対称性を破って一方向に動きます。
【関連論文】
- "Rotational motion of a camphor disk in a circular region"
- Phys. Rev. E 99, 022211 (2019).
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- "Collective Behavior of Camphor Floats Migrating on the Water Surface"
- JPSJ 86, 101012 (2017).
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- "Unidirectional motion of a camphor disk on water forced by interactions between surface camphor concentration and dynamically changing boundaries"
- Phys. Chem. Chem. Phys. 19, 18767 (2017).
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- "Selection of the Rotation Direction for a Camphor Disk Resulting from Chiral Asymmetry of a Water Chamber"
- JPC B 120, 9166 (2016).
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- "Acceleration or deceleration of self-motion by the Marangoni effect"
- Chem. Phys. Lett 654, 92 (2016).
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- "Characteristic oscillatory motion of a camphor boat sensitive to physicochemical environment"
- Choas 25, 064610 (2015).
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- "Suppression and regeneration of camphor-driven Marangoni flow with the addition of sodium dodecyl sulfate"
- J. Phys. Chem. B 116, 992 (2012).
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- "Mode-switching of the self-motion of a camphor boat depending on the diffusion distance of camphor molecules"
- J. Phys. Chem. C 114, 9876 (2010).
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- "Intermittent motion of a camphor float depending on the nature of the float surface on water"
- Colloid Surface A 349, 74 (2009).
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- 「水面滑走する自己駆動粒子のリズム運動」
- 日本物理学会誌、75 (2020).
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しょうのう船の自律運動に関わる物理化学的パラメータの定量評価
しょうのう円板およびしょうのう船は水面を自発的に運動する素子として多くの研究が行われてきていますが、その運動にかかわる様々な物理パラメータは定量的にはあまり明らかにされてきていませんでした。そこで様々な手法を用いて、しょうのう船の自律運動に関するパラメータを全て定量測定しています。例えば、船の駆動力は運動しているときは4.2μN、表面張力差にして約1 mN/mであることなどを明らかにしてきています。これらのデータを用いると、数理モデルを定量的に検証することもできます。
【関連論文】
- “Period of Oscillatory Motion of a Camphor Boat Determined by the Dissolution and Diffusion of Camphor Molecules”
- JPC B 122, 2610 (2018).
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- “Quantitative Estimation of the Parameters for Self-Motion Driven by Difference in Surface Tension”
- Langmuir 30, 8101 (2014).
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- 「表面張力差に駆動される固体の運動」
- 材料表面の親水・親油の・・・
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しょうのう円板の集団に現れるリズム現象(自己駆動粒子のクオラムセンシング)
しょうのう円板の自発的な運動において、ある条件下では時間周期的に加速と減速を繰り返すリズム現象(振動運動)が現れます。これまでに、円板の数、水相の広さを変数として、数密度が一定の値よりも大きくなったときに振動運動が現れることを実験で示すことができています。また、数理モデルを構築して解析することで、水相のしょうのう濃度と円板の運動との相互作用によってリズム現象が現れることを明らかにしています。
【関連動画】
しょうのう円板集団の連続運動
多数の小さなしょうのう円板は互いに衝突を避けながらで動き回ります。
しょうのう円板の追いかけっこ
大きい2個のしょうのう円板は追いかけっこします。
しょうのう円板集団の振動運動
しょうのう円板を多数浮かべると振動運動が現れます。
単体のしょうのう円板の振動運動
しょうのう円板を狭い水相に浮かべると、単体でも振動運動が現れます。
【関連論文】
- “Dynamical Quorum Sensing in Non-Living Active Matter” [Editor's Choice]
- J. Phys. Soc. Jpn. 88, 093002 (2019).
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- “Synchronized Intermittent Motion Induced by the Interaction between Camphor Disks”
- J. Phys. Soc. Jpn. 84, 034802 (2015).
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- 「水面滑走する自己駆動粒子のリズム運動」
- 日本物理学会誌、75 (2020).
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- “Evolution of Self-Propelled Objects: From the Viewpoint of Nonlinear Science”
- Chemistry - A Euro. J. 24, 6308
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しょうのう船の渋滞
しょうのう円板の自発的な運動において、ある条件下では時間周期的に加速と減速を繰り返すリズム現象(振動運動)が現れます。これまでに、円板の数、水相の広さを変数として、数密度が一定の値よりも大きくなったときに振動運動が現れることを実験で示すことができています。また、数理モデルを構築して解析することで、水相のしょうのう濃度と円板の運動との相互作用によってリズム現象が現れることを明らかにしています。
【関連動画】
しょうのう船の渋滞
しょうのう船を円環状の水路に多数浮かべると、車の渋滞のように込み合ったところとすいているところが現れます。
しょうのう船の定常流
円環状水路に浮かべるしょうのう船の数が少ないとき、斥力的な相互作用のため、ほぼ均一に分布し、一定の速さで運動します。
【関連論文】
- "Collective Behavior of Camphor Floats Migrating on the Water Surface"
- J. Phys. Soc. Jpn. 86, 101012 (2017).
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- “Collective Motion and Phase Transitions of Symmetric Camphor Boats”
- J. Phys. Soc. Jpn. 81, 074605 (2012).
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- “Swarming of self-propelled camphor boats”
- Phys. Rev. E 85, 055201(R) (2012).
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- “Collective behaviour of inanimate boats”
- Phys. Rev. E 81, 056210 (2010).
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- “Collective Behaviour of Self-propelled Objects on a Water Surface”
- Self-organized Motion
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- “Evolution of Self-Propelled Objects: From the Viewpoint of Nonlinear Science”
- Chemistry - A Euro. J. 24, 6308
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化学反応を伴う自律運動に現れる振動現象
しょうのう円板のように、水面を滑走する自己駆動粒子はその周囲の表面張力に非対称性を生み出して駆動力を得ています。そこで、粒子から展開された分子と化学反応する物質を水相中に用意することで、運動の速さや振る舞いを変えることができます。例えば、ベンゾキノン(BQ)という物質はしょうのうと同じように水の表面張力を下げる固体であるため、その粒は水面を自発的に運動します。ところが、水相にBQを酸化するような物質(例えばアスパラギン酸)を溶かし込んでおくと、BQは酸化されてハイドロキノン(HQ)に変化します。このHQは表面張力をほとんど低下させな いために、粒の駆動力は下がります。そのため、酸化剤の濃度が十分に高い環境下ではBQの粒は駆動力を失って停止したままになります。面白いことに、中間くらいの濃度の時には、BQの粒は運動と停止を周期的に繰り返します。このように、環境に応答して運動様相や運動の速さ、向きなどを変えるようなシステムを開発・研究しています。
【関連動画】
フェナントロリン粒の振動運動
水面に浮かべると一定速度で滑走するフェナントロリン粒を、鉄イオンの水溶液に浮かべると、停止と急激な運動を周期的に繰り返す振動運動が現れます。粒の周りに現れる赤色の物質は鉄イオンとフェナントロリンの錯形成反応で生成されるフェロインです。
【関連論文】
- “Self-Propelled Motion of a Coumarin Disk Characteristically Changed in Couple with Hydrolysis on an Aqueous Phase”
- J. Phys. Chem. B 123, 4311 (2019).
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- "Self-propelled motor driven by a glucose engine"
- Chem. Lett. 43, 453-455 (2014).
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- "Photo-sensitive self-motion of a Benzoquinone disk"
- PCCP 14, 5988 (2012).
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- "Self-Motion of a Benzoquinone Disk Coupled with a Redox Reaction"
- JPC C 114, 13340 (2010).
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- "Experimental and theoretical studies on the self-motion of a phenanthroline disk coupled with complex formation"
- PCCP 12, 1557 (2010).
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- “Evolution of Self-Propelled Objects: From the Viewpoint of Nonlinear Science”
- Chemistry - A Euro. J. 24, 6308
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