加藤徹のHP > 京劇城 > イエスマン、ノーマン > このページ

学校オペラ「イエスマン、ノーマン」
(3)イエスマンの楽譜と解説

日本の能楽を翻案したドイツの劇を、京劇の手法を採りいれつつ日本語で上演するための新作楽曲を公開するページ
最初の公開 2009-7-15 最新の更新 2010-7-4

イエスマン(Der Jasager)
前半部の曲は「ノーマンの楽曲の頁」を参照のこと。

イエスマン 2010
四人の弟子と合唱隊(コーラス)は、少年と師を見守りながら歌う。
臨死の歌[
あの子に…](MP3)【J64/N-】 [MIDI]
【四人の弟子】あの子に聞いてみよう/【コーラス】彼らは子供にたずねた/【コーラス+四弟子】あの子のために、みんなが引き返すことになっても/ いいかどうかと。/しかし、たとえあの子が、引き返すことを望んだとしても/引き返すわけにはいかないのだ。/ あの子を置き去りにして、進まなければならないのだ。

(※解説)便宜上、五線譜で書いてあるが、シュプレヒゲザングで歌うこと。


「イエスマン」 (C)Kyougeki Kenkyuukai,1994
(師と弟子は、峯越えの途中で力尽きた少年に、昔からの掟を語る。
イエスマンでは「置き去りにされる」というもの。
あくまでも当人の自由意思、という体裁をとりつくろうために、昔の掟では「合意してくれるね?」と当人に尋ねることになっている。
少年は掟どおり「はい、わかりました」と答える。
師と四人の弟子が、後ろ髪を引かれる思いで、ゆっくり出発しようとしたその時──
少年は突然、懇願する。
「お願いです。どうかここに置き去りにしないで、谷に投げ込んでください。ひとりで死ぬのは心細いんです」
師と弟子はギョッとして、その要求を拒絶する。
だが、少年の哀願するまなざしに、心が揺れる)
師は四人の弟子に向かって「チュウウ(中有)の絶唱」を歌う。
イエスマン 2010
チュウウの絶唱[この子を残して…]
 [YouTubeで実演を視聴する]  [MP3のカラオケ]  [参考MIDI(非推奨)]
【師】この子を残して出発する決心はついた。/ この子の運命を決めることはやさしい。/ だが、それを実行するとなると/ これはむづかしい。/ この子を谷に投げ込む勇気が/ 君たちにはあるか。
(※解説)福建の南音「満空飛」の旋律をアレンジした曲。

(四人の弟子は、考えたすえ、少年を谷に投げ込むことに合意して「オクリビトのララバイ(子守歌)」を歌う。
イエスマン 2010
オクリビトのララバイ[頭を楽に…]
 [YouTubeで実演を視聴する]  [MP3のカラオケ]  [参考MIDI(非推奨)]
【四人の弟子】頭をらくに、僕たちの腕によせかけるんだ/固くなってはいけない/用心して運ばなければ/ならないのだから

(※解説)この歌詞の高低アクセントを伝統音階に乗せて作ったオリジナル曲。

少年は「ムジョウぶし(無情節/無常節)」を歌う
【能『谷行』原文】 (子方)仰せ承り候。この道に出でて命を捨てん事こそ、最も望む処なれども、母の御歎きの色、それこそ深き悲しみなれ。また仮初めも他生の縁、みな人々に御ン名残こそ惜しう候へ。
(地謡)何と言ひやる方もなく、皆声をあげ涙に咽ぶ心ぞ哀れなる。かくて面々一同に、あはれ悲しき世の習ひ、殊更これハ大法乃、冥見私なきままに、谷行にこそ行ひけれ。(中略)かくて時刻も移るとて、皆面々に思ひ切り、邪見の剣 身を砕く、心をなしてかの人を、嶮しき谷に陥れ、上に覆ふや石瓦、雨土塊を動かせる。心を傷め声をあげ、皆面々に泣き居たり。皆面々に泣き居たり。
ムジョウ節[ぼくはこの旅で何だか命を失いそうな気がしていた…]
 [実況録音の歌声]
 [YouTubeで実演を視聴する]  [MP3のカラオケ]  [参考MIDI(非推奨)]
イエスマン 2010
【少年】(姿は見えない)ぼくは、この旅で、何だか/ 生命(いのち)を失いそうな気がしていた。/ お母さんを救おうという一心で/ 救援隊に参加してしまったのです。/ この壺に薬をみたして/無事に/母のところへもっていってください。
※五線譜を墨守せず、適宜、シュプレッヒゲザング(Sprechgesang 語り歌い)を混ぜて歌うこと。
コード進行は[Dm F G Bb]の反復と、[F G Bb C Dm]の繰り返し。

イエスマン 2010
【J80/N-】 [
実況録音の歌声]

【コーラス】友たちは壺をうけとり/この世の運命(さだめ)ときびしいおきてをなげきつつ/ 子供を谷に投げ込んだ/彼らは肩をそろえて 崖の淵に/ 隣の者より責任が重くならないように/ 一列に並び、目をつぶって/ 子供を谷に投げ込んだ/ そして、砂と石を/そのあとから/投げ込んだ。

拙著『倭の風』(小説)のための自作曲を流用したもの。日本の伝統音階をもとに自製したオリジナル曲。
歌い方についてはこちらの記事も参照
──幕。
 続けて「ノーマン(ナインザーガー)」を上演する場合は、閉幕中のBGMとして、時間に応じて[道行きのBGM(MIDI)]や[理屈のBGM(MIDI)]などを適宜組み合わせる。

「イエスマン」終わり  [ノーマンに続く]

リンク
[HOME]  [NEXT]
[公演情報]  [脚本]  [写真集]  [曲目一覧]  [解説]
[ノーマンの楽曲]  [イエスマンの楽曲]  [能『谷行』ほか]  [リンク]