加藤徹のHP > 京劇城 > このページ

京劇・地方劇の歌詞

試行版
 このページは、平成14年度の広島大学の授業「中国伝統文化論演習」のために作成した教材に、加筆したものです。
 この教材は、教室で、それぞれの作品の映像や録音を見るときの参考資料であり、原文・読み下し文、等を示したものです。
 受講生の中には、中国語を全く学んだことのない人もいたため、発音はピンインではなく「かな」で示しました。そもそも京劇や地方劇のことばの発音は、カナはもちろんピンインでも表記できぬものが多いのですが・・・
 それぞれの歌詞の資料は、日時をおいて何度かに分けて作ったため、旧カナ・新カナなど書式の体裁の統一が取れておらず、見にくい部分があります。ご了承下さいますよう。
2004.2.15 加藤徹 最新の更新2018-9-23




特殊な漢字の表示について
 京劇や地方劇の劇詞は中国語です。このページは、中国語の部分も、なるべく日本の漢字で書いてあります。
 ただし、日本では使わない中国語独特の漢字については、HTMLユニコード(Unicode)形式を使ってhtmlソースを書きました。
 もし、いまお使いになっているブラウザの性能が充分でないと、HTMLユニコードで書いた中国語の漢字のうちの一部が、「・」とか「?」等と表示されてしまう可能性があります。
 例えば
「你」(ニー あなた)くらいなら、たぶんうまく表示されるはずです。でも「嘟」(都の左横に「口」と書く漢字)だと、あなたがいま御覧になっているブラウザでは、「・」とか「?」等と表示されてしまってるかもしれません。
 残念ながら、いまの日本で普及しているブラウザのほとんどは、上記の意味での性能が不充分なのです。
 そこで、劇詞の原文で「・」とか「?」等と誤表示されてしまう可能性が大である中国語の漢字については、「読み下し」部分等では「合成文字」を使って表記しました。

 合成文字とは、例えば、「吻」という漢字を[口勿]と表記する方法です。これは、どんなブラウザでも文字化けせず表示されます。

京劇『秋江』

参考サイト内リンク:京劇実況中継「秋江」

李維康 演 陳妙常  孔新垣 演 艄翁
[原文] 1匆匆地私自離庵門、2不幸生来尼姑命。3結知音全憑一張琴。4哪知老尼偏多事、5情海起風雲。6暁来不見意中人。7急急走、8到江辺覓船隻渡到臨安去把潘郎逐追尋。9(陳白)来此已是秋江河下。10喂、艄翁! 11(艄)哪裏在喊我啦? 12(陳)快快打舟来呀! 13(艄)我来嘍! (鑼鼓経:倉、台台、七台、乙台。・・・七倉) 14秋江河、一隻舟、15両旁撒下釣魚鈎。16釣得鮮魚沽美酒。17這様的快活哪裏有? 哪裏有?

[読み下し]
 恋人を追って尼寺を抜け出してきた若い尼僧の歌。
(鑼鼓。前奏。陳妙常、幕の中で唱う)
  1匆匆地(そうそうち)として私(ひそ)かに自(みづか)ら庵門(あんもん)を離る。
(袖幕から舞台上に登場して唱う)
  2不幸にして生来、尼姑たるの命(めい)
  3知音(ちいん)を結ぶは全て一張の琴に憑(たよ)る。
  4哪(なん)ぞ知らん、老尼、偏(ひと)へに事を多くし、
  5情海、風雲を起す。6暁来(あけがた)に意中の人は見えず。
  7急急として走(ゆ)かん、
  8江辺に到りて船隻を覓(もと)めて渡り、臨安(りんあん)に到り去(ゆ)き、潘郎(はんろう)をば逐ひ追ひて尋ねん。
9(陳セリフ)此(ここ)に来(きた)れば已(すで)にして是れ秋江の河の下(ほとり)なり。
(遠くから船頭の声がする。これに呼びかける)
10喂(もーし)、艄翁(しょうおう)! 
11(艄翁)哪裏(どこ)で我(わし)を喊(よ)んで在(お)るの啦(か)? 
12(陳)快(はや)く快く舟を打(こ)ぎ来(きた)れや! 
13(艄)いま行くよ! (鑼鼓経:倉、台台、七台、乙台。・・・七、倉) 
 船頭が登場し、船上の生活の楽しみを語る。
  14秋江の河、一隻の舟、
  15両旁(りょうわき)に釣魚の鈎を撒下す。
  16鮮魚を釣り得て美酒に沽(か)ふ。
  17這様(かやう)な快活(たのしみ)が哪裏(どこ)に有る?
  哪裏に有る?

[発音]
匆匆地私自離庵門、つぉんつぉんでぃー すーずー りーあーんめーん
不幸生来尼姑命。結知音 ぶーしん しょんらーい にーぐー みーん。じえちーいん
全憑一張琴。ちゅぁんぴん いーぢゃん ちーん
哪知老尼偏多事、なーぢー らーおにー ぴぇんどぅおしー
情海起風雲。ちんはい ちー ふぉんゆん
暁来不見意中人。しゃおらい ぶーじぇん いーぢょんれーん
急急走、到江辺覓船隻 じーじーぞーう だおじゃんびぇん みーちゅあんぢ
渡到臨安去 どぅだお りんあーん ちゅぃ
把潘郎逐追尋。 ばー ぱんらーん ぢゅー ちゅーいしゅん(歌、ここまで)
来此已是秋江河下。らいつ いーしー ちうじゃん ほーしゃ(船頭:おー、ろろろろ)
(陳)喂、艄翁! うぇーい、しょううぉーん
(艄)哪裏在喊我啦? なーり ざい はん うぉー ら
(陳)快快打舟来呀! くわいくわい だー ぢょう らいやー
(艄)我来嘍! うぉー らいろーう
(鑼鼓:倉、台台、七台、乙台・・・七倉)つぁん、てて、ちて、いて・・・ち、つぁん
秋江河、一隻舟 ちうじゃんほー、いーぢーぢょう
両旁撒下釣魚鈎 りゃんぱん、さーしゃー、でぃやお ゆぃ ごう
釣得鮮魚沽美酒 でぃあお だ しぇんゆぃ ぐー めいじう
這様的快活哪裏有?ちゃーやんでぃ くわいほー なーりよう
哪裏有? なー、りー、よう

京劇『蘇三起解』

 張君秋 演 蘇三  郭元祥 演 崇公道
[原文] (崇公道)啊哈。你説你公道、我説我公道。公道不公道、自有天知道。
 小老児崇公道。就在這洪洞県当了一名長解、代管女監。今有都天大人在省城下馬、有公文到来、提調蘇三復審、太爺命我将蘇三解往太原。天不早了、就此監中走走哇。・・・哎、到了。挑開。
(禁獄)坐監的嗎? (崇)什麼坐監的、是我呀。 (禁)哦、上差到了。我給您開門呀、慢着慢着。老没見了、您倒好啊? (崇)我好、你倒好啊? (禁)我好啊。您幹什麼来的? (崇)到這児提股差使。 (禁)提的誰呀? (崇)你把蘇三哪給我叫出来。 (禁)您等着我給您叫去。蘇三走動啊!
(蘇三)苦哇! 喂呀・・・(蘇三唱「二黄散板」)
忽聴得喚蘇三我的魂飛魄散、嚇得我戦兢々不敢向前。
(禁:上差到了)(接唱)
無奈何我只得把礼来見、
(禁:見過崇老伯)(接唱)
崇老伯你喚我所為哪般?
(蘇三白)老伯在上、蘇三有礼。 (崇)罷了、罷了、罷了。
(中略)
(唱「西皮流水」)低頭離了洪洞県、将身来在大街前。
未曽開言我心好惨、過往的君子聴我言。
哪一位去到南京転、与我那三郎把信伝。
言説蘇三把命断、来生我変犬馬我当報還。
(崇)哎、我説蘇三哪、放着道児不走、你跪在這児是祝告天地、還是哀求盤川呢?
(蘇)一不祝告天地、二不哀求盤川。


[読み下し](鑼鼓。老役人の崇公道、登場)啊哈。
  你(なれ)は你公道なりと説(い)う、  我は我公道なりと説う。
  公道か公道ならざるか、  自(おのづか)ら天の知道る有らん。
小老児(やつがれ)は崇公道(すうこうどう)。就(すなわ)ち這(こ)の洪洞県(こうどうけん)に在(あり)て一名の長解(=囚人の護送役)をつとめ、女監(=女囚監獄)を代管するものなり。今、都天大人(=都察院の大官)の省城(=山西省の首都・太原)にて下馬したまうありて、蘇三を提調して復審(=再審)せしめよとの公文の到来するあり。太爺(たいや)(=県令)我に命じて蘇三をば解して(=護送して)太原(たいげん)へ往(ゆ)かしむ。天早からざれば、すなわち此(こ)の監中に走(ゆ)き走(ゆ)かん。
・・・哎、着いた。開けとくれ。
(看守)入獄かい?
(崇)什麼(なに)が入獄じゃ、わしじゃよ。
(看守)おお、上差(おつかい)がお着きでしたか。開けますので、お待ちを、お待ちを。・・・御無沙汰してましたが、お元気ですか?
(崇)達者じゃ、おぬしは?
(看守)おかげさまで。ご用のおもむきは?
(崇)護送任務で参った。
(禁)誰を護送するので?
(崇)蘇三(スーサン)を呼び出してくれ。
(看守)お待ちを、呼んで参ります。(袖幕の奧に向かって)蘇三、出てきなさい。
(蘇三、袖幕のなかで)苦しき哇(かな)
(蘇三、泣きながら登場)喂呀・・・(「二黄散板」で唱う)
(たちま)ち蘇三と喚(よ)ぶを聴き得たり、我が魂は飛び魄(はく)は散ず。
我を嚇(おど)し得ること戦兢々(せんきょうきょう)として敢(あえ)て前に向はず。
(看守:上差がお着きだよ)
奈何(いかん)ともする無し、我はやまかたなく礼を把(と)りて来(きた)り見えん、
(看守:崇老伯にお目見えしなさい)
崇老伯、你は我を喚びて、為す所は哪般(なん)ぞ?
(セリフ)老伯(おじさま)上に在り、蘇三礼有り。
(崇)よし、よし、よし。

(中略)
(蘇三、登場。「西皮流水」で唱う)
(こうべ)を低(た)れて洪洞県を離れたり、
身をば来りて大街の前に在らしむ。
未だ曽(かつ)て言を開かず、我が心は好(まこと)に惨(みじ)めなり。
過ぎ往く君子よ我が言をお聴きあれ。
(ど)の一位(おひとかた)か去(ゆ)きて南京に転(いた)りなば、
我が那(か)の三郎に信(てがみ)をば伝(つた)えてよ。
言に説ふ「蘇三は命を断てども、来生我は犬馬に変りても我は当(まさ)にお報(むく)い還(かえ)りまいらすべし」と。
(崇)哎(エイ)、蘇三よ、道ばたで歩みをとめて跪(ひざまず)くとは、天地の神に祈っておるのか、それとも路銀の物乞いかね。
(蘇)一に天地に祝告せず、二に盤川(はんせん)(=路銀)を哀求せず。

[発音] 1 (崇公道)啊哈。 あーはー
  你説你公道、 にいしゅお にい ごんだお
  我説我公道。 うぉーしゅお うぉー ごんだお
  公道不公道、 ごんだお ぶー ごんだお
  自有天知道。 ずーよう てぃえん ぢーだお
2 小老児崇公道。しゃおらおある ちょんごんだお  就在這洪洞県当了一名長解、じゅうざいぢゃ ほんとんしぇん だんら いーみん ちゃんじえ  代管女監。だいぐぁんにゅいじぇん  今有都天大人在省城下馬、じんようどうてぃぇんだーれん ざいしょんちょんしあまー  有公文到来、提調蘇三復審、ようごんうぇんだおらい てぃーでぃあおすーさんふーしぇん  太爺命我将蘇三解往太原。たいいえみんうぉー じゃんすーさん じえわんたいゆぁん  天不早了、就此監中走走哇。てぃんぶざおら じうつじぇんぢゅんぞうぞうわ
3 (小鑼の音:テイ、テイテイテイ・・・) ・・・哎、到了。えい、だおら  挑開。てぃあおかい  (禁獄)坐監的嗎?ずおじぇんだま  (崇)什麼坐監的、是我呀。しぇんまずおじぇんだや、しーうぉーや  (禁)哦、上差到了。おお、しゃんちゃいだおら  我給您開門呀、慢着慢着。うぉーげいにーかいめんや、まんぢゃまんぢゃ  老没見了、您倒好啊?らおめいじぇんら、にんだおはおあ  (崇)我好、你倒好啊?うぉーはお、にいだおはおあ  (禁)我好啊。您幹什麼来的?うぉーはおあ。にんがんしぇんまらいだ  (崇)到這児提股差使。だおぢゃるてぃーぐちゃいし  (禁)提的誰呀?てぃーだしぇいや  (崇)你把蘇三哪給我叫出来。にーばーすーさんな、げいうぉーじゃおちゅーらい  (禁)您等着我給您叫去。にんだんぢゃ うぉーげいにんじゃおちゅ  蘇三走動啊!すーさん ぞうどんあー
4 (蘇三、幕の中で叫ぶ)苦哇!くーわー  (泣きながら登場)喂呀・・・うぇいやー
(唱う)忽聴得喚蘇三我的魂飛魄散、ふーてぃんだー ほあんすーさん うぉーでぃ ふんふぇいぽーさん
嚇得我戦兢々不敢向前。しゃーだ うぉーぢゃんじんじん ぶがんしゃん つぃえん
 (禁:上差到了 しゃんちゃいだおら)
(接唱)無奈何我只得把礼来見、うなーいほ うぉーぢーでい ばりーらい じーぇーん
 (禁:見過崇老伯 じぇんぐお ちょんらおぼー)
(接唱)崇老伯你喚我所為哪般?ちょんらおぼ にー ほあんうぉー すおうぇいなー ばーん
か 5 (蘇三のセリフ)老伯在上、蘇三有礼。らおぼーざいしゃん、すーさんようりー
(崇のセリフ)罷了、罷了、罷了。ばーらばーらばーら

(中略)

6 (蘇三、唱う)
低頭離了洪洞県、でぃーとう りーりゃお ほんとーんしぇん
将身来在大街前。ずぃあん しぇん らいざい だーじゃいちぇん
未曽開言我心好惨、うぇいつぉん かい いぇん うぉ すぃーん はお つぁん
過往的君子聴我言。ぐお わーんでぃ じゅんづ てぃん うぉー いぇん
哪一位去到南京転、な いーうぇい ちゅだお なんじーん ぢゅあん
与我那三郎把信伝。ゆぃ うぉ な さんらん ば すぃーん ちゅあん
言説蘇三把命断、いぇん しゅお すーさん ばーみんどぅあん
来生我変犬馬我当報還。らいしょん うぉー びぃえん ちゅあんまー うぉー だーん ばお ほあーあーん
7 (崇)哎、我説蘇三哪、えい、うぉーしゅおすーさんな  放着道児不走、ふぁんぢゃだおるぶぞう 你跪在這児是祝告天地、にいぐいざいじゃるしーぢゅがおてぃえんでぃー  還是哀求盤川呢?はいし あいちゅう ぱんちゅあんな
 (蘇)一不祝告天地、いーぶーぢゅーがおてぃえんでぃー
二不哀求盤川。あるぶあいちゅうぱんちゅあん

京劇『空城計』

参考サイト内リンク:京劇実況中継「空城計」

 裘少戎が司馬仲達を演じて唱う
戯学彙考 1926,空城計 [原文] (西皮原板)有本督在馬上用目観定、諸葛亮在城楼飲酒撫琴。左右琴童人両箇、打掃街頭倶都是那老弱残兵。我本当領人馬殺進城、(白)殺! 殺!(白)殺不得!(唱)又恐怕中了巧計行。勒住馬頭把話論、尊声諸葛聴分明。任你設下了千万計、棋逢対手一般平。

[読み下し] (諸葛孔明(しょかつこうめい)が城壁の上で悠然と琴を弾いている姿を望見しつつ、司馬仲達(しばちゅうたつ)が唱う)
本督(ほんとく)は馬上にて目もて観定す。
諸葛亮(しょかつりょう)は城楼にて酒を飲み琴を撫(な)づ。
左右には琴童(きんどう)、人ふたり。
街頭を打掃するは、みなすべてこれ老弱の残兵。
我はもとよりまさに人馬を領して城に殺進すべけれど・・・
(将兵が叫ぶ)殺(シャー 突撃)! 殺! (司馬仲達が言う)殺不得(シャーブダア 突撃中止)! (続けて唱う)
また恐るらくは巧計の行わるるに中(あた)らんことを。
馬頭を勒(ろく)しとどめ、ことばを論ぜん。
尊声(そんせい)、諸葛(しょかつ)よ、聴くこと分明なれ。
たとい你(なれ)が千万の計を設下すれども、
(き)は対手に逢(あ)えばひとしく平らかなり。

京劇『李陵碑』

参考サイト内リンク:京劇実況中継「李陵碑」

 名優の楊宝森が楊継業を演じて唱う
[原文] (唱「反二黄慢板」)嘆楊家秉忠心大宋扶保、到如今只落得兵敗荒郊。恨北国蕭銀宗打来戦表、要想奪我主爺錦繍龍朝。賊潘洪在金殿帥印掛了、我父子倒做了馬前英豪。金沙灘双龍会一陣敗了、只殺得血成河四路奔逃。我的大郎児替宋王(快三眼に転じる)把忠尽了、二郎児短剣下命赴陰曹。楊三郎被馬踏屍骨不暁、四八郎落番邦無有下梢。楊五郎在五台学法修道、七郎児被潘洪箭射芭蕉。只剰下楊延昭随営征討、可憐他尽得忠又尽孝、血染戦場、馬不停蹄、為国勤労。可憐我八箇子、四子喪亡、我把四子喪了、我的児呀、(転原板)可憐我一家人無有下梢。魍魎臣賊潘洪又生計巧、請我主到五台山快楽逍遥。又誰知中了那奸賊籠套、四下裏衆番兵猶如海潮。多虧了楊延昭一馬来到、一桿槍保聖駕闖出籠牢。有老夫領人馬又闖賊巣、那時我東西殺砍、左衝右突、虎撞羊群、被困在両狼山、内無糧、外無草、盼兵不到、眼見得我這老残生就難以還朝。我的児呀。(老兵白)餓呀。(唱)飢餓了就該把戦馬宰了、(老兵白)冷呀。(唱)身寒冷就該把外衣穿上、(老兵白)雁来 ・・・・・・弦断了。(唱)宝雕弓打不着空中飛鳥、弓折弦断為的是哪条。(探子)報! 戦馬被石虎絞倒。(転散板)恨石虎把我的戦馬絞倒、為大将無坐騎怎把兵交。看過了青銅刀爺把路找、尋一箇避風所再作計較。

[読み下し] (兵たちは「餓う・・・・・・ハア!」と呻吟する)
(楊継業は、反二黄慢板で唱う)
嘆くらくは、わが楊家(ようか)、忠心をとりて大宋を支え守るも、
いまに到りて、落ちに落ちて、兵、荒郊に敗れたり。
恨むらくは、北国の蕭(しょう)銀宗(遼の皇帝の名)、戦表をよこしきたり、
我が主爺(しゅや)(宋の皇帝・太宗)の錦繍(きんしゅう)の龍朝を奪わんとほっす。
賊の潘洪(はんこう)(潘仁美)めは、金殿にて帥印(すいいん)をおしいただき、
我ら父子(おやこ)はかえって馬前の英豪となれり。
金沙灘(きんさたん)・双龍会の一陣に敗れ、
ただ殺し得たり、血は河と成り四路に奔(はし)り逃ぐ。
我が大郎児(楊延平)は宋王(宋の皇帝・太宗)に替りて(歌は、反二黄快三眼に転じる)
忠を尽くし、二郎児(楊延定)は短剣の下、命は陰曹に赴けり。
楊三郎(楊延輝)は馬に踏まれ屍骨(しこつ)もわからず、
四・八郎(楊延朗と楊延順)は番邦(ばんぽう)に落ち、
楊五郎(楊延徳)は五台にて法を学び道を修め、
七郎児(楊延嗣)は潘洪によりて箭(や)を芭蕉に射らる。
ひとり残りし楊延昭(楊六郎)は、営に随い征討す、
憐れむべし彼は忠を尽くし得てまた孝を尽くし、血は戦場を染め、馬は蹄(ひづめ)を停めず、国の為に勤労す。
憐れむべし我が八人の息子、四子は喪亡(そうぼう)す。我は四子を喪(うしな)えり、我が児(こ)よ!
(反二黄原板に転ずる)
憐れむべし我が一家の人は下梢(ゆくすえ)ある無し。
魍魎(もうりょう)の臣、賊の潘洪めはまたわるだくみをこらし、
我が主(宋の太宗)に、五台山にゆき快楽逍遥(かいらくしょうよう)したまえ、と請(こ)う。
また誰か知らん、かの奸賊(かんぞく)の籠套(ろうとう)にはまり、四方に満ちる番兵どもは、なお海潮のごとし。
得難きかな、楊延昭は単騎にて馳せ参じ、一桿(いっかん)の槍(やり)もて聖駕(せいが)をまもり籠牢(ろうろう)より闖出(ちんしゅつ)す。
老夫(それがし)は人馬を領し、また賊巣(ぞくそう)に闖(ちん)し、その時に我は東西に殺し砍(き)り、左に衝し右に突し、虎の羊群にぶつかるがごときも、両狼山(りょうろうさん)に困(こん)せられ、内に兵糧(ひょうろう)無く外に秣(まぐさ)無く、援軍を待つも到らず。
まのあたりにす、我がこの老残生はすなわち以て朝廷に生還するは難(かた)からんと。我が児(こ)よ!
(兵が言う)餓う!
(楊継業、続けて唱う)飢えたれば、すなわち戦馬をつぶすべし。
(兵が言う)凍(こご)ゆ!
(楊継業、続けて唱う)身、寒ればすなわち外衣を羽織るべし。
(兵が言う)雁が来れり。
(楊継業、兵から弓を受け取り、空を飛ぶ雁を射落とそうとする。弓の弦がプツンと切れる)
(楊継業、続けて唱う)
宝雕(ほうちょう)の弓も空中の飛鳥をおとしえず、弓は折れ弦も切るるとは、これなにゆえぞや。
(斥候が飛び込んでくる)ご注進! 戦馬は石虎(せっこ)めにからめ倒されました。
(散板で続けて唱う)
恨むらくは、石虎の我が戦馬をからめ倒ししを。
大将たるもの、坐騎も無くして、いかで兵を交えんや。
青銅の刀をもちきたれ、爺は活路をもとめん、風を避くる所をさがし再び計較(はかりごと)を作(な)さん。
(退場)

参考サイト内リンク 対談 楊家将


京劇「九江口」

 袁世海 演 張定辺
MIDIファイルによる旋律 [
F調(CG定弦、1=F、二黄調)]と[G調(DA定弦、1=G、二黄調)]
[原文]  哎、主公啊! 你此番発兵玉山、必中那劉伯温的詭計。軽者損兵折将、重者全軍覆没。想老臣与主公、乃是患難兄弟、情同骨肉一般。這十万大軍、戦将千員、也是老臣親手教練。眼睜睜你們自入龍潭、葬身虎口、這北漢基業、就要化為飛灰。怎不令人可惜呀! 怎不令人可惨! 怎不令人哎(二黄碰板)心似火燃! 休怪臣説出了不利之言。你此番到玉山你必遭暗算、因此上頭戴着麻冠、身穿重孝、将主阻攔。勧主公翻然醒悟、当機立断。勧主公聴臣言将人馬撤回還。十万児郎得安全、臣縦然是粉身砕骨落得箇心甘、主公啊!

[読み下し] ああ、主公よ。(鑼鼓経;大、台、倉才倉才、倉)
(みまし)、このたび兵を玉山に発せば、必ずやかの劉伯温の詭計(きけい)にはまらん。軽くんば、兵を損し将を折(せっ)し、重くんば全軍覆没(ふくぼつ)せん。
(おも)ふらくは老臣(ろうしん)と主公と、乃(すなは)ちこれ患難の兄弟にして、情は骨肉と同じく一般なり。
この十万の大軍、戦将千員は、またこれ老臣のてづから教練するところ。
みすみす、とのたちがみづから龍潭(りゅうたん)に入りて身を虎口(ここう)に葬られなば、この北漢の基業はすなわち化して飛灰と為らんとす。
いかで人をして、まことに惜しまざらしめんや。(都・・・、倉)
いかで人をして、まことになげかざらしめんや!(倉) 
いかで人をして・・・(大、大、大、大、大大札、倉)
ああ! (多羅)(「二黄碰板」の節回しで唱う)
心は火の燃ゆるに似たり。(札、札、大大)
臣を怪しむなかれ、不利の言を説き出せり、と。(札、大)
(みまし)こたび玉山に到らば、你、必ずや暗算に遭はん。(札、大大)
かかるがゆえに、われは麻冠をかぶりて、身に重孝をまとひ、主をば阻(はば)み攔(とど)めんとす。(札、大)
主公に勧む、翻然として醒悟(しょうご)し、当機立断せよ。
主公に勧む、臣の言を聴き、人馬をば撤してめぐりかへらしめよ。
十万の児郎(ますらを)、全きを得なば、臣はたとひ粉身砕骨となるも、落ち得て心甘んぜん。主公よ!(都・・・、台、倉才、倉)

[発音]
1哎、主公啊 あい、ちゅごんあー
2你此番発兵玉山 にい、つーふぁん、ふぁーびんゆぃしゃん
3必中那劉伯温的詭計 びーぢょんなー、りゅうぼうぇん、でぃ、ぐいじ
4軽者損兵折将 ちん、ぢゃ、すぅんびん、ぢゃーずぃやん
5重者全軍覆没 ぢょん、ぢゃ、ちゅあんじゅん、ふーむぉー
6想老臣与主公 すぃあんらおちぇん、ゆぃちゅごん
7乃是患難兄弟 ないしー、ほぁんなんしょんでぃ
8情同骨肉一般 つぃんとん、ぐぅろう、いーばん
9這十万大軍、戦将千員 ぢゃ、しーわんだーじゅん、ぢゃんずぃあんつぃぇんゆあん
10也是老臣親手教練 いぇーしらおちぇん、つぃんしょうじゃおりぇん
11眼睜睜你們自入龍潭 いぇんぢぇんぢぇん、にめん、ずーるろんたん
12葬身虎口 ざんしぇんふーこう
13這北漢基業 ぢゃ、ぼーはんじーいぇ
14就要化為飛灰 ずぃゅうやお、ほあうぇいふぇいほい
15怎不令人可惜呀 ぜんぶりんれん、こーすぃーや
16怎不令人可惨 ぜんぶりんれん、こーつぁん
17怎不令人、哎 ぜんぶりんれん、あい
18心似火燃 しーんす、ふおーらん
19休怪臣説出了不利之言 しゅうぐぁいちぇん、しゅおちゅーりゃお、ぶーりーちーいぇん
20你此番到玉山你必遭暗算 につーふぁん、だおゆぃしゃん、に、びーざお、あんなすぁん
21因此上頭戴着麻冠 いんつーしゃん、とうだいぢゃ、まーぐぁん
22身穿重孝 しぇんちゅあん、ぢょんしゃお
23将主阻攔 ずぃあんちゅー、ずーらん
24勧主公翻然醒悟 ちゅあんちゅーごん、ふぁんらんしんうー
25当機立断 だんじーりーどぅあん
26勧主公聴臣言 ちゅあんちゅーごん、てぃんちぇーんいぇーん
27将人馬撤回還 ずぃあんれーんまー、ちぇ、ふいえふぁん
28十万児郎得安全 しーわんなあるらん、だーあんなちゅあん
29臣縦然是粉身砕骨落得箇 ちぇんぞんらんし、ふぇんなしぇんねすいぐ、るおーだこ
30心甘、主公啊 すぃーん、がーん、ちゅーごーんあー・・・・・・

京劇「逍遙津」

 高慶奎 演 献帝
[原文]  伏后、御妻、妻呀! 父子們在宮中傷心落涙、想起了朝中事好不傷悲。曹孟徳与伏后冤家作対、害得她魂霊児不能够相随。二皇児年歳小孩童之輩、他不能在霊前奠酒三杯。我恨奸賊把孤的牙根咬砕、上欺君下圧臣作事全非。欺寡人在金殿不敢回対、欺寡人好一似猫鼠相随。・・・・・・

[読み下し] (鑼鼓経=叫頭:倉台、倉台、倉台、倉台、倉、倉。台、台、台台、台台)
伏后(ふくこう)、(倉、倉、台、倉)御妻(ぎょさい)よ、妻(つま)よ。イヤアアア・・・(泣く)(倉、台、倉。倉台、倉台、倉台、倉台・・・・・・倉、台台、倉、倉、台) 
(二黄導板)父子們(おやこら)、宮中にて傷心落涙し
(台台、倉台、倉台、倉台・・・)(帽児頭:台、倉七、倉七、頃、倉、倉、多羅)
(回龍)朝中の事を想起すれば好(まこと)に傷悲せざらんや。
(慢長錘:倉七、台七、倉七、台七、倉七、台七台、倉令七、乙台倉、大卜台、倉)
(原板)曹孟徳(そうもうとく)は伏后と、冤家(あだ)として対(たい)を作(な)す、
(かのじょ)を害し得て、魂霊児(たましひ)を相ひ随ふ能够(あた)はざらしむ。
二皇児は年歳(としは)も小(をさな)く孩童(がいどう)の輩(やから)なれば、
(かれ)は霊前にて酒三杯を奠(てん)することも能(あた)はず。
我は奸賊(かんぞく)を恨む、孤の(慢板に転ずる)牙(は)の根をば咬(か)み砕く、
上は君を欺(あざむ)き下は臣を圧し、事を作(な)すこと全て非なり。
寡人(かじん)を欺(あざむ)き金殿にて敢(あへ)て回対(かいたい)せず、
寡人を欺き好(まこと)に一に猫鼠(びょうそ)相随ふに似たり。・・・・・・

京劇「大鬧天宮」より「八卦炉」

 李光 演 孫悟空  李欣 演 太上老君
[原文] (太上老君唱昆曲曲牌「浪淘沙」)丹灶紫煙高(鑼鼓経:台台)、九転功饒。一朝爛嚼付猴妖(台台台)、今朝(倉)、骨尽身銷(台倉台倉)。
(白)下面聴者! (六丁六甲、幕内応)有。(老君)将妖猴押上来!
嘟! 胆大的妖猴、竟敢偸喫金丹怎知你也有今天! (孫悟空:叫頭)老頭啊、老頭! 前者俺喫了你的金丹、如今又用金丹為俺接風不成? (老君)時到如今你還敢倔強。哎! (六丁六甲:有!) 将他放在八卦炉中、錬回金丹還我! 衆仙将! 多加炉炭者!
(唱「嗩吶二黄導板」)八卦炉錬妖猴天威顕耀。(白)将法壇、壇、壇、囲住者! (回龍)按三才天地人烈火焚焼!
(孫悟空、在炉内叫)好熱呀、好麼熱!
(老君笑。唱「嗩吶二黄原板」)小妖猴熱難当高声喊叫、管叫你霎時間遍体全焦。錬七七四十九日焦頭爛脳、・・・・・・


[読み下し] (太上老君、両脇に童子が侍立。昆曲の曲牌「浪淘沙」のふしで唱う)
丹灶(たんと)、紫煙(しえん)高し。
九転、功、饒(めぐ)る。
一朝、爛嚼(らんしゃく)して猴妖(こうよう)を付す。
今朝、骨(ほね)(つ)きて身(み)(き)えなん。
(セリフ)下面のものよ聴け。 (六丁六甲、幕内で答える)有(はい)。 (老君)妖猴(ばけざる)をば押し上り来れ。
(「急急風」のリズムに乗り、六丁六甲が、手錠をかけた孫悟空を連れて登場)
(セリフ) [口都](ドーウ)! 胆(たん)、大なる妖猴よ。竟(つい)に敢(あえ)て金丹を偸(ぬす)み喫(きっ)すとは。怎(いか)で你(なれ)に也(ま)た今天(こんてん)有るを知らんや。
(孫悟空、叫頭のリズムで答える) 老頭児(ロートル)よ、老頭児! さきに俺は你(あんた)の金丹をくらひつ。いままた金丹を用ゐて俺のために接風(もてなし)してくれるにあらずや。
(老君)ふっ、時、如今(じょこん)に到るに、你(なれ)、なほふとどきにも倔強(くっきょう)なり。哎 (六丁六甲:有) 他(こやつ)をば八卦炉(はっけろ)の中に放ち在らしめ、金丹を錬回して我に還(もど)せ。
(六丁六甲、孫悟空を八卦炉の中に放り込む。老君のセリフ) 衆仙将よ! 多く炉に炭を加へよ。
(前奏)(「嗩吶二黄導板」のふしで唱う)
八卦炉(はっけろ)で妖猴(ようこう)を錬せば、天威は顕(あき)らけく耀(かがや)く。
(セリフ、六丁六甲に命令する)法壇、壇、壇をば囲住せよ。
(打楽器の連打)
(回龍で唱う)三才を按(あん)じ、天地人の烈火もて焚焼(ふんしょう)せん。
(孫悟空、炉の中で叫ぶ)好も熱いよ、好麼熱い。
(太上老君、満足げに笑う。音楽。嗩吶二黄原板で唱う)
小妖猴(ばけざるめ)は、熱きこと当り難く、高声もて喊(わめ)き叫ぶ。
(なれ)をして霎時間(ひとしきりのうち)に遍体全焦せしめん。
錬すること七七四十九日なれば、頭を焦がし脳まで爛(らん)す。

[発音]
(歌) 丹灶紫煙高 どんどー ずーいぇーん がーお
   九転功饒 じう ぢゅあん ごーん らーお
   一朝爛嚼付猴妖 いーぢゃお らんじゃお ふー ほうやーお
   今朝骨尽身銷 じーんなぢゃーお ぐーじーん しぇんすぃあーお
(セリフ)下面聴者! しやあめんてぃんちゃ (幕の中で)有 よう。
将妖猴押上来! ずぃやん やおほーう やーしゃん らーい (打楽器の連打)
[口都]! どーう
胆大的妖猴、だんだー でぃ やおほう
竟敢偸喫金丹 じんがーん とうちー じんだん
怎知你也有今天! ぜんぢー にー いえよう じーんてぃえーん
(孫悟空セリフ)老頭啊、老頭! らおとおるや、んー、らおとる!
前者俺喫了你的金丹、つぃえんちゃ、あん、ちーりゃお、にーでぃ、じんだん
如今又用金丹為俺接風不成? るじん、にー、ようよん、じんだん、うぇぃあん、じえふぉん、ぶちょん。
(老君)時到如今你還敢倔強。哎! (ふっ)、しーだおるーじん、にー、ほあんがんじゅえじゃん。あい。
(六丁六甲:有!よう)
将他放在八卦炉中、すぃあん、た、ふぁんざい、ばーぐわるーぢょん
錬回金丹還我! りぇんふい、じんだん、ほあん、うぉー (打楽器)
衆仙将! ぢょん、すぃえんずぃあん (んが)
多加炉炭者! どぉおじゃー、ろーたんぢー (はーっ)
(歌) 八卦炉錬妖猴 ばぐわろー、りぇんなゆう、はーお
   天威顕耀 てぃえんうぇいしぇーんなー、いやわー
(セリフ)将法壇、壇、壇、囲住者! すぃあん、ふぁー、とぁあんとぅあんとぅあん、うぇい、ぢゅー、ち! (打楽器)
(歌) 按三才天地人烈火焚焼 あんさんつぁーい、てぃえんでぃーれん、りえふお、ふぇんしゃーお。
(孫悟空、炉の中で叫ぶ) 好熱呀、好麼熱! はおら゛ーや、はおまら゛ー! 
(老君笑う)おー、ほっほっほっほっ。
(歌) 小妖猴熱難当 すぃあお、やおほう、ら゛ーなんだーん
   高声喊叫がおしぉん、じゃおらん
   管叫你霎時間遍体全焦 ぐわんじゃおにー、しゃーしーじぇん、びぇんてぃー、ちゅあんじゅう
   錬七七四十九日 うぇぃ、りぇーんちーちい、すーしじーうり゛ー
   焦頭爛脳 じゃおとう、らん、なーお
      (ふっ、ふっ、ふふふふ・・・)

福建省 閩劇『珍珠塔』

 福建省福州市閩劇団  張品生 演 方卿
[原文] (唱「清言詞頭」) 方卿告貸到襄陽。(唱「清言詞」) 呀! 姑丈門前灯火輝煌。適逢姑丈五十大慶、冠蓋如雲車馬盈門。顧影自慚衣衫襤褸、進? 入門取辱志士不為。退? 噯、不遠千里河南而来、告借盤川入京赴試、豈可未交一言、空手回去? (接唱前調) 徘徊門口頗感彷徨、今日我且先退避、来朝客散、来朝客散好開言。

[読み下し] (「清言詞頭」で唱う)
方卿(ほうけい)は告貸(こくたい)せんと襄陽(じょうよう)に到りぬ。
(唱「清言詞」) 呀(や)! 姑丈(こじょう)の門前に灯火は輝煌(きこう)たり。
たまたま姑丈五十の大慶に逢(あ)
冠蓋(かんがい)は雲の如く、車馬は門に盈(み)つ。
(かげ)を顧(かへり)みるに自(みづか)ら衣衫(いさん)の襤褸(らんる)たるを慚(は)づ。
(セリフ)進まんか? 門に入りて辱を取るは、志士為さず。退かんか? 噯(アイ)、千里の河南を遠しとせずして来る、盤川(はんせん)を告借して京に入りて試に赴かん、豈(あ)に未だ一言も交(かは)さずして、空手(からて)にて回(かへ)り去(ゆ)くべけんや?
(歌にもどる)
門口に徘徊して頗(すこぶ)る彷徨(ためらひ)を感ず、
今日我は且(しばらく)く先(ひとま)づ退き避けん、
来朝客散ぜん、来朝客散ずれば、好(よ)し言を開かん。

ふぁんぎん がおだい どうしょんよん
やー ぐーどーん もーんちーん だいん ふおー
すぃーふぉーん ぐーぞーん うーせいだいけいーん
ぐぁんがい ゆーうーん じゅいまー いーんもーん
ぐーいーん じーざーん いーさーんらーんろいー
ずぃえん いーもん
とう あい ぶおん
ぱいふぉい もんこーう ぽーがんぽんほぉん
じんりー うぉーちゃー すぃえんとぉいぴー
らいちうかーさん らいちうかさーん
ほうかい うぉん

広東漢劇 『五丈原』

 広東漢劇院楽隊伴奏  黄伝粦 演 孔明
[原文]  孔明:姜維。 姜維:在。 孔明:你跪上来。 姜維:遵命。(二黄慢板)我和你雖然是将帥相称、却還是有一分師徒之義。全仗你姜将軍秉忠心保皇家社稷、我把這畢生武謀謟略教導与你、教導你奇門遁甲用兵機。我平生学就了五五二十五万兵機戦略、裏面有十万四千一十二箇精理。八卦内按定了八務七戒六恐五惧之計、伝授将軍切勿負我的心機。我死後要依我三件準備、一庄一件你記在心。頭一件切不可開喪吊孝、第二件慢慢移営抵退魏兵。第三件我死後那魏延必定造・・・・・・ (姜維:造甚麼?) 造反。(間奏)我授你妙計殺他身、宝帳内你与我快伝将令、快伝那楊儀馬岱与王平。(姜維:丞相有命、楊儀馬岱王平進帳。楊・馬・王:来也。)

[読み下し] 孔明:姜維(きょうい)よ。 姜維:在(はい)。 孔明:你(なんぢ)、跪(ひざまづ)き上り来れ。 姜維:命(みことば)の遵(まま)に。
(「二黄慢板」で唱う。)
我と你(なれ)と、将帥(しょうすい)相称するといへども、
(かへ)って還(ま)た是(こ)れ一分の師徒の義有り。
全て仗(たよ)るらくは、你(なれ)、姜将軍の忠心を秉(と)りて皇家の社稷(しゃしょく)を保たんことに。
我は這(こ)の畢生(ひっせい)の武謀謟略(とうりゃく)をば你の与(ため)に教導せり、
你に奇門遁甲、兵機を用うるを教導せり。
我が平生に学就し了(おは)れるは五五二十五万の兵機戦略なり、
裏面に十万四千一十二箇の精理有り。
八卦(はっけ)の内、八務七戒六恐五惧の計を按(あん)じ定め了る。
将軍に伝授せり、切に我の心機に負くこと勿(な)かれ。
我の死後は我が三件の準備に依るを要す。
一庄一件、你は記(おぼ)えて心に在らしめよ。
(はじめ)の一件は、切に開喪吊孝すべからず。
第二件は、慢慢(まんまん)として営を移し魏兵(ぎへい)を抵退せよ。
第三件は我の死後、那(か)の魏延(ぎえん)は必ず定めし造・・・・・・
(姜維:甚麼(なに)をか造(ぞう)する?)
造反(ぞうはん)せん。
(間奏)我は你に妙計を授け他(かれ)の身を殺さしめん。
宝帳(ほうちょう)の内にて、你は我の与(ため)に快(はや)く将令を伝へよ、
(はや)く那(か)の楊儀(ようぎ)・馬岱(ばたい)と王平(おうへい)とに伝へよ。
(姜維:丞相(じょうしょう)命ずる有り、楊儀・馬岱・王平、帳(とばり)に進(はい)れ) (楊・馬・王:来たれり。)

[発音]
1孔明:姜維。じゃんうぉい  姜維:在。ざーい  孔明:你跪上来。にーぐいしゃんらい  姜維:遵命。ずぉんみーん
(「二黄慢板」前奏、歌)
2我和你雖然是将帥相称、うぉー ほー にー、すいらーんしー、じゃんしゅあい しゃんちょん
3却還是有一分師徒之義。ちゅえーほあんすー ゆー いーふぇん すーあー とぅーあ ちーいー
4全仗你姜将軍秉忠心保皇家社稷、ちゅあん ぢゃん にー じゃん じゃんじゅーん、びーん ぢょんすぃーん ぼおわー ほあんじゃ しゃーしゅ
5我把這畢生武謀謟略教導与你、うぉーばー ぢゃ びーせん うーもうだおりゅえ じゃおだお ゆぃ にー
6教導你奇門遁甲用兵機。じゃおだお にー ちーめんどぅんじゃー よん びんじー
7我平生学就了五五二十五万兵機戦略、うぉぴんせん しゅえじゅうりゃお うーうー あるしーうーわん びんじー ぢゃんりゅえ
8裏面有十万四千一十二箇精理。りーみぇんゆー しーわんすーちぇん いーしーがじんりー
八卦内按定了八務七戒六恐五惧之計、ばぐわーねい あんでぃんりゃお ばーうーちーじゃいりゅうこん うーじゅぃぢーじー
9伝授将軍切勿負我的心機。ちゅあんしょう じゃんじゅん ちえうーふー うぉーでぃすぃんじー
10我死後要依我三件準備、うぉーすーほう やおいーうぉー さんじぇん ぢゅんべい
11一庄一件你記在心。いーぢゅあんいーじぇん にー じーざいすぃん
12頭一件切不可開喪吊孝、とういーじぇん ちえ ぶこ かいさん でぃあお しゃお
13第二件慢慢移営抵退魏兵。でぃーあるじぇん まんまん いーいん でぃーとぅい うぇいびん
14第三件我死後那魏延必定造・・・・・・ でぃーさんなじぇん うぉーすーほう なー うぇいいぇん びでぃん ざーお(咳き込む) (姜維:造甚麼?)ざーお しょんま
 15造反。ざーお ふぁんなー
(間奏)
16我授你妙計殺他身、うぉーしょうにー みゃおじー しゃーたーしぇん
17宝帳内你与我快伝将令、ばおぢゃんのい にー ゆぃうぉー くわいちゅあん ずぃあんりん
18快伝那楊儀馬岱与王平。くわい ちゅあん りん なー やんいー まだーい ゆぃ わんぴん(歌終わり) (19姜維:丞相有命、ちょんすぃあん ようみん
 楊儀馬岱王平進帳。ゆんいー まーだい わんぴん ずぃんぢゃん
 楊・馬・王:来也。らい、いえー)

南曲「満空飛」

福建省泉州市南音研究社 楊双英 唱
[原文] (五空四儀・緊三寮)鵞毛雪、満空飛。破草氈、当作羊皮裘。残羮剰飯口中食、李亜仙你怎知? 破帽子在頭上戴、破布衫露出肩胛。腰間繋着一条爛糸蔴、足下穿是双破布鞋。走上街放丟覓。我便是鄭元和、黄金嫖尽怎奈何。勧少年們休似我、我終日未曾求暖飽、肚皮中忍飢餓。我的頭上大雪飄。誰可憐厳冬難挨天凍。想当年我亦曾唱板和調、鸞友鳳交。結鬃帽子戴着、白玉鈎鎖着、五花馬騎着、来興呵跟着、身中帯有宝鈔。我身中帯有宝鈔、逢着一個妖嬌、把我来相邀、日日花朝夜夜元宵、快楽逍遙。今日裏金子嫖得罄空、我銀子嫖得浄光、結鬃帽子壊了、白玉鈎断了、五花馬宰了、来興呵都売了、単身惟我孤老。我身中没有宝鈔、老鴇你来吵我、絮絮叨叨、把我趕出門来。李亜仙、李亜仙、不知在何処? 鄭元和不得已、因此来打唱蓮花嘮哩、嘮哩蓮花、蓮花嘮哩。

[読み下し]
大雪の冬の町。ボロをまとったホームレスの若者が唱う。
 鵞毛(がもう)の雪、満空に飛ぶ。
 破れし草氈(むしろ)を羊皮の裘(けごろも)に当てなす。残羮剰飯(ざんこうじょうはん)、口中の食(じき)たり。
 李亜仙(りあせん)よ、你(なれ)は怎(いか)で知らんや。
 破れし帽子を頭の上に戴(かぶ)り、破れし布衫(ふさん)は肩胛(かた)を露出す。腰間(ようかん)に繋着(けいちゃく)するは一条の爛れし糸蔴(しま)、足下に穿(は)くは是れ双つの破れし布鞋(ぬのぐつ)。走(ある)いて街(まち)に上(ゆ)き放丟(なげうち)て覓(ものごひ)す。
若者は、自分が落ちぶれたいきさつを唱う。
 我は便(すなは)ち是れ鄭元和(ていげんな)なり。黄金嫖(ひょう)し尽きて怎奈何(いかん)せん。少年們(しょうねんたち)に勧む、我に似ること休(な)かれ。我、終日未だ曾(かつ)て暖飽(だんぽう)を求めず、肚皮(とひ)中飢餓を忍ぶ。我の頭上に大雪飄(ひるがへ)る。誰か憐むべき、厳冬、天凍を挨(う)け難(がた)し。
若者は、裕福で遊びまわっていた頃を回想して唱う。
 想ふ当年、我も亦(ま)た曾(かつ)て唱板和調し、鸞友鳳交(らんゆうほうこう)す。結鬃(けっそう)の帽子を戴(かぶ)りて、白玉の鈎(おびだま)を鎖(し)めて、五花の馬に騎(の)りて、来興呵(はやすものら)を跟(つきしたが)はしめて、身中に宝鈔(ほうさ)を帯び有(も)てり。
 我、身中に宝鈔を帯び有ちしとき、一個(ひとり)の妖嬌(ようきょう)に逢(あ)へり。我をば来り相邀(あひむか)ふ。日日花朝たり、夜夜元宵(げんしょう)たり、快楽逍遙(かいらくしょうよう)せり。
 今日裏(けふ)、金子(きんす)は嫖し得て罄(つ)き空(むな)し。我、銀子(ぎんす)は嫖し得て浄光(すりなくし)たり。結鬃(けっそう)の帽子は壊れて、白玉の鈎(おびだま)は断ちきれて、五花の馬は宰(つぶ)されて、来興呵(はやすものら)は都(すべ)て売りて、単身惟(た)だ我のみ孤(ひと)り老ゆ。我が身中より宝鈔のなくなるや、老鴇你(やりてばばめ)は来りて我を吵(ののし)り、絮絮(じょじょ)として叨叨(とうとう)として、我をば門より趕(を)ひ出し来る。
回想から現在にもどり、昔の恋人=なじみの芸者の名前を口ずさむ。
 李亜仙(りあせん)よ李亜仙、知らず何処(いづく)に在りや。鄭元和は已(や)むを得ず、此(これ)に因(よ)りて来りて打唱す。「蓮花[口労](れんかろうり)[口労]哩蓮花(ろうりれんか)、蓮花[口労]哩」と。

[発音]
1鵞毛雪 あーまおしゅえ    2満空飛 まんこーんふえい
3破草氈 ぽーつぁおにゃん      4当作羊皮裘 だんぞー、やんぴーろーい
5残羮剰飯口中食 ざんぐん、せんふぁん、かおう、づぉんすー
6李亜仙你怎知 りーやーしぃあん、にー、ぞん、つー
7破帽子在頭上戴 ぽーまおず、ざい、とぅお、さんだい
8破布衫露出肩胛 ぽーぶーさん、ろうちゅー、じゃんしや
9腰間繋着一条爛糸蔴 やおじゃん、しえぞ、いーてぃあお、なーん、すー、もー
10足下穿是双破布鞋 ずーしあ、つぁんすー、すぁんぽーぶーしえ
11走上街放丟覓 ぞーさんじえ、ふぁん、でぃう、もー
12我便是鄭元和 うぉーびゃんすー、ぞんゆぁんほー
13黄金嫖尽怎奈何 ほあんじーん、ぴゃおじぇん、ぞんぬないほー
14勧少年們休似我 ちゅあん、さおにゃんりーめん、しゅうすーうぉー
15我終日未曾求暖飽 うぉーづぉんるー、うぇいつぉん、ちゅうるぁんばお
16肚皮中忍飢餓 どぅーにーぞん、にぇん、じー、おー
17我的頭上大雪飄 うぉーめん、とぅおさん、だいしゅえぴゃお
18誰可憐厳冬難挨天凍 すいこーりゃん、やんどん、らんあい、てぃあんどん
19想当年我亦曾唱板和調 すぃやんだんにぁん、うぉーいぇつぉん、つぁんばん、ほーでぃあお
20鸞友鳳交 りゅあんゆう、ふぉんじゃお
21結鬃帽子戴着 じえぞんまおず、だいぞー
22白玉鈎鎖着 ばいゆぃごう、すおぞー
23五花馬騎着 うーふはまー、ちーぞー
24来興呵跟着 らーいしんあー、るー、げんぞー
25身中帯有宝鈔 せんづぉんだいゆう、ばおつぁお
26我身中帯有宝鈔 うぉーせんづぉんだいゆう、ばおつぁお
27逢着一個妖嬌 ふぉんぞ、いーご、やおじゃお
28把我来相邀 ばーうぉーらいしゃんやお
29日日花朝夜夜元宵 るーるー、ふあつぁお、いぇーいぇー、ゆあんしゃお
30快楽逍遙 くわいろー、う、しゃおいーやお
31今日裏金子嫖得罄空 じんるーりー、じんず、ぴゃおだきぇんこん
32我銀子嫖得浄光 うぉー、いぇんず、ぴゃおだきぇんこん
33結鬃帽子壊了 じえぞんまおず、ふぁいりゃお
34白玉鈎断了 ばいゆぃごう、だーんりゃお
35五花馬宰了 うーふあまー、ざいりゃお
36来興呵都売了 らーいしんあー、どうまいりゃお
37単身惟我孤老 だんせんいーぞー、くーらお
38我身中没有宝鈔 うぉーせんづぉんめいゆう、ばおつぁお
39老鴇你来吵我 らおばお、りー、らいつぁおうぉー
40絮絮叨叨 すーすー、たーおたお
41把我趕出門来 ばーうぉー、がんつう、めんない
42李亜仙、李亜仙 りーやーしぃあん、りーやーしぃあん
43不知在何処? ぷーつーざいはーちゅー
44鄭元和不得已 ぜんいぇんほー、ぶーだーいー
45因此来打唱蓮花[口労]哩 いんつーらいだーつぁん、りゃんふあ、う、ろーりー
46[口労]哩蓮花、蓮花[口労]哩 ろーりー、りゃんふあ、りゃんふあ、ろーりー、うー

広東省 粤劇「喬老爺上轎」より「錯搶鬚眉当嬌娥」

 文覚非 演 喬老爺
[原文] (河調慢板)1你哥哥欺凌人常闖禍、(中板)2中途相遇起風波。3他鞭馬来撞傷我、4追賠湯薬我奔波到黄界駅中無宿所、5借街頭轎内作棲身窩。6冷風寒、真凄楚、7幸轎内有包裹。8你哥哥佢搶人搶錯我、9把鬚眉錯認女嬌娥。10本来我逃亡非不可、11為救人仗義披綺羅。12闖進蘭閨非我之過、13懇求饒恕免我枉受災磨。

[読み下し] (河調慢板のふしで)
1你(あんた)の哥哥(にいさん)は人を欺凌(いたぶ)り、常に禍(わざわい)を闖(しでか)す、
(中板のリズムで)
2中途(ちゅうと)にて相遇し風波を起す。
3他(かれ)は馬に鞭(むち)あて来りて、我に撞(あた)り傷つけたり。
4追ひて湯薬(のみぐすり)を賠(ばい)せしめんと、我は奔波(ほんぱ)して黄界駅(こうかいえき)中に到るも、宿所無ければ、
5街頭の轎(かご)の内を借りて身を棲(す)まわすの窩(すあな)と作(な)せり。
6冷風寒く、真(まこと)に凄楚(せいそ)たり、
7幸いに轎(かご)の内に包裹(ふくろ)有り。
8你(あんた)の哥哥(にいさん)[イ巨](かれ)は人を搶(かどわ)かさんとして、我を搶わかし錯(あや)まつ、
9鬚眉(ひげおとこ)をば錯(あや)まちて女嬌娥(うつくしきおんな)と認めたり。
10本来、我の逃亡するは不可に非ざるも、
11人を救ひ義に仗(よ)らんがために綺羅(きら)を披(き)る。
12蘭閨(らんけい)に闖進(ちんしん)せるは我の過(とが)に非ず、
13懇(ねんご)ろに饒恕(ゆるし)を求む、我の枉(みだ)りに災磨(わざわい)を受くるを免(まぬ)かれしめよ。

[発音]
你  哥  哥  欺 凌     人       常   闖   禍、
1ねいーごー、ごー。へいれん、あー、やん、なー(間奏)せーん、つぉん、うぉー。

 中   途   相遇   起   風  波。 他  鞭   馬 来
2ぞんー、とうわ、せんゆー。へいー、ふぉんぼー。 3たー、びーん、まーろい。

撞    傷      我、 追  賠  湯  薬 我   奔波
ぢょーん、しぇーんえーうぉー。 4ぞいーぷい、とんがゆ。うぉー、ばんぼー。

到  黄   界  駅     中  無  宿  所。
どぅおうぉー、がーいえっく、がーぞん、もう、そっかぞー、おー。 (間奏)

借 街  頭  轎   内  作 棲   身  窩。 冷  風
5じぇがーいたう、きゅいうろい。ぢょちゃい、さん、うぉー。 6らーんふぉんが

寒、  更  凄      楚。 幸   轎   内 有  包   裹、
ほーん、がんつぁい、いー、ちょー。 7はんー、きぃゆいろい、やう、ばう、おうぉー。

你 哥  哥 [イ巨]  搶   人  搶  錯   我、 把 鬚 眉  錯
8ねいごーごー、こい、ちょん。やん。ちょんつお、うぉー。 9ばーぞうめい、ちょい

認   女 嬌   娥。   本  来 我  逃 亡  非  不 可、
いぇん、ろいきゅううぉー。10ぶーんろいうぉー、とうもん、ふぇいばっこー、

  為  救 人 仗  義  披 綺 羅。     闖  進   蘭   閨
11うぇぃがうやんじぉんいー、ぺいけいろー。12(減速)ちょんじょん、らーんぐわい、

非  我   之 過、 懇  求  饒 恕  免 我
あー(間奏)ふぇいうぉー、ぢーぐおーーー(間奏)13はんーかう、いーしゅ、みんうぉー、

枉   受  災 磨。
うぉーんさう、ぞいもー。


[京劇城]