Research

Chronomedicine TEAM

 私たちのチームでは、時間生物学と医療の関係性を明らかにするための基礎研究を多方面から行っています。現在、主に二つの研究テーマがあります。

光触媒の細胞毒性に関する研究
 

 光触媒は光照射に反応し酸化作用を示す性質があり、これまで医学を中心とする生命科学部分野での利用が検討されてきました。そして現在、新しい光触媒として注目されている窒化タンタルを用いて細胞毒性をはかる実験を行っています。窒化タンタルは、紫外線のみに反応していた従来の光触媒に対して、可視光領域波長である青から緑の光に反応するため、光の直接的な生体へのダメージを排除することが出来る次世代クリーンエネルギーとして注目されている物質です。

 将来的には、窒化タンタルがガン治療を含む生命科学分野に応用できる材料であるかを検討して、利用価値を見出すことで、「SCNだけを老化させた動物の概日リズムはどうなるであろうか?」という問いを解決することや生命科学研究や医療応用にこの材料が活用可能になることを目指して研究を行っていきます。
 


時計遺伝子の欠損が大腸癌の発生や進行に与える影響
 

 生涯でがんに罹患する確率は、2人に1人と言われています。そのうち部位別でみると、大腸癌は男女ともに上位を占めています。先行研究より、時計遺伝子が欠損等の理由によって機能しなくなると体内の生理機能のリズムが乱れ、癌をはじめ様々な疾患を引き起こす要因となることが示唆されています。しかし、代表的な時計遺伝子であるPer1の癌に対する直接的な影響に関する研究はあまり行われていません。また、大腸癌に焦点をあてた研究も未だ希少です。そこで本研究では、時計遺伝子Per1の欠損が大腸癌の発生や進行に与える影響について検討することを目的としています。大腸癌と時計遺伝子Per1との関係性を時計遺伝子の分子機構から解明することによって、大腸癌発症のメカニズム解明や治療法改善の一助となることを期待しています。


概日時計中枢 視交叉上核における細胞間同調メカニズムの解明
 

哺乳類の概日時計中枢は視交叉上核であり、視交叉上核が時刻情報を臓器や他の脳領域に存在する末梢時計に伝えることで、体内の生理機能に約24時間のリズムを持たせています。この視交叉上核は様々な神経細胞の集団から構成されており、それ自体でリズムを刻みます。そのために、細胞同士がコミュニケーションを取り合うことが重要になってきますが、その詳細なメカニズムはまだ解明されていません。私たちは、視交叉上核分散培養法によって各細胞間の細胞間相互作用について明らかにすることを目的としています。この同調機構の解明によって、24時間社会の弊害ともいえる「光害」や概日時計が関係する睡眠障害の対策を打ち出すことにつながると考えられます。


肝油に含まれる機能性物質が概日リズムに与える影響について
 

概日リズムの制御はうつ病や認知症などの疾患を予防することが知られており健康を維持する上で重要ですが、概日リズムを制御する食事内容や食事成分は多く知られていません。そこで健康食品に多く用いられている肝油を用い、肝油に含まれる機能性物質が概日リズムに与える影響について調べることにしました。現在までに肝油に含まれる機能性物質にはシワ形成防止、血液中の白血球数上昇による免疫機能向上などの機能は知られていますが、時間生物学的な効果は知られていません。そこで本研究では肝油に含まれる機能性物質が概日リズムに与える影響について時計遺伝子Per2の発現リズムを指標にし、細胞時計への影響を調べることを目的としています。この研究を機能性表示食品の開発や創薬に生かすことで、人々の健康維持・促進につなげたいと考えています。


抗てんかん薬バロプロ酸ナトリウムの最適投薬時間について
 

世界には転換を患っている方が多くおり、先進国では1000人に1人の割合でいるといわれています。バロプロ酸ナトリウムは脳内のGABA濃度を高め、神経の興奮を抑えるという効果があります。薬の効果の大きさは摂取、代謝中の体内の吸収部の血流速度、受容体の感度、薬物代謝酵素の活性、排尿などの概日リズムを持つ様々な要因によって変化します。そのため、バロプロ酸ナトリウムを投薬したマウスの脳内GABAの分泌濃度を調べることで一番効果の出る最適な投薬時間について分析しています。また、てんかん発作にはある決まった時間に発症するものが確認されています。そのため、最適投薬時間が分かることで、てんかん患者の投薬量をできるだけ少なくしつつ薬理作用を大きくすることや発作を未然に防ぐことができるのではないかと期待しています。


      
エルゴチオネインが体内時計に与える影響
 

人は老化によって体内リズムが乱れ体調を崩しやすくなってしまうことが分かっており、近年体内リズムを調節することにより老化の影響を軽減する研究が行われています。そこで本研究ではエルゴチオネインという物質が活性酸素を除去し老化を防止する効果を持つことに着目して、体内時計に影響を与えるか否かを調べています。具体的には被験物質を飲ませたマウスの行動を観察する実験と、マウス脳の切片を用いて時計遺伝子の発現を観察する2つの実験手法から検討しています。将来的にはエルゴチオネインの人の体内時計への効果も検証し、高齢者の体内リズムの改善に応用することを目指しています。


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