Chorono-medicine,nutrition,and agriculture
私たちのチームでは、時間生物学に関する医学、栄養学、農学の課題について研究を行っています。
エルゴチオネインが体内時計に与える影響
人は老化によって体内リズムが乱れ体調を崩しやすくなってしまうことが分かっており、近年体内リズムを調節することにより老化の影響を軽減する研究が行われています。そこで本研究ではエルゴチオネインという食品由来の物質が活性酸素を除去し老化を防止する効果を持つことに着目して、体内時計に影響を与えるか否かを調べています。具体的には被験物質を与えた時のマウスの行動、細胞の時計遺伝子の発現、マウスの視交叉上核の神経発火リズムの変化を観察しています。将来的にはエルゴチオネインの人の体内時計への効果も検証し、高齢者の体内リズムの改善に応用することを目指しています。

図1 老齢マウスにおけるLD(12:12)条件下での活動量
18カ月齢のマウスで輪回し活動測定を行った結果である。EGT(20mg/kg/day)投与群において、Control群、EGT(5mg/kg/day)と比べて有意に輪回し回転数が多かった。
時計遺伝子の欠損が大腸癌の発生や進行に与える影響
生涯でがんに罹患する確率は、2人に1人と言われています。そのうち部位別でみると、大腸癌は男女ともに上位を占めています。先行研究より、時計遺伝子が欠損等の理由によって機能しなくなると体内の生理機能のリズムが乱れ、癌をはじめ様々な疾患を引き起こす要因となることが示唆されています。しかし、代表的な時計遺伝子であるPer1の癌に対する直接的な影響に関する研究はあまり行われていません。また、大腸癌に焦点をあてた研究も未だ希少です。そこで本研究では、時計遺伝子Per1の欠損が大腸癌の発生や進行に与える影響について検討することを目的としています。大腸癌と時計遺伝子Per1との関係性を時計遺伝子の分子機構から解明することによって、大腸癌発症のメカニズム解明や治療法改善の一助となることを期待しています。
