2-2 単母音 解説ビデオ https://youtu.be/myt9tNQy0cM (YouTubeでのビデオリスト) |
声門閉鎖とは、こういうことです。 まず、日本語で「アッ」と発音してみてください。小さな「ッ」の部分は、ツと発音するわけではありません。アッ、の小さなツは、のどをキュッと閉めるという一種の符号なのです。 日本語のアッの、小さなツが示すところのものを「声門閉鎖」といいます。 中国語の母音を、前に子音をつけず、単独で発音する場合、必ずまず軽く声門閉鎖をしてから発音します。日本語では、母音のあとに声門閉鎖をすることはありますが、その逆はありません。中国語では、声門閉鎖をしてから母音を発音するのですが、日本語のように母音のあとに声門閉鎖することはありません。広東語(かんとんご)などの方言を除き、中国語に「つまる音」はないのです。 中国語の母音aは、便宜的にアルファベットのaと表記してありますが、英語のアとも日本語のアとも全然違います。中国語のaをしいて日本語のひらがなで表記すると、仮にもし「アッ」をひっくりかえして「ッアー」と表記したら、感じがでるでしょうか。 声門閉鎖をアポストロフィ( ' )で表し、中国語のaを「'a」と表記する方法も、昔は行われたことがありました。 ピンイン(中国語ローマ字)ではいちいち表記しませんが、aに限らず、中国語の母音を単独で発音する場合、すべて声門閉鎖ではじまります。この点を注意してください。 |
参考 「子音」「母音」と「声母」「韻母」 国語や英語、中国語の教科書では、それぞれ独特の用語を使います。 例えば、中国語の教科書では、音節の最初に来る子音を「声母」(せいぼ。“声母”shēngmŭ)、その後に続く母音を中心とした部分を「韻母」(いんぼ。“韵母”yùnmŭ)と言います。 中国語では、漢字1文字は原則として全て1音節です。 例えば“光”guāng グアンという発音は、
「グ・ア・ンなら3音節でしょう?」 というのは日本人の発想で、中国語では1音節にカウントします。 ちなみに、日本語の漢字「光」の音読み「コウ」は、昔の字音仮名遣(じおんかなづかい。昭和前期までの日本語の、旧仮名遣いによる音読みの表記)では「クワウ」と書きました。コウよりも、クワウのほうが中国語の発音 guāng に似ていますね。字音仮名遣いの起源は、千年以上前の日本人の先祖が、当時の中国語の発音を写したものだからです。 セイボやインボ、という言葉は、中国語の初心者には耳慣れない言葉ですので、このサイトでは、子音・母音という言葉を使います。 中国語初心者は、セイボやインボ、カイオンやシュボインやビオン、といった用語を暗記する必要はないので、ご安心ください。 |
[豆知識] 「 ü 」で、u の上の「 ¨ 」を「ウムラウト記号」と言う。ドイツ語等でよく使う。
中国語でウムラウト記号が出てくるのは、この ü だけ。
yi wu yu の順に、唇が横にすぼまる
yi、wu、yuと表記する理由 a o e は、単独で音節になる場合もそれぞれ a o e の表記のままです。 i u ü は、単独で音節になる場合はそれぞれ yi wu yu という表記に変えます。その理由は「見た目」です。 「差別だ! a o e は素顔のまま『外出』していいのに、なぜ、i u ü はひとりで『外出』するときにyとかwとかマスク着用を義務づけられるのか?」 はい、たしかに。i u üは、かわいそうですね。でも、しかたないんです。 i は、小柄で目立たない字です。声調記号をつけると、i の上の点を取られて、さらに小さく目立たなくなります。だから、単独で外出するときは、目立つように y というマスクをつけてあげるのです。 u も、どちらかというと小柄ですよね。視力検査のときの、小さな記号みたいです。だから、ひとりで外に出るときは、wをつけて wu としてあげます。 üを yu と書くのも同様の理由です。yü と書かない理由は、yをつけて yu と表記すれば、それだけで十分 u/wu と区別できるからです。 ちなみに、英語では R/r Y/R W/w の3つは、子音のなかでも母音に近い「半母音」として扱われます。英語でも w や y は wooman(女性) とか year(年) など、単語を目で見て容易に識別するために活躍しています。 中国語のピンイン表記は、欧文表記の工夫と知恵を参考にして、i u ü の3つについては、単独の音節となる場合は yi wu yu と書くようにしたのです。 i がきわだって小柄な文字であることは、ローマ字の本場である西洋でも、ずっと問題になってきました。 英語で一人称 I を大文字で書く理由は、小文字の i だとあまりにも目立たず、読みにくくなってしまうからです。一部の日本人が信じている 「英語の母語話者は自己主張が強いから大文字で“I”と書くのだ」 というのは根拠のない俗説で、それを英語母語話者に言うと、 「でたらめを言うな。まさか、一人称を小文字でjeと書くフランス人よりも、私たちのほうが自己主張が強い、とでも言うのか」 と反発を受けます(ロビン・ギル『英語はこんなにニッポン語』参照)。 |
【参考】どの中国語教科書でも、「e」の発音のしかたについての説明には苦労しています。背中をナイフで
刺された時の声、と説明する教科書もあります。
e oを発音する時と舌の位置は同じ。まずoを発音、口の中の舌の位置はそのままにして、 唇のまるめをとる。背中にブスリとナイフを突き立てられた時に、 のどの奥から出るような「ウ」。(相原茂『ひねくれ燕燕』朝日出版社2007年1月、p.32より引用) |
[豆知識] yu(=ü) を第二声で発音すると「魚」
[https://youtu.be/IK9W6t0bLkc] (YouTubeでのビデオリスト) |
ai | ei | ao | ou |
ya | ye | yao | you |
wa | wo | wai | wei |
yue |
āi | ēi | āo | ōu |
yā | yē | yāo | yōu |
wā | wō | wāi | wēi |
yuē |
[補足] en ei ye(=ie) yue(=üe) この4つの場合は日本語の「エ」に近い発音になります。日本語のエに近い変則的なeを、ピンインでは、eの上にサーカムフレックスをつけて ê と書く場合もあります。 ēn ēi iē(yē) üē(yuē) mp4 video ![]() −n(語尾にくるn) や i や ü は「唇をせばめて、口の前のほうから出す発音」です。 e は本来、唇をあけてのどの奥から出す発音です。が「唇をせばめて、口の前のほうから出す発音」と結びつくと、「どうせ口の前から発音するなら、eも手抜きをして楽に発音しよう」という無意識の心理が働いて、日本語の「エ」に近い脱力系の発音になるのです。 |
[https://youtu.be/2VQjmv5Vd-s] (YouTubeでのビデオリスト) |
an | en | ang | eng | -ong |
ān ēn āng ēng -ōng mp4 video |
yan | yin | yang | ying | yong |
yān yīn yāng yīng yōng mp4 video |
wan | wen | wang | weng |
wān wēn wāng wēng mp4 video | |
yuan | yun | yuān yūn mp4 video |
[豆知識] 中国人でも南方出身者には n と ng の区別ができぬ人がいる。方言の関係。
[豆知識] 日本の漢字音で「ン」で終わるものは、中国語でも「n」で終わる。
例「金」キン → jīn1
日本漢字音と中国語の関係については[こちらも参照]。
(YouTubeでのビデオリスト) |
舌の位置を動かすことで、結果的に、anとangのそれぞれの「ア」の微妙な発音の違いも無意識的に自然にできるようになります。 an の「ア」は、すぐ後に続けて n という「口を閉じる発音」がくるため、無意識のうちに「ア」も「つぶれて」口の前のほうから発音する「明るいア」になります。 ang の「ア」は、すぐ後に続けて ng という「口の奧からだす発音」がくるため、最初に「ア」と発音する段階で無意識のうちに口の中の空洞の形がちょっぴり洞窟のように奥深くなり、ごくわずかながら「暗めのア」になります。 anの「ア」とangの「ア」の微妙な「色あいの違い」は、カナやローマ字で書き分けることはできませんが、中国人の耳にはハッキリと分かります。中国人は最初の「ア」を聞いた段階で、すぐ後に続くのがnなのかngなのか予想できるのです)。 鼻母音で注意すべきは(複合母音も同じですが)、ある母音の前後にどんな発音がくるかによって、単母音のときと発音の「色あい」がガラリと変わってしまうことです。くどいようですが「日本語の母音はかたいが、中国語の母音はやわらかい」ということを、常に忘れないでください。 日本人の中国語学習者にとって、このような母音の微妙な色あいの変化は、初めのうちはめんどくさく思われます。しかし慣れてくると、このように微妙に変化させたほうがかえって自然で楽に発音できることがわかります。 中国人にとって自然で楽な発音をマスターできれば、中国人と百パーセント同じの、完璧に訛りのない中国語を発音することができるのです。 |
[豆知識] yun を第二声で発音すると「云(雲)」
《标调歌》有 a 不放过,没 a 找 o、e 。i、u 相连标在后, 单个韵母不必说。 |