ライフスタイル・マネジメント研究室

明治大学 経営学部 鈴井正敏 

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3. 慢性運動の影響 

(1)体力レベル・運動習慣と上気道感染罹患期間

(2)強度の高いトレーニングがNK細胞におよぼす影響

(3)運動と免疫の関係

fitness and uri

 運動が免疫機能に及ぼす影響についてすべてが解明はされているわけではないが、エビデンスは蓄積されてきている。運動は免疫に対してすべて良い刺激になるわけではない。適度な運動は免疫を強くするように働くが、オーバートレーニングなどでは逆に悪い刺激となってしまうことがある。このため、運動と免疫の関係については逆 J カーブ、易感染性との関係では J カーブで示されている。

  運動が免疫機能に良い効果があるのは白血球のターンオーバーを刺激している可能性がある。これがオーバートレーニングのような過度な状況になると未成熟の細胞が多くなり、逆に機能が低下してしまう。また、運動は筋肉や骨を鍛えることになる。筋肉は肝臓とともに白血球の重要なエネルギー源となるグルタミンの合成を行う場所であり、筋の維持は免疫にとって大きな意味を持つ。骨髄は白血球を含むすべての血液細胞が生まれる場所であり、骨の健全性が免疫を支えている。

 ただし、ある運動をすることによりCOVID-19 のような特定の感染症に対して効果的であるというわけではない。運動は免疫システムに対して全体的に効果があることになる。さらに、重要なポイントとして、免疫は強くすればするほど良いというものではないということである。強く働きすぎる場合には免疫は暴走することがある。COVID-19 でも話題になったサイトカインストームが起こり、攻撃された臓器で炎症がおこる。免疫が適切に機能するために、刺激となる運動も適切な強度、時間、頻度、そして楽しさが必要である。

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