春夜偶成 并序 しゅんやぐうせい ならびにじょ |
![]() |
夏暦戊辰孟春朔昏(1988年2月18日下午6点)01、徹出郊、望星辰于四表。維執徐之年、而歳星
徘徊於奎・昴之間02。建寅之月、而斗杓墜落於子丑之間03。天狼皎潔、誰詠「夜流血」? 参宿
可掬、其距入觜之西04。日不在營室、而將出虚。昏参未中、而昴中。旦無尾中、而房中05。 嗚呼! 「天地曾不能以一瞬」06、豈空言哉! 維斗得道、終古自忒;禺強立極、終古自乖07。物換星移、今人不見古人天。 而人智若水、不舎昼夜。「天之高也、星辰之遠也」、既「求其故」、至於「千歳之日至可坐而 致也」08。吾驚天地之須臾、嘆人文之無窮。乃賦小詩曰、 燦々天狼皎不紅 選自「戊辰集」稿 |
夏暦(かれき)戊辰(ぼしん)孟春(もうしゅん)朔(さく)の昏(こん)、徹 郊(こう)に出でて、星辰(せいしん)を四表に望む。 維(こ)れ執徐(しゅうじょ)の年なるに、而(しか)も歳星 奎(けい)・昴(ぼう)の間に徘徊(はいかい)し、建寅(けんいん)の月なるに、而も斗杓(とひょう) 子丑(しちゅう)の間に墜落す。天狼(てんろう)皎潔(こうけつ)たり、誰か「夜 血を流す」と詠(えい)ぜん。参宿(しんしゅく) 掬(すく)ふべきも、其の距(きょ)觜(し)の西に入る。日 營室(えいしつ)に在らず、而も將(まさ)に虚を出でなんとし、昏(こん)に参(しん) 未(いま)だ中せず、而して昴 中す。旦(たん)に尾(び)の中する無く、而して房(ぽう) 中す。 嗚呼(ああ)! 「天地も曾(かつ)て以て一瞬たること能(あた)はず」とは、豈(あ)に空言ならん や。維斗(いと) 道を得るも、終古(しゅうこ)自(おのずか)ら忒(たが)ふ、禺強(ぐう きょう) 極に立つも、終古自ら乖(はな)る。物換(かわ)り星移りて、今人は古人の天を見ず。 而も人智は水の若(ごと)く、昼夜(ちゅうや)を舎(お)かず。「天の高き、星辰の遠き」、既( すで)にして「其の故(こ)を求」むれば、「千歳(せんざい)の日至(にっし)も坐して致(いた)す べ」きに至る。吾(わ)れ天地の須臾(しゅゆ)なるを驚き、人文の無窮(むきゅう)を嘆ず。乃(す なわ)ち小詩を賦して曰く、 燦々(さんさん)たる天狼(てんろう) 皎(きょう)として紅ならず 觜参(ししん) 相(あ)ひ転じて昏(こん)に中する莫(な)し 無常は最も是れ斗杓(とひょう)の建(けん) 地に隠(かく)るる揺光(ようこう)は東を指(さ)すを失ふ |