粤強圉單閼、
孟春幾望、 |
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粤(こ)れ強圉(きょうぎょ)の單閼(ぜんえん)、
孟春(もうしゅん)の幾望(きぼう)、
1987年2月 |
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徹之于東京四谷。 | |
徹 東京 四谷(よつや)に之(ゆ)く。 |
驛控赤坂、
路連新宿。 |
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驛(えき)は赤坂(あかさか)を控へ、
路(みち)は新宿(しんじゅく)に連なる。 |
人車轣轆、
楼閣参差。 |
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人車(じんしゃ)轣轆(れきろく)として、
楼閣(ろうかく)参差(しんし)たり。 |
入其小巷、
有古寺焉。 |
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其(そ)の小巷(しょうこう)に入るに、
古寺 焉(ここ)に有り。 |
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名曰笹寺。
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名を笹寺(ささでら)と曰ふ。 東京都新宿区四谷四丁目四の三十三 長善寺 |
紅塵不及、
跫韻自[貝余]。 |
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紅塵(こうじん)及ばず、
跫韻(きょういん) 自(おのずか)ら[貝余](はるか)なり。
表通りの雑踏とうってかわって静かである |
| 入園内、 | |
園内に入るに、 |
向晩無人、
[丹彡]雲有耀。 |
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晩に向かひて人無く、
[丹彡]雲(とううん) 耀(も)ゆる有り。
境内にひとけは無く、夕焼けに雲が茜(あかね)色に染まっている。 |
惟
墓標林立、
蒼翠支離。 |
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惟だ墓標林立し、
蒼翠(そうすい)支離たり。
黒い墓石が林立し、植木の緑はまばらである。 |
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學法逹明居士之墓也。 | |
學法逹明居士の墓なり。 |
嗚呼。
紫煙迤湧、
掩[手+(艸/冉)]残黄。 |
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ああ、
紫煙 迤(なな)めに湧き、
残黄を掩[手+(艸/冉)](えんぜん)す。
線香のけむりが斜めにたちのぼり、墓前のしおれかけた菊の花をくゆらせる。 |
昔隔賢愚、
今分幽顕。 |
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昔 賢愚を隔て、
今や幽顕(ゆうけん)を分かつ。
幽冥、境を異にする。 |
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竟何為哉。 | |
竟(つい)に何爲(いかん)ぞや。 |
後令尊、
編弔文、
輯遺稿。 |
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後、令尊、
弔文を編み、
遺稿を輯(あつ)む。
のち、父君は、君の追悼遺稿集を出版した。 |
維丙寅之季春上梓、
以生前之木刻為題； |
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維(こ)れ丙寅の季春に上梓(じょうし)し、生前の木刻を以て題と為す。
1986年4月20日 |
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曰『泰然自若』。 | |
曰く『泰然自若』(たいぜんじじゃく)と。
『泰然自若 －鈴木達朗追悼・遺稿集』(竹頭社、1986) |
遍頒故舊。
僕讀斯書、 |
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遍(あまね)く故舊(こきゅう)に頒(わか)つ。
僕 斯の書を讀(よ)むに、 |
無一葉不有思子之情、
無一句非是化鵬之兆。 |
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一葉として思子の情 有らざるは無く、
一句として是れ化鵬(かほう)の兆(きざし)に非るは無し。 |
| 私忖其心、 | |
私(ひそ)かに其の心を忖(はか)るに、 |
念悠悠之廿稔、
思翕翕於一時、 |
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悠悠の廿稔(にじゅうねん)を念ずれば、
思ひ一時に翕翕(きゅうきゅう)たらん。 |
猶恐
半夜燈前、
幾行泣下乎！ |
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猶ほ恐る
半夜の燈前に、
幾行か泣(なんだ)下るならんと。 |
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又檢所載之遺刻、 | |
又た所載の遺刻を檢(けみ)するに、
遺稿集に掲載された君の篆刻作品の写真を見ると |
或若畫龍於毫末、
或若揮削于棘端。 |
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或は龍を毫末(ごうまつ)に畫(えが)くが若く、
或は削(のみ)を棘端(きょくたん)に揮ふが若し。 |
而
能存敦厚之風、
可謂丈夫之業也。 |
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而も
能く敦厚(とんこう)の風を存す、
丈夫の業と謂(い)ふべきなり。 |
| 厥「十萬億土幾人行」白文印、 | |
厥(そ)れ「十萬億土幾人行」の白文印は、
君が彫った「十萬億土幾人行」という印は、 |
印中刻印、
文裡復文。 |
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印中 印を刻し、
文裡 文を復す。 |
如
箱裏含箱、
鏡中映鏡。 |
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箱裏に箱を含むが如く、
鏡中に鏡を映ずるが如し。 |
葛洪明鏡、自照未来；
陽羨書生、能呑永遠。 |
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葛洪の明鏡、未来を自照し、
陽羨(ようえん)の書生、能く永遠を呑む。 |
其眞
掌中天地、
方寸靈臺矣！ |
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其れ眞(まこと)に掌中(しょうちゅう)の天地、
方寸の靈臺(れいだい)なり。 |
嗚呼！
天送此才、
又歸烏有。 |
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嗚呼(ああ)。
天 此の才を送り、
又た烏有(うゆう)に歸(き)せしむ。 |
百年寂寞、
千里曠茫。 |
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百年 寂寞(せきばく)として、
千里 曠茫(こうぼう)たり。 |
宜矣九歌、「孰離合」者？；
已虖「六極」、胡首言之！ |
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宜(むべ)なるかな九歌、「孰(たれ)か離合する」者ぞ。
已(や)んぬるかな「六極」、胡(なん)ぞ首(はじ)めに之を言ふ。
死は人の宿命かもしれないが、若死には不条理の極みだ。 |
一片冰心、玉壺倶葬；
廿年哀樂、方寸所留。 |
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一片の冰心(ひょうしん)、玉壺と倶(とも)に葬られ、
廿年(にじゅうねん)の哀樂(あいらく)、方寸の留むる所。 |
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命也耶？ | |
命なるか。 |
龐統哭孔明、
李觀悼韓愈！ |
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龐統(ほうとう) 孔明(こうめい)を哭(こく)し、
李觀(りかん) 韓愈(かんゆ)を悼(いた)まむとは。 |
蘭摧玉折、使此輩存；
蕭敷艾榮、令斯人死！ |
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蘭摧玉折(らんさいぎょくせつ)、此の輩をして存せしめ、
蕭敷艾榮(しょうふがいえい)、斯の人をして死せしむ。 |
夫
徳音未遠、
宿草已生矣。 |
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夫(そ)れ
徳音 未だ遠からざるも、
宿草 已に生じたり。
君の声は心に残っているが、喪の月日は終わってしまった。 |
交友六年、淡如清泚；
別離三歳、邈若山河。 |
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交友六年、淡きこと清泚(せいし)の如く、
別離三歳、邈(ばく)として山河の若し。 |
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而我悲哀者何哉？ | |
而して我の悲哀するは何ぞや。 |
夷吾痛哭耶、
薪者自傷耶？ |
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夷吾の痛哭か、
薪者(しんじゃ)の自傷か。 |
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恐両否也。 | |
恐らくは両(ふたつ)ながら否なり。 |
惟
劉惔清蔚、不至周旋；
孫綽性卑、悵為諷詠耳。 |
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惟れ劉惔 清蔚(せいうつ)にして、周旋に至らず、
孫綽(そんしゃく) 性 卑しくして、悵(かな)しびて諷詠を為すのみ。 |
| 迺致詞曰； | |
迺(すなわ)ち詞を致して曰く、 |
