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第5回「福井県白川文字学ゼミ」公開講座
漢詩のさまざまな音読法
〜生徒の 興味をかきたてる声の出し方〜

これは上記の講座の教材/資料用のページです。
最初の公開2017/6/7 最新の更新2019/1/15
チラシの写真等は[こちらのブログの記事を御覧ください]。
[][教材ビデオ][福井県との関連][漢詩鑑賞の四つの位相][日本で有名な漢詩「楓橋夜泊」][黙読による鑑賞][音読による鑑賞][字音直読][李白や楊貴妃は漢詩をどう発音したか][詩吟で歌う][字音直読で歌う][『月琴楽譜』1877の工尺譜][「露月」の楽譜][漢詩を歌うためのYouTubeカラオケビデオ][李白「春夜洛城聞笛」字音直読][王維「元二の安西に使するを送る」][ミニリンク]
月琴,長原梅園,『月琴俗曲今様手引草』,明治22年,1889,明清楽,清楽
内容  日本でもよく知られている有名な漢詩を取り上げ、漢文訓読による朗読、詩吟、字音直読、唐音音読、中国語音読、明清楽(みんしんがく)による歌、の6つの読み方を解説します。楽器も使いながら、実際に声に出して音読します。
 予備知識のない方にも、わかりやすく解説します。
 お気軽にご参加ください。
講師 加藤 徹 (かとう とおる) 明治大学法学部教授
 専門は中国伝統文化。主な著書に『京劇』、『漢文力』、『漢文の素養』、『西太后』、『貝と羊の中国人』、『本当は危ない『論語』』など。ホームページは「加藤徹」で検索してください。
日時平成30年(2018)1月18日(木)14:30〜16:00 受付14:00〜
場所福井県立図書館 多目的ホール
 福井県福井市下馬町51−11 電話 0776-33-8860
 ※福井駅東口バス乗り場から無料のフレンドリーバス(バスの説明)が出ています。
持ち物特にありません
※漢詩の歌に合わせて楽器を使ってみたい方は、ご自分の楽器をお持ちください。(鍵盤ハーモニカ、リコーダー、ウクレレ、カスタネット、ギターなど、種類は問いません)
定員60名
参加費無料(要申込み)
対象どなたさまでも
お問合せ・
お申込み
福井県教育庁生涯学習・文化財課 白川文字学グル―プ
 http://www.pref.fukui.jp/doc/syoubun/shirakawa/taitoru.html
  電話 0776-20-0559 FAX 0776-20-0672  電子メール syoubunpref.fukui.lg.jp
 ※を半角の「@」(アットマーク)に直してくださいますよう。
教材ネットにもアップしています(この頁です)
http://www.geocities.jp/cato1963/20180118.html

↓漢詩を歌うためのビデオです(YouTube)。1/18の講座では、このうちの何曲かを紹介します。

https://www.youtube.com/playlist?list=PL6QLFvIY3e-l00dKjbGYFoHp-2zVAMSp6
聴講するだけでも大歓迎ですが、もし歌える人は、いっしょに歌いましょう。
楽器を弾けるかたは、いっしょに楽器を鳴らしてみましょう。
それぞれの曲の楽譜(五線譜)は、この頁のほか、私のサイト内にアップしてあります。

福井県と漢詩の音楽 参考[
『福井県史』通史編全6巻]
 白川静先生が生まれた福井県は、平安時代の昔から、漢詩や音楽と縁が深い土地でした。明治20年ごろには、福井市内の書店で「明清楽」の楽譜が刊行されていました。今も福井県には、青山ハープやこおろぎ社など、世界的な楽器メーカーもあります。
 今回は、19世紀の福井で演奏されていたと思われる幻のメロディーもいくつかご紹介します。  

漢詩を歌う、漢詩を吟じる
漢詩鑑賞の四つの位相
黙読…書写作品、刊本、その他の賞玩
音読…漢文訓読、字音直読、漢文訓読、その他の賞玩
詠唱…雅楽の朗詠、近現代の詩吟、その他の賞玩
歌唱…中国伝来楽曲、その他の賞玩

参考 拙論[
「漢詩賞玩と中国伝来音楽 日本人は漢詩をどう歌ってきたか」 ](PDFファイル)『明治大学教養論集 山口政信名誉教授退職記念号』2017・9(通巻525号、2017年9月30日発行)pp.81-101


日本で有名な漢詩の一例
 唐・張継の七言絶句「楓橋夜泊」(ふうきょうやはく)

張継「楓橋夜泊」
月落烏啼霜満天  月落ち 烏啼きて 霜 天に満つ
江楓漁火対愁眠  江楓の漁火  愁眠に対す
姑蘇城外寒山寺  姑蘇城外 寒山寺
夜半鐘声到客船  夜半の鐘声 客船に到る


楓橋夜泊,漢詩,楷書,行書,張継,月落烏啼霜満天,教科書体,AR祥南真筆行書体M,衡山毛筆フォント草書,麗流隷書
楷書的に音読する
行書的に音読する
草書的に音読する
隷書的に音読する
篆書的に音読する

 上記は、教科書体(楷書)とAR祥南真筆行書体M(行書)、衡山毛筆フォント草書(草書)、麗流隷書(隷書)を並べたもの。
【練習問題】それぞれの書体の風格の違いを、音読の風格の違いで再現してみましょう。
cf.「手書き書体」と「印刷書体」のコンセプトの違い。篆書・隷書・楷書・行書・草書の「五体」、楷書・行書・草書の「三体」などの使い分けが21世紀の今も残っている理由。


黙読による鑑賞
→[
google画像検索「月落烏啼」検索結果]

音読による鑑賞
漢文訓読で「ひっくり返って読む」か、字音直読で「原文どおり読む」か。
それぞれのメリットとデメリット。
★訓読のメリット(^∀^)・・・古典の格調がある。「国語」の範囲内。定型的訳読法なので意味の解釈にも確実性がある。古典語だが日本語なので日本人の心に響きやすい。
★訓読のデメリット(×ω×)・・・原漢文の数倍の長さになる。漢詩の場合、リズムが崩れる。脚韻を含む音声的な技巧も感得しにくい。
●直読のメリット(^∀^)・・・原漢文のリズムにあるていど忠実。脚韻など音声的な技巧も、あるていど感得することができる。
●直読のデメリット(×ω×)・・・日本人には難しい。耳で聞いても意味がわからない。日本漢字音で漢文を直読すると「お経」のように平板な感じになる。中国語の発音で漢文を読むためには、中国語を習得する必要があり、「国語」の範囲を超える。

結論:日本人は、漢文や漢詩を訓読するだけでなく、字音直読も適宜、併用するとよい。

●狭義の字音直読・・・日本漢字音で読む。呉音・漢音・慣用音・唐音など「アイウエオ」の発音による漢字音で読む。
●広義の字音直読・・・日本漢字音だけでなく、中国語や朝鮮語(韓国語)、ベトナム語など各国語の漢字音による直読も含む。またそれぞれの国の共通語だけでなく、方言や古典語、学者による推定復元音などによる字音も含む。

日本と韓国の「漢文訓読」の比較。例文は、唐の張継の漢詩「楓橋夜泊」(七言絶句)。日本では、返り点と送りガナなどの「訓点」を使いますが、韓国は「口訣」(こうけつ、??、クギョル)です。 pic.twitter.com/V6FtbcWRf9

— 加藤徹(KATO Toru) (@katotoru1963) May 6, 2022
漢文訓読で音読する
現代日本語の共通語で朗読する。
(1)漢文訓読
つきおち からすなきて しも テンにみつ
コウフウのギョカ シュウミンにタイす
コソ ジョウガイ カンザンジ
ヤハンのショウセイ カクセンにイタる
(2)字音直読で読む。
a.(狭義の)字音直読・・・呉音・漢音・慣用音など日本漢字音で音読する。
b.華音直読・・・中国語の発音で音読する。中国語はいわゆる北京語や現代中国語に限らない。
c.唐音直読・・・日本語化した中国語の発音で読む。長崎唐人系の近世唐音で読む。

 以下の呉音・漢音・慣用音は、学研の漢和辞典『漢字源』改訂第五版(学研教育出版、2011)に拠り、旧仮名遣いで示す(拗音の大文字・小文字表記のゆれは同辞典の表記のまま)。
 唐音(選)と唐音(月)は、それぞれ、小林新兵衛版『
唐詩選唐音』(安永6年=1777年刊)と中井新六『月琴楽譜』(明治10年=1877年刊)に載せる長崎唐通事系の近世唐音に拠る。一般の漢和辞典に載せる中世唐音とは系統が違うことに注意されたい。

字音直読
 呉音・漢音・唐音・華音(現代の中国語)による読み方を以下に示す。
原文
呉音ごちらくだいしやう
(しょう)
まんてん
漢音ぐゑつ
(げつ)
らく
(お)
ていさう
(そう)
ばんてん
唐音(選)う〱て゜いすやんまんてん
唐音(月)うヽていすやんまんてん
華音yue4luo4wu1ti2shuang1man3tian1

原文
呉音こうふうくわ
(か)
たいじゅめん
漢音かう
(こう)
ほうぎょくわ
(か)
たいすうべん
唐音(選)きやんほんいヽほうといちうみん
唐音(月)きやんふをんいヽほうといすゑうみん
華音jiang1feng1yu2huo3dui4chou2mian2

原文
呉音じゃう
(じょう)
ぐゑ
(げ)
がんせん
漢音せいぐわい
(がい)
かんさん
唐音(選)くうすうぢんわいはんさんずう
唐音(月)くうすうじんわいはんさんずう
華音gu1su1cheng2wai4han2shan1si4

原文
呉音はんしゅしやう
(しょう)
たう
(とう)
きゃくぜん
漢音はんしょうせいたう
(とう)
かくせん
唐音(選)ゑヽぱんちよんしんたうちゑん
唐音(月)えヽぱんちよんしんたうちゑん
華音ye4ban4zhong1sheng1dao4ke4chuan2
付・慣用音 月=ぐわつ(がつ) 漁=れふ(りょう) 愁=しう(しゅう) 眠=みん
備考 対を「つい」と読むのは唐音
 現代日本人にとって自然に感じられる字音直読の例。呉音・漢音・慣用音がごちゃ混ぜになっている点に注意。
月落烏啼霜満天 げつ らく う てい そう まん てん
江楓漁火対愁眠 こう ふう ぎょ か たい しゅう みん
姑蘇城外寒山寺 こ そ じょう がい かん ざん じ
夜半鐘声到客船 や はん しょう せい とう きゃく せん

参考 韓国語による字音直読
「풍교야박」장계 「楓橋夜泊」 張繼
월락오제상만천 月落烏啼霜滿天
강풍어화대수면 江楓漁火對愁眠
고소성외한산사 姑蘇城外寒山寺
야반종성도객선 夜半鐘聲到客船


唐の時代の中国語と日本漢字音の関係について
 李白や楊貴妃は漢詩をどう発音したか?
 学者が推定復元した「唐代長安音」は、学校の生徒には難解である。

参考 YouTubeビデオ「張継「楓橋夜泊」 唐代長安音(推定)」
https://youtu.be/RmMu2SZ-L-A

便宜的な方法として、日本の漢和辞典を使って、
・漢字の「漢音」の旧仮名遣いによる表記を調べる。
・漢字の「平上去入」を調べる。
という作業をすると、阿倍仲麻呂など遣唐使が聞いた唐の時代の中国語の発音を、あるていど(あくまでも、あるていど)しのぶことができる。

 以下『大辞林』第三版より引用。引用開始。
かんおん【漢音】 日本漢字音の一。奈良時代から平安初期にかけて、遣唐使・音博士や日本に渡来した中国人などによって伝えられた、隋・唐代の洛陽(今の河南)や長安(今の西安)など中国の黄河中流地方の発音に基づく音。「経」「京」を「ケイ」と読む類。平安時代には、それ以前に伝えられていた漢字音に対して、正式な漢字音の意味で正音とも呼ばれ、多く官府や学者に用いられた。 → 呉音 ・唐音 ・宋音

ひょうそく【平仄】 @ 平声(ひょうしょう)と仄声(そくせい)。また、平字と仄字。 A 漢詩や駢文(べんぶん)で、声調の調和のために規定される平字と仄字の配列法。 B つじつま。順序。 [句項目] 平仄が合わない
(引用終了)
 漢詩で重要な「古典中国語」による漢字音の四つのアクセント「平上去入」。現代中国の共通語(いわゆる北京語)のアクセント「四声」と全く違うことに注意。
 平上去入のうち、平を「平」、上去入を「仄」(かたむく、の意)にまとめる。絶句や律詩を作るときは、漢字の平仄の並べ方に守らねばならぬ規則がある。平仄を示すと、
  月落烏啼霜満天 仄仄平平平仄平
  江楓漁火対愁眠 平平平仄仄平平
  姑蘇城外寒山寺 平平平仄平平仄
  夜半鐘声到客船 仄仄平平仄仄平
「霜満天」は「平仄平」で「孤仄」の禁を破っているが、このていどは許容範囲である。平上去入の四声を示すと、
  月落烏啼霜満天 入入平平平上平
  江楓漁火対愁眠 平平平上去平平
  姑蘇城外寒山寺 平平平去平平去
  夜半鐘声到客船 去去平平去上平

 漢文訓読では平仄の妙味は味わえない。現代中国の共通語(いわゆる北京語)で音読しても、唐の時代の長安の発音とは大きく違っているため、平仄の妙味は味わえない。漢詩の平仄の音韻美を賞玩するためには、音読の方法を工夫する必要がある。

平声唐代は、低めで平らなアクセントだったと推定される。最初の子音が濁音だと、さらに低めになった。
上声唐代は、高くて短いアクセントだったと推定される。
去声唐代は、低いところから上にあがるアクセントだったと推定される。
入声日本語の「促音」「つまる音」にあたる短い音だったと推定される。当時の中国語でpやtやk、日本漢字音(旧仮名遣い)で「ふ」「つ」「く」「ち」「き」で終わる漢字。

※現代中国のいわゆる「北京語」の四声の調値と全く違うことに注意。より詳しくは[(PDF)「唐詩の韻律 ――漢文訓読の彼方」平山久雄](『東京大学中国語中国文学研究室紀要』第19号)を参照。平山説によれば、六朝から唐代中頃までの四声の調値を「平声:クセ無し。緩降調:*31(声母清音);低平調:*11(声母濁音)」「仄声:クセ有り」「上声:高昇調、緊喉、短め:*’35」「去声:低昇調、やや長い:*24」「入声:短促調:*4(声母清音):*2(声母濁音)」と推定する。同じ唐代でも、唐末の四声の調値は初唐や盛唐と変わるなど、変化があったようである。なお一般向けの本の中には、唐代の去声を現代中国語の第4声と同様「上から下にさがる」と推定するものもあるが、これは学界の主流の説ではない。

 専門の学者が「唐代長安音」の推定復元は、一般の生徒には難しいので、ここでは日本漢字音の中の「漢音」(旧仮名遣い)と、日本の漢和辞典でも調べることができる「平仄」をもとに、簡易的に、唐の時代の中国語っぽい字音直読を試みてみましょう。
張継「楓橋夜泊」漢音直読
ぐゑつ入 らく入 を平 てい平 さう平 ばん上 てん平
かう平 ほう平 ぎょ平 くわ上 たい去 すう平 べん平
こ平 そ平 せい平 ぐわい去 かん平 さん平 し去
や去 はん去 しょう平 せい平 たう去 かく入 せん平

 上記の「旧仮名遣いによる日本漢字音+平仄」を、ローマ字と記号で書くと、外国語っぽく見えます。(^^;; 「平声」は記号無し、「上声」はサーカムフレックス「^」、「去声」は下から上にあがる矢印「↗」(「文字参照」の10進法表記は「↗」)、「入声」は-p/-t/-k、で表示します。
日本語の「漢音」による唐代風の字音直読
月落烏啼霜満天 gwet rak wo tei sau ban^ ten
江楓漁火対愁眠 kau hou gyo kwa^ tai↗ suu ben
姑蘇城外寒山寺 ko so sei gwai↗ kan san shi↗
夜半鐘声到客船 ya↗ han↗ shou sei tau↗ kak sen
 「ぐゑつ(月)」はguwetuではなくgwet、「ぐわい(外)」はguwaiではなくgwai、等々、それぞれの漢字音を一音節のローマ字表記にすると、より中国語っぽくなります。
 日本語の漢音は、遣唐使が中国で学んだ当時の中国語の発音がベースですが、英語の発音をカタカナで表記するのと同様、平安時代の時点ですでにかなり発音が日本化しています。上記の「簡易的な推定復元」は、あくまで一種の遊びだと思ってくださいますよう。(^^;;

明治10年刊(1877)『月琴楽譜』より。[こちらも参照]

詩吟してみる
 朗詠・・・「雅楽」と結びつく。
 詩吟・・・近世の詩吟は、江戸時代の藩校などがルーツ。明るい「陽旋法的な詩吟」と暗い「陰旋法的な詩吟」があったが、大正・昭和期から後者のみが流行するようになり、今日に至る。

「陽旋法的な詩吟」の例。明治中期の「手風琴(てふうきん)」(アコーディオン)の楽譜。
参考 YouTubeビデオ「漢詩「楓橋夜泊」月落ち烏啼きて霜天に満つ 明治の手風琴(アコーディオン)譜」
https://youtu.be/m4OSwHb09-Y
[こちらも参照]




 上の楽譜の「陽旋法的な詩吟」の、ミとラ(とシ)の音を半音さげたうえ、リズムを適宜くずして装飾音を加えると、昭和・平成の日本で流行している「陰旋法的な詩吟」の節回しになる。[こちらも参照]

字音直読で漢詩を歌う
 「吟詠」と「歌唱」の風格の違いに留意しつつ、漢詩を歌ってみよう。
 中国では、漢詩は「朗読>歌>詩吟」の順番。中国の学童は「歌詞は漢詩、曲は現代の作曲」という歌で、時には「踊り」つきで漢詩を歌う。
例 YouTube 「巧虎2015年7月 学唱古诗词:枫 桥 夜 泊 幼幼版」
https://youtu.be/dtyY8YllwYE 日本の「しまじろう」と似た着ぐるみのトラが、子供たちや「おにいさん」「おねえさん」と一緒に、漢詩「楓橋夜泊」を歌いながら踊る。

 歌詞である漢詩は、中国語で音読してもよいし、日本漢字音(唐音や漢音など)で直読してもよい。
 メロディーは、既存の楽曲を使ってもよいし、自作してもよい。
 ここでは、漢詩を歌うための既存の楽曲の一例として、明清楽(みんしんがく)の楽曲「紗窓」(さそう/しゃそう/シャアチャン)で「楓橋夜泊」を歌うことにする。「紗窓」という曲についての説明は[こちらの頁も参照]。
「紗窓」による「楓橋夜泊」の歌いかたの例。楽譜はクリックすると拡大。
紗窓,明清楽,月琴,清楽,加藤徹,漢詩,楓橋夜泊,月落烏啼,月落ち烏啼いて,楽譜,五線譜
参考伴奏動画 YouTube「明清楽「露月」「紗窓」C調 KARAOKE」https://youtu.be/KOY1Eh6TikA

明治10年刊(1877)『月琴楽譜』より。この本の説明については[
こちらも参照]

[工尺譜の読みかた]
読み方
ホースイイージヤンチヱコンハンリウウーイー
工尺
西洋音階
ファ
【参考】一オクターブ高い漢字の「(10進文字)HTMLユニコード」
[イ凡][イ六]亿
仩伬仜無し無し伍亿
ふぁ
※「凡」と「六」の右横にニンベン「イ」を付けた漢字はHTMLユニコードに無いので、合成文字で表す。
清楽「紗窓」を例に、工尺譜と五線譜を示す。
紗窓,五線譜,工尺譜,楽譜,明清楽,加藤徹,月琴
清楽曲「露月」について
 清楽(しんがく)曲の「紗窓」は、「露月」と重ねて演奏されることもあった。
『清楽曲譜』1893より
同書・十一頁に「露月紗窓ノ曲ヨリ考案シタル者ニテ紗窓ト伴奏スル時ハ大ニ快味ヲ覚ユ。」とある。
露月,明清楽,工尺譜
明清楽,五線譜,紗窓,露月,楽譜,清楽,月琴
ハ長調(C major,1=C)


漢詩を歌うためのYouTubeカラオケビデオ


【参考】李白の七言絶句「春夜洛城聞笛」の字音直読

「誰家玉笛暗飛声」誰が家の玉笛か暗に声を飛ばす
呉音 ずい け ごく じゃく(ぢやく) おん(おむ) ひ しょう(しやう)
漢音 すい か ぎょく てき あん(あむ) ひ せい
唐音 ジュイ キャア ヨ テ アン フイ シン
華音 shui2 jia1 yu4 di2 an4 fei1 sheng1

「散入春風満洛城」散じて春風に入り洛城に満つ
呉音 さん にゅう(にふ) しゅん ふう/ふ まん らく じょう(じやう)
漢音 さん じゅう(じふ) しゅん ほう ばん らく せい
唐音 サン ジ チュン フヲン マン ロ ジン
華音 san4 ru4 chun1 feng1 man3 luo4 cheng2

「此夜曲中聞折柳」此の夜 曲中 折柳を聞く
呉音 し や こく ちゅう(ちう) もん せち る
漢音 し や きょく ちゅう(ちう) ぶん せつ りゅう(りう)
唐音 ツウ エエ キョ チョン ウヱン ツイ リウ
華音 ci3 ye4 qu3 zhong1 wen2 zhe2 liu3

「何人不起故園情」何人か故園の情を起こさざらん
呉音 が にん ほち こ く おん(をん) じょう(じやう)
漢音 か じん ふつ き こ  えん(ゑん) せい
唐音 ホウ ジン ポ キイ クウ ヱン ジン
華音 he2 ren2 bu4 qi3 gu4 yuan2 qing2

※漢字「不」の「慣用音」は「ふ/ぶ」である。
※呉音と漢音は、学研『漢字源』改訂第五版(2011) ISBN-13: 978-4053031013 による。( )内は歴史的かなづかいである。
※唐音は、中村新六『
月琴楽譜』(1877)による長崎唐人系の唐音である。唐音の発音表記は本によって違いが大きい。
※華音は、現代中国の共通語「普通話」の発音である。中国の学校の「語文」(日本の学校の「国語」に相当)では漢詩や漢文を現代中国語で音読する。これは、日本人が古文を現代日本語で音読するのと同様である。


「元二の安西に使するを送る」王維 [
こちらの頁も参照]

西 xi1
 せい

出 chu(t)1
 しゆつ

陽 yang2
 やう

関 guan1
 くわん

無 wu2
 ぶ

故 gu4
 こ

人 ren2
 じん
勧 quan4
 くゑん

君 jun1
 くん

更 geng4
 かう

尽 jin4
 じん

一 yi(t)4
 いつ

杯 bei1
 はい

酒 jiu3
 しう
客 ke(k)4
 かく

舎 she4
 しや

青 qing1
 せい

青 qing1
 せい

柳 liu3
 りう

色 se(k)4
 そく

新 xin1
 しん
渭 wei4
 ゐ

城 cheng2
 せい

朝 zhao1
 てう

雨 yu3
 う

浥 yi(p)4
 いふ

軽 qing1
 けい

塵 chen2
 ちん



使

西






歌い方



渭城の朝雨 軽塵を浥し
客舎 青々 柳色新たなり
君に勧む 更に尽くせ 一杯の酒
西のかた陽関を出づれば故人無からん

イジョウのチョウウ ケイジンをうるおし
カクシャ セイセイ リュウショクあらたなり
きみにすすむ さらにつくせ イッパイのさけ
にしのかたヨウカンをいずれば コジンなからん

渭城朝雨浥輕塵
客舎青青柳色新
勸君更盡一杯酒
西出陽關無故人

(甲)漢音
ゐ せい てう う いふ けい ちん
かく しや せい せい りう そく しん
くゑん くん かう じん いつ はい しう
せい しゆつ やう くわん ぶ こ じん
(乙)平仄(四声)
去平平上入平平
入去平平上入平
去平去去入平上
平入平平平去平
(甲+乙)
ゐ/ せい_ てう_ う^ いふ’ けい_ ちん_
かく’ しや/ せい_ せい_ りう^ そく’ しん_
くゑん/ くん_ かう/ じん/ いつ’ はい_ しう^
せい_ しゆつ’ やう_ くわん_ ぶ_ こ/ じん_

※「ゐ」はwi、「いふ」はip、「かく」はkak、「そく」はsok、「くん」はkwen、「いつ」はit、「しゆつ」はshut、「くわん」はkwan、と読むと、より漢語らしくなる。


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