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詩吟

最初の公開2012-2-26 最新の更新2018-3-27
[川中島] [明治の手風琴の楽譜]
詩吟のメロディーの「骨組み」ないし「素体(そたい)」
[尾崎弥太郎 1893] [古川太郎 1935]
[加藤徹 2018]
[詩吟の音階]
[アレンジの譜例] [ミニリンク]

詩吟「川中島」 現代のパフォーマンス
題不識庵撃機山図
 不識庵 機山を撃つの図に題す
          頼山陽

鞭声粛粛夜過河
暁見千兵擁大牙
遺恨十年磨一剣
流星光底逸長蛇

鞭声粛粛 夜 河を過る
暁に見る 千兵の大牙を擁するを
遺恨なり十年 一剣を磨き
流星光底 長蛇を逸す

ベンセイ シュクシュク よる かわをわたる
あかつきにみる センペイの タイガをヨウするを
イコンなりジュウネン イッケンをみがき
リュウセイコウテイ チョウダをイッす

詩吟のメロディーの「骨組み」ないし「素体(そたい)」
尾崎弥太郎『西洋楽譜 日本詩吟集』(明治26年(1893)初版、共益社)に載せる五線譜より。「一、二、・・・、七」の字割は加藤徹が追加。
詩吟,楽譜,五線譜,尾崎弥太郎,加藤徹
 原書の五線譜の調号はニ長調(♯は2つ)であるが、加藤の再解釈によりイ長調(♯は3つ)に改めた。
 上記の楽譜から♯を取ってイ短調の楽譜として読むと、昭和・平成の陰旋法的な詩吟の旋律になる。

古川太郎『詩吟法大鑑』(荻原星文館、昭和10年初版/昭和12年4版)巻頭折込図譜「詩吟法の骨組み」数字譜およびp.38「詩吟の骨組み」の数字譜をもとに加藤徹が改写したもの。
詩吟,楽譜,五線譜,古川太郎,加藤徹
 承句「暁に見る」の字割りは、現行の詩吟では第5小節(承句の第1小節)の中で「暁に見る」と吟じ、第6小節で「千兵の」と吟じるのが普通。
 以下は字割りの目安として、七言絶句の四句の各字を「一、二、三・・・」の漢数字で表したもの。
詩吟,楽譜,五線譜,古川太郎,加藤徹

 上記の古川の原書の数字譜と五線譜には若干の矛盾があるため、加藤徹の解釈で若干修正を加えた箇所がある。

 筆者(加藤徹)が、尾崎弥太郎(1893)と古川太郎(1935)の五線譜を参考にして、現代の詩吟の旋律の「素体(そたい doll body)」をあえて五線譜化したもの。
詩吟,楽譜,五線譜,加藤徹
 かつて古川太郎(1911-1964)は「骨組み」という表現を使ったが、加藤徹は「骨組み」よりさらに柔軟で可塑性に富む「素体」(そたい。フィギュアなど、関節部分が動く人形の素体をイメージ)という言葉を援用する。
 余談ながら、加藤徹は、古川太郎の出身校(現・学校法人開成学園)の遠い後輩である。
付録 詩吟素体練習曲(コード付き)
編曲 加藤 徹
陰旋法的詩吟 素体練習曲
詩吟,練習曲,楽譜,伴奏,和音,コード,五線譜,加藤徹

陽旋法的詩吟 素体練習曲
 これは、明治中期の詩吟(尾崎1893)を復元するための参考用である。
詩吟,陽旋法,練習曲,楽譜,伴奏,和音,コード,五線譜,加藤徹


詩吟の音階
 明治時代の旋律(尾崎1893)はヨナ抜き長音階であったが、昭和(古川1935)・平成(加藤2018)はヨナ抜き短音階である。本来の詩吟は長音階と短音階の両方があったと思われるが、昭和以降は「都節」的、「陰旋法」的なヨナ抜き短音階に一本化してしまい、今日に至る。
1ファファ
2
3ミ♭ラ♭ミ♭
4ファ
5ファ

1:長音階。ピアノ式鍵盤の黒鍵にあたる●の部分は抜く。
2:長音階のヨナ抜き音階。4番目のファと、7番目のシを抜く。尾崎弥太郎(1893)の詩吟の楽譜はこれ。
3:短音階のヨナ抜き音階。2と比較しやすくするため、4の基音をドに移調して記したもの。昭和・平成の詩吟はこちら。
4:短音階のヨナ抜き音階。4番目のレと、7番目のソを抜く。演歌などでもよく使われる。
5:自然的短音階。ピアノ式鍵盤の黒鍵にあたる●の部分は抜く。

明治時代の手風琴の楽譜に見られる「詩吟」風のメロディーの例

[
明治時代の手風琴による「詩吟節」のメロディーのMIDI]
手風琴独まなび(詳しくはこちらの頁を参照)
著作者・新井省五郎 発行者・鈴木槇 発行所・書籍楽器店十字屋(東京市銀座3丁目2番地)
【上の巻】明治29年(1896)8月20日発行、明治37年(1904)7月3日訂正増補13版発行
手風琴,清楽,九連環,オルガン 手風琴,清楽,九連環
[上記の手風琴譜の「楓橋夜泊」のメロディーのMIDI]




アレンジ版の楽譜
 明治時代の手風琴の楽譜を参考に、加藤徹が詩吟のメロディーの一例を四分の三拍子の楽曲にアレンジしたもの。
[
MIDIで聴く(4部合奏)]  [MIDIで聴く(2部合奏)] [MIDIで聴く(ピアノ単旋律)]

詩吟,楽譜,五線譜

中国の詩吟
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