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「唐詩五七絶譜」清傅士然伝

最初の公開2008-05-07 最新の更新2015-7-21

この頁では、煎茶でも有名な清の傅士然(ふしぜん)が江戸時代の日本に伝えた「唐詩五七絶譜」を紹介します。
加藤徹が試みに工尺譜を「打譜」して、現代風にコードと自動伴奏を付けたものを「MIDIファイル」でアップしてあります。
どの程度、原曲に近い復元になっているかどうかは、保証できません(^^;;

参考 [傅士然と、台湾の詩吟の「清平調」の比較]
清平調を聴く 説明はこちら
清平調(魏氏楽譜)を聴く 説明はこちら
清平調(瑞安)を聴く 説明はこちら
陽関曲(傅士然)を聴く 説明はこちら
陽関曲(敦煌)を聴く 説明はこちら
陽関曲(東皐琴譜)を聴く 説明はこちら
陽関曲(魏氏楽譜)を聴く 説明はこちら
陽関曲(手抄本)を聴く 説明はこちら
静夜思を聴く 説明はこちら
平蕃曲を聴く 説明はこちら



大島克著『観生居月琴譜』(萬延庚申=1860年、伊勢の津刊)より
「唐詩五七絶譜」清傅士然伝
それぞれの頁の画像をクリックすると拡大します。
(5)平蕃曲(続)
(3)思帰楽・江陵楽・陽関曲・静夜思
(1)清平調・敦煌楽
(4)静夜思(続)・桃花歌・平蕃曲
(2)估客楽・楓橋夜泊・折楊柳

参考資料:波多野太郎編『月琴音楽史略 曁家蔵曲譜提要』
(『横浜市立大学紀要』人文科学第7篇・中国文学第7号,昭和51年10月5日)。



清平調三排
 歌詞は、唐の李白の七言絶句「清平調詞三首」。
MIDIで聴く。[簡素伴奏版](MIDIファイル)   [コード伴奏版](MIDIファイル)

復元 カラオケ


雲想衣裳花想容  雲には衣裳を想ひ 花には容を想ふ
春風拂檻露華濃  春風 檻を拂って 露華 濃やかなり
若非群玉山頭見  若し群玉山頭に見るに非ずんば
会向瑤台月下逢  会らず瑤台月下に向って逢はん

一枝濃艷露凝香  一枝の濃艷 露 香を凝らす
雲雨巫山枉断腸  雲雨 巫山 枉しく断腸
借問漢宮誰得似  借問す 漢宮 誰か似るを得たる
可憐飛燕倚新粧  可憐なる飛燕 新粧に倚る

名花傾国両相歓  名花 傾国 両ながら相歓ぶ
常得君王帯笑看  常に君王の笑ひを帯びて看るを得たり
解釈春風無限恨  春風 無限の恨みを解釈して
沈香亭北倚闌干  沈香亭北 闌干に倚る
 雲を見ては軽やかな衣裳を思う。花を見ては美しい容姿を思う。
 春の風が宮殿の欄干に吹き当たる。細かい露の粒子がキラキラ光ります。
 神仙レベルのこれほどの美女には、もし西王母の住まいである群玉山のてっぺんで会うのでなければ、
 宝玉のうてなの月のもとでしか会えないでしょう。

 一枝の濃厚で鮮やかな牡丹の花。露に潤んで、妙なる香りを放っています。
 その昔、楚の襄王は、夢のなかで巫山の女神と雲雨の交わりを結んだものの、夢が覚めたあとは、むなしく断腸の思いをしたそうです。
 おたずねします。漢の宮中で、誰か似ている人はいたでしょうか。
 さしずめ、お化粧をばっちり決めた、可憐なる趙飛燕でしょう。

 美しい名花も、傾国の美女も、ともに喜びに満ちています。
 笑顔の君王にいつもお目通りできる幸せに、浴しているからです。
 春風の無限のせつなさを解きほぐして、
 沈香亭の北の欄干によりかかっていらっしゃいます。

1.雲想衣裳花想容。春風拂檻露華濃。若非群玉山頭見、会向瑤台月下逢。
 くもにはイショウをおもい、はなにはかたちをおもう。シュンプウ、カンをはらってロカこまやかなり。
 もしグンギョクサントウにみるにあらずんば、かならずヨウダイゲッカにむかってあわん。
2.一枝濃艷露凝香。雲雨巫山枉断腸。借問漢宮誰得似? 可憐飛燕倚新粧!
 イッシのノウエン、つゆ、かおりをこらす。ウンウフザン、むなしくダンチョウ。
 シャモンすカンキュウ、たれかにるをえたる? カレンなるヒエン、シンショウによる。
3.名花傾国両相歓。常得君王帯笑看。解釈春風無限恨、沈香亭北倚闌干。
 メイカ、ケイコク、ふたつながらあいよろこぶ。つねにクンノウのわらいをおびてみるをえたり。
 シュンプウムゲンのうらみをカイシャクして、チンコウテイホク、ランカンによる。

 清平調の工尺譜(
こちらをクリック)を見てみよう。
 最初に、全体のメロディーが工尺譜で書いてある。これだけ見ても、歌詞のどの字をどの音高で歌うかという「字割り」はわからない。
 さいわい、三番の歌詞「名花傾国・・・」の左横に工尺譜が書き込んであり、字割がわかる。
 冒頭の工尺譜を機械的に「ドレミ」に置き換えると、以下のとおり。

 ラドソレ、ミレミ、ドラソラ、ソラソミレ、
 ドレソミ、ミソミレド、ソラドドラソ、ソラドラソミミミレドラド、
 (後弾)ミミレミレドラ、ラドソラソ(繰り返し)

『観生居月琴譜』別本。朱墨のフリガナが無い。
月琴詞譜,清楽,清平調 月琴詞譜,清楽,清平調
 これは唱歌譜ではなく月琴譜なので、一オクターブ上下にずれているところもある。
 「士」の右横に「ト」と書いた記号は、単音をすばやく繰り返すという意味であろう(たぶん・・・)。
 また「又」を記号化したもの(後弾の最後に出てくる)は一節全体を繰り返すという意味(こっちは確実)。

 江戸時代の日本人は、この中国伝来の曲を、どのようなリズム・テンポ・音高で唱ったのであろうか?
 まあ、リズムは四分の二拍子としておこう。
 音高は、清楽の標準である凡字調としておく。これは、洋楽の変ホ長調にあたる。
 凡字調では弾きにくい、という場合は、半音下げて小工調(洋楽のニ長調)にしてもよい。
 ちなみに昔の人は現代人にくらべるとずっと小柄だったから、声は概して高かった。

 筆者は電子音楽が嫌いである。自分で弾く楽器は、ほとんどがアコースティック楽器である。
 清楽の再現演奏も、清楽の伝承曲を弾き慣れた人々を集めて、実際に江戸時代の清楽で使った骨董品の古楽器(現在でもけっこう残っている)を使って演奏するのが理想的である。
 しかし、それでは時間も手間もかかる。  そこで、ここではとりあえず、パソコンのDTM(デスクトップミュージック)で、実験的に復元してみることにする。
 すべてパソコン上でできるので、音も出さなくて済むし、修正もいつでも簡単にできる。

 筆者は現在、パソコンの音楽ソフトとして、カワイの「スコアメーカーFX2」を使っている。
 (今思えば、もうちょっとお金を出して「プロ」版を買っておけばよかった。後悔先に立たず!)
 筆者はまだ「初音ミク」(DTMのソフトの名前)をもってないので、彼女に唱ってもらうことはできないが、いずれミクちゃんのアイドル歌手のような声で清楽を唱わせてみようと考えている。

 考えてみれば、今は古典になってしまった清楽だって、江戸時代の当時は、丸山遊女などが唱う「萌え萌え〜」系のノリの音楽だったのだ。
 平成の私たちが、オタクっぽい遊びをしても許されるほど、ふところの広い遊びの音楽なのだ。
 だから禁欲的な復元より、遊び心をこめた復元のほうが、清楽の本質的精神を継承していると言えなくもない(・・・ということにしておいてください)

 さて、ごく簡単な前奏(2小節ぶん)を補作し、コードを補い、細かい字割等を推定して復元し、パソコンソフトで自動伴奏させてみると、以下のようになる。
 [清平調を聴く](MIDIファイル)

 たぶん、別の人が復元すると、印象がガラリと変わるに違いない。
 これは復元した古曲に限らず、現代曲でも演唱者が変われば雰囲気がまるで別曲のようになる。
 音楽は本質的に、演劇などと同じ再生芸術であり、生きた芸術なのだから、これはしかたない。

 さて、筆者の復元の出来不出来はさておき、傅士然が伝えた「清平調」曲の旋律は、『魏氏楽譜』や他の清楽譜に載せる魏氏明楽系の「清平調」とは、全く違う。
 魏氏明楽の「清平調」は「五合五工合上五(ラソラミソドラ・・・)」と、歌い出しからして別の曲である。
(魏氏明楽の「清平調」については
こちらの頁をどうぞ)

 魏氏「清平調」は明楽なので、メロディーは荘重で優美である。これに対して、傅士然「清平調」の旋律は、通俗音楽的で覚えやすい。
 なお魏氏「清平調」については、坂田進一先生の打譜により東京琴社絲竹班が再現演奏合唱したものを録画した音像資料があるが、音像資料は当面、非公開である。私も混じって一緒に合唱しているので、ちょっと恥ずかしいし・・・(^^;;

[魏氏楽譜の清平調の旋律を聴く](MIDIファイル)
↓魏氏楽譜より
復元旋律 カラオケ

 余談ながら『中国民間歌曲集成 浙江巻』(1993年)p.619に載せる「708.吟詩(三) 李白・清平調 瑞安市」(数字譜・歌詞付き)は、傅士然伝版の「清平調」と違う旋律であるが、感じは少し似ている。
[
浙江省・瑞安の「吟詩(李白・清平調)」の旋律を聴く](MIDIファイル)



参考:台湾の「清平調」の詩吟との比較
歌い出しの旋律、調、歌い収めの音高が、少し似ている。
台湾の詩吟「清平調」傅士然・伝「清平調」
楽譜 加藤徹 [MIDIで聴く]
台湾の詩吟(朱賜文氏 2007)をもとに編曲。
楽譜 加藤徹 [MIDIで聴く]
加藤が『観生居月琴譜』をもとに推定復元したもの。
【参考にした動画資料: YouTubeに「Tekyiau」氏がアップした台湾の詩吟「清平調」の動画 すべて2013年10月7日閲覧】
  1. 清平調--李白作 (朱賜文吟唱)--(台灣語) 【公開日:2007/12/07】http://youtu.be/f3nRA2P_Mro
  2. 清平調 作者 李白 -- 張淑容吟唱集 (台灣語)【公開日:2007/12/31】http://youtu.be/iL31DV97eO8
  3. 清平調 作者:李白 --- 林長弘吟唱 (台灣語)【公開日:2008/07/11】http://youtu.be/M33wz1mXR5Q
  4. 清平調 唐.李白作 --- 許澤耀吟唱(台灣語)【公開日:2009/08/28】http://youtu.be/1X9wx0YWZk4
  5. 清平調 作者:李白 ---- 師院 附小95-607班吟唱【公開日:2009/11/17】http://youtu.be/XqMlPuorTsk
  6. 清平調 (李白・作) --- 張炳森吟唱 13~0610 大安社大【公開日:2013/06/16】http://youtu.be/JyjdfCxr4tY
  7. 清平調 李白・作 --- 郭啟東(84歳)吟唱 12~0630 宜蘭社大【公開日:2012/07/02】http://youtu.be/HFrtNxZmw0I
  8. 清平調 (李白・作) --- 李恆德吟唱 13~0603 大安社大【公開日:2013/06/09】http://youtu.be/aagEpo94vdg


附録 江戸時代の和本の「清平調」
『唐詩選唐音』1777年刊 (こちらも参照)
唐詩選,唐音,和本
『唐詩選唐音』(1777年刊)による発音

イユン スヤン イヽ シヤン ハア スヤン ヨン
チユン ホン ヘ カン ルウ ハア ノン
ジヨ ヒイ ギイン ヨ サン デウ ケン
ホイ ヒヤン ヤウ タイ エツ ヤア ホン

イ ツウ ノン ヱン ルウ ニン ヒヤン
イユン イヽ ウヽ サン ワン トアン チヤン
チヱ ウエン ハン コン シユイ テ ズウ
コウ レン ヒイ ヱン イー スイン チヤン

ミン ハア キン クヲ リヤン スヤン ハン
ジヤン テ キユン ワン タイ スヤウ カン
キアイ シ チユン ホン ウヽ ヘン ヘン
ヂン ヒヤン テン ポ イ ラン カン



『唐詩選画本』寛政二年(1790)正月出板
東都書林 崇山房 小林新兵衛 板
唐詩選,李白,清平調
唐詩選,李白,清平調
唐詩選,李白,清平調



陽関曲
 陽関曲の工尺譜(
クリック)を加藤が五線譜に直してみました。
 コードを付けてみました(^^;↓
MIDIで聴く。[簡素伴奏版(キーはC)]  [コード伴奏版(キーはEb)]

レーミー ソーラー、ラードラ ソー ○。ミーレー ソーミー、レードら そー ○。
ドーレー らーレー、ドードら そー ○。レードー らーレー、ドーらド そー ○。
レードー らーレー、ドーらド そー ら、そー ○。

 清楽の楽譜に載せる「陽関曲」は傅士然が日本に伝えたもので、上記のどれとも違う。
観生居月琴譜(1860)
清楽曲牌雅譜(1877)

 『観生居月琴譜』(1860)に載せる工尺譜を機械的にドレミ・・・に置き換えると、
  レミソラ、ラドラソ、ミレソミ、レドラソ、
  ドレラレド(ド)ドラソ、レドラレド(ド)ラドソ、
  くりかえし ラソ、
となる。『清楽曲牌雅譜』(1877)に載せる工尺譜も、この系統である。
 字割やリズム等は不明である。筆者は以下のように推定して復元したみたが、実際は、どうだったのだろう?

 [清楽の「陽関曲」の旋律を聴く]


music sheet,楽譜,乐谱,阳关曲,阳关三叠,陽関曲,陽関三畳,送元二使安西,送元二使安西

西 xi1
 せい

出 chu(t)1
 しゆつ

陽 yang2
 やう

関 guan1
 くわん

無 wu2
 ぶ

故 gu4
 こ

人 ren2
 じん
勧 quan4
 くゑん

君 jun1
 くん

更 geng4
 かう

尽 jin4
 じん

一 yi(t)4
 いつ

杯 bei1
 はい

酒 jiu3
 しう
客 ke(k)4
 かく

舎 she4
 しや

青 qing1
 せい

青 qing1
 せい

柳 liu3
 りう

色 se(k)4
 そく

新 xin1
 しん
渭 wei4
 ゐ

城 cheng2
 せい

朝 zhao1
 てう

雨 yu3
 う

浥 yi(p)4
 いふ

軽 qing1
 けい

塵 chen2
 ちん



使

西





 歌詞は、王維の有名な七言絶句「元二の安西に使ひするを送る」。「陽関曲」「渭城曲」などとも言う。

 渭城の朝雨 軽塵を浥し、
 客舎青々 柳色新たなり。
 君に勧む更に尽くせ一杯の酒、
 西のかた陽関を出づれば故人無からん。
 イジョウのチョウウ ケイジンをうるおし
 カクシャ セイセイ リュウショクあらたなり
 きみにすすむ さらにつくせ イッパイのさけ
 にしのかたヨウカンをいずれば コジンなからん

 古来、この漢詩は「陽関三畳」(ようかんさんじょう)と言って三回繰り返して歌われた。
 メロディーは多数のバージョンが残っているが、繰り返しかたはそれぞれ違う(繰り返さないものもある)。



 陽関曲について、現在聞くことができる最古のメロディーは「敦煌曲譜」の『伊州歌』である。
 1900年、敦煌の莫高窟(ばっこうくつ)で厖大な古文書が発見された。その中の、長興四年(西暦933年)に筆写された「変文」の裏に、当時の琵琶楽譜が書かれていた。これがいわゆる「敦煌曲譜」で、唐の時代の音楽を知るための貴重な資料となっている。
 敦煌曲譜には25種類の曲の楽譜があるが、その24曲目の「伊州」を、中国の音楽学者の葉棟氏は「陽関曲」のメロディーであると推定した。葉氏がそう推定した根拠や復元曲の楽譜については、葉棟『唐代音楽与古譜訳読』(隋唐歴史文化叢書,1985)を参照。
 葉棟氏の復元による「陽関曲」の旋律は、以下のとおり(氏の著書に載せてある数字譜をもとに筆者がDTMにしてみた)。
 [
敦煌曲譜「陽関曲」の旋律を聴く]
 なにぶん、推論のうえに推論を重ねて復元されたものなので、これが本当に唐の時代の「陽関曲」のメロディーであるかどうかは、わからない。
 ただ、リズムも音階も漢民族の伝統的な歌曲と全く違うシルクロード風であり、唐の時代のエキゾチックな空気をよく伝える曲ではある。

 この他「陽関曲」については『魏氏楽譜』に載せる明楽、『東皐琴譜』に載せる古琴の曲、『九宮大成南北詞宮譜』に載せる戯曲の曲、など様々なメロディーがある。
 それぞれの歌曲は全然ちがう。
 江戸時代の初めに中国から日本に亡命してきた東皐心越禅師(とうこうしんえつぜんじ 1639〜1696)は、日本の琴楽(きんがく)や篆刻(てんこく)の祖とされる人物だが、彼が伝えた「陽関曲」は、下記のような旋律であった。

 [
心越禅師「陽関曲」の旋律を聴く](ド=F) 【mp3で歌も聴く

渭城 朝雨浥ー軽ー塵。客舎 青ー青ー 柳色新。
ミド ソミ、ラーソー、ソーー。ラソ ソー、ソー ミソ、ソーー。
勧君 更尽一ー杯ー酒。西出 陽ー関ーー無ー故ー人。
らド ミレ、ドー らー、レーー。レミ ラー、
ソーー、ミーソー、ソーー。

刘崇德 翻谱《乐府歌诗 古乐谱百首》(河北大学出版社,2001)p.42では「ミソ ラー」と復原している。

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 江戸時代の日本の文人は、琴を弾きながら、唐音で歌詞を発音しつつ、上記のようなメロディーに載せて「陽関曲」を歌っていたのである。

 魏氏明楽の「陽関曲」は、琴曲とは全く違う旋律である。
[
MIDIで聴く]
↓『魏氏楽譜』より

 このほか、上記と別系統の歌いかたも日本に伝わっていたようである。
陽関曲 年代不明の写本(明治後期?)
MIDIで聴く [簡素伴奏]  [和音伴奏]



上記の楽譜については[こちらもクリック]。
魏氏明楽70「箜篌引」の旋律と同系。清楽の「烏夜啼」の旋律とも似ている点がある。

music sheet,楽譜,乐谱,阳关曲,阳关三叠,陽関曲,陽関三畳,送元二使安西,送元二使安西


ラー

をい

ソー

ちん
五工合
ラーミ ソー

ちゃう
上五
ドーラー

いゅい
工合五上
ミーソ ラド

五合
ラソ

きん
工合五
ミソ ラー

じん
工合
ミーソ

五上五合
ラドラソ

しゑ
工合
ミソ

つぃん

レー

つぃん

レー

りう
六工尺工
ソミレミ

しゑ

ドー

すぃん

ラー

きぇん
合五
ソーラー

きゅん

ミー

けん
合 (間奏)
ソー

ぢん
合五合
ソーラソ


ミー

ぽい
尺工上尺
レーミドレー

ちう

レー
西
すい

ソー

工尺工
ミーレミ

やん
上 (間奏)
ドー

くわん

レー

うー
工上
ミード

くう
尺 (後奏)
レー

じん




静夜思 工尺譜(
クリック)を加藤が五線譜に直してみました。
 コードも付けてみました(^^;↓
[静夜思の旋律を聴く](MIDIファイル)



 該当する工尺譜を、まず、それらしく読んでみる。
ドーレミ、ソーミー、ミソ ミド、レミレー、レソ ミド、ドミ レー、ドレ ドら、そ[ミド]レー(繰り返し)
ソミ ソミ、ソド レー、ドレ ドら、そら そー。
 原本には書いてないが、これは「算命曲」の旋律と同じである。
 という訳で、算命曲のメロディーを参考に五線譜に直すと、上記のようになる。
 算命曲の歌詞は整然とした五字句ではないが、ともかく原曲の字割やリフレインのしかたを参考に、李白のこの五言絶句の字句を音符に割り振ってみた。
 上記の五線譜以外にも、いろいろな割り振りかたが考えられる。とりあえず上記の五線譜のように漢字を割ってみたが、これが唯一絶対の解であるとは、もちろん筆者も考えてはいない。

 原曲の「算命曲」の歌詞は、コミカルタッチの寸劇仕立てである。適齢期の若い娘が家で刺繍をしていると、外を「算命先生」(占い師)が通りかかる。娘は「私はいつお嫁に行けるかしら?」と占ってもらう。 算命先生が「あと三年は無理だね」と占うと、娘は切れて怒り出す──というもの。
 李白の「静夜思」の歌詞のムードとは、大違いである。
牀前看月光  ショウゼン ゲッコウをみる
疑是地上霜  うたごうらくは これチジョウのしもかと
挙頭望山月  こうべをあげては サンゲツをのぞみ
低頭思故ク  こうべをたれては コキョウをおもう
 しかし、ゆっくりしたテンポで歌うと、意外と歌詞と曲が合っている。

 ちなみに、コミカルタッチの歌詞をもつ原曲「算命曲」のほうのテンポは、これくらいだったろう。[MIDIで聞く]

 原曲「算命曲」については「こちらの頁」もご覧いただきたい。


平蕃曲  平蕃曲の工尺譜(
クリック)を加藤が五線譜に直してみました。
 コードも付けてみました(^^;↓
MIDIで聴く。[簡素伴奏版(キーはC)]  [コード伴奏版(キーはEb)]

ドーレードーらー、ドー・・・ ○。レーミミ ミードー、レー・・・ ○。
ソーラー ドードラ、ソー・・・ ○。レミソミ レミミレ、ドー・・・ ○。
(後奏)レミソミ レ[ミミ]ミレ、ドーら ドー ○。レミソミ レ[ミミ]ミレ、ドーら ドー ○。
 「平蕃曲」は劉長卿の漢詩であるが、ここでは「同調」とされる杜甫の「絶句」を歌詞として埋め込んだ楽譜を掲げておく。
 『魏氏楽譜』に載せる明楽の「平蕃曲」(こちらをクリック)も同じく劉長卿の漢詩であるが、旋律は違う。


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