ABOUT

研究概要

自由度の高い 設計システムの開発

近年,CAD(Computer Aided Design)やCAE(Computer Aided Engineering)と呼ばれるコンピュータを用いた設計支援システムが, 当たり前の技術として製品開発の現場に浸透していますが, 本来共有されるべき経験や勘などを含む設計のノウハウが 設計者個人に依存しておりこのことが設計開発の後戻りを発生させ,生産性の低下を引き起こしています。
 設計システム研究室では,設計開発を効率的に行うための設計支援システムの開発を行っています。設計者のアイデア出しを支援し,熟練者の思考能力をさらに高め,意思決定を加速させるだけではなく, さらには経験の浅い設計者でも使える自由度の高い設計支援システムの開発を目指しています。本研究室で開発しているシステムは,日々負担が大きくなっている設計者の願いであり, モノづくり大国日本を支える基盤技術となると思っています。
 ※ MEIJI NOWによる紹介(2024年)紹介(2020年)
 ※ Meijinet (YouTube)による紹介
 ※ 日本設計工学会による研究室紹介

自由度の高い 設計システムの開発

研究テーマ

ユーザの感性価値を実現するデザイン手法の開発

従来,製品市場においては高機能,高品質であることが求められていました。しかし,近年,様々な製品市場がモノで溢れており,機能,品質面で大きな差別化ができない製品が増加しています。そのため,人間の感性に焦点を当て「使いやすさ」,「心地よさ」などの感性価値を考慮した製品開発を行うことが求められています。しかし,感性価値には機能や品質とは異なる人それぞれのばらつきや多様性といった感性の相違が存在するため,感性価値を感じてもらえる製品を設計することは難しい課題となっています。
 そこで,本研究では脳波計測やアンケートを通して,製品に対してユーザが抱く感性評価を定量的に取り扱い,多変量解析や機械学習を用いることで,ユーザの感性をモデル化し,製品の設計要素と感性価値に関する評価の関係を結びつけることで,ユーザの感性価値を反映する設計要素の組み合わせを導き出す設計手法の提案を目指して研究を行っています1)。将来的には,ユーザに簡単なアンケートや脳波計測を行うだけで,そのユーザに合った製品やサービスを提供できるシステムの開発を目指しています。

1) 満倉靖恵,関研一,井上全人,森田小百合,西村秀和, 感性をリアルタイムで測り製品に生かす試み(“デライト”を科学する,)設計工学, Vol. 52, No. 7, pp. 14-18, (2017.07).

感性アナライザ1

感性アナライザ2

セットベース設計に基づく意思決定支援システムの開発

1つの店だけを見て買うものを決めた時に限って,違う店にもっといい商品があった……なんてことがありますよね。何かものを買う時は,多くの店を見て,自分の要求やお金と相談して,納得のいくものを買うほうがいいです。
 製品開発も同じで,最初に定義した条件で開発を進めるのではなく,その条件が時間とともに変化することも考えて,広い範囲から多くの解候補を検討して徐々に解を絞り込む方が良いです。これを専門用語でセットベース設計2)と言います。
 しかし,自分の要求に合う候補が多くある場合,どれにしようか迷ってしまいます。そこで「自分に合うものを決める(意思決定)ことを支援する」のが,本研究の研究の目的です。
 意思決定を支援することで,開発期間の長期化を防ぎ,広い範囲から解を選択できるため,今まで気が付かなかった選択肢を選べるかも知れません。また,知識の共有も視野に入れているので,先人の知恵を生かして開発することができ,より洗練された製品を作り出すことができると考えています。

2) Masato Inoue, Yoon-Eui Nahm, Kenji Tanaka and Haruo Ishikawa, Collaborative Engineering among Designers with Different Preferences: Application of the Preference Set-Based Design to the Design Problem of an Automotive Front-Side Frame, Concurrent Engineering: Research and Applications, Vol. 21, No. 4, pp. 252-267, (2013.12).

セットベース設計

1DCAEに基づく設計上流段階での意思決定支援システムの開発

近年の計算機の性能向上に伴い,CAD/CAEがものづくりの現場に広く普及されています。 しかし,従来のCAD/CAEは形状情報が基本となるため,設計情報が少ない設計の上流段階に適用することは難しいのが現状です。 そこで,設計の上流段階から適用できる設計の新しい枠組みとして,1DCAEが注目されています。
 設計上流段階では,機能を実現する構造の案(以下,代替案)を設計者が適切に選択する必要があります。 代替案選択の意思決定は,製品の機能及び価値を決めるため,設計において非常に重要です。 現状,代替案の選択は設計者の経験や勘に基づいて定性的に行われことが多いため,設計者が適切な代替案を選択することは困難です。 そのため,設計上流段階において代替案の性能を定量的に設計者に提示することで,設計者の代替案の選択を定量的に支援する必要があります。
 本研究では,1DCAEの概念に基づき,代替案の性能を定量的に導出し,設計者の代替案の選択を支援するシステムの開発を行っています3)。  具体的には,代替案の性能・コスト・環境負荷等を概念設計において定量的に導出し提示することで,設計者の意思決定を支援することを目標としています。

3) 井上全人,システムの構想設計~代替案選択の意思決定支援手法の適用~,機械設計, 日刊工業新聞社,第63巻第10号,pp. 30-35,(2019.09).

デジタルヒューマンモデル

ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインとは,「多様なニーズを持つユーザに,公平に満足を提供できるように商品(製品,サービス,環境や情報)をデザインすること」4)と定義されています。 近年の高速な高齢化や外国人の増加により,一部のユーザが公共施設等の製品を使用した際に製品の利便性を公平に享受できない問題が発生しています。 しかし,その一般的な手法が確立されていません。本研究室では,デジタルヒューマンモデルを用いたユニバーサルデザイン手法の提案を行っています。 階層クラスター分析によりユーザ分類を行い,ユーザグループごとに身体特性を製品情報と同等に範囲値で表現し,デジタルヒューマンモデルを用いて 製品使用時の身体負荷を解析します。制約条件と要求性能を満たす設計解候補を導出し,身体負荷を評価することで,ユーザの身体特性と身体負荷を 同時に考慮したユニバーサルデザインの開発を行っています5), 6)

4) 日本人間工学会編,ユニバーサルデザイン実践ガイドライン,共同出版,pp. 6-15,2003.
5) Masato Inoue and Wataru Suzuki, Universal Design Considering Physical Characteristics of Diverse Users, International Journal of Automation Technology, Vol. 13, No. 4, pp. 517-525, (2019.07).
6) Masato Inoue, Wataru Suzuki, Shuho Yamada and Kazuhiro Aoyama, A Universal Design Method that Considers Variability in User Requirements: a Case Study of Mechanical Pencil Design, Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing, Vol. 15, No. 2, doi:10.1299/jamdsm.2021jamdsm0022, (2021.03).

デジタルヒューマンモデル


つり革高さ問題への適用

外乱に強いロバスト設計方法の高度化

製品には,どのような状況下においても安定して性能を発揮することが求められます。しかし,実際に製品を使用する際には部品の劣化,部屋の気温や湿度,および使用環境など設計者が制御することができない誤差となる要因(外乱)が影響し,性能が発揮されないことがあります。このような外乱に対して,性能を安定して発揮するためには,高いロバスト性(頑健性)が求められます。ロバスト性とは,外的要因による変化を内部で阻止する仕組みや性質を意味し,機械的な意味で言えば,製品の使用条件などの外部の誤差要因の影響を受けにくいシステムの働き,または性質を意味します。
 製品設計において高いロバスト性の確保のために,従来ではパラメータ設計が用いられてきました。パラメータ設計とは,製品の様々な使用条件において,想定しうる誤差要因(気温,湿度,計測装置の劣化など)を考慮した実験などを行うことで,ロバスト性の高い製品の設計を行う開発技法です。パラメータ設計は,主に設計下流段階の詳細設計や製造設計等における品質の作り込みに用いられる場合が多く,設計上流段階の概念設計や基本設計に適用される場合は少ないのが現状です。
 本研究室では,従来のパラメータ設計を設計上流段階に対しても適用可能な新たなロバスト設計手法を提案7)し,誤差要因に対してロバスト性の高い設計者の設計意図を反映した設計解を導出する設計プロセスについて研究しています。
 本研究は,機械工学科宮城善一教授との共同研究で,提案した設計手法を剥離試験装置の設計に適用しています。

7) 井上全人,水庫優果,山田周歩,宮城善一,設計意図を考慮した評価指標に基づくロバスト設計手法の提案,設計工学,Vol. 55, No. 12, pp. 751-764, (2020.12).

剥離試験装置1

剥離試験装置2

多世代使用を考慮した製品アーキテクチャ設計

世界的な課題である持続可能な社会を実現するためは,大量生産,大量消費,大量廃棄型社会からの脱却が必要であり,製品を長寿命化することが求められます。そのため,企業は長期間に渡って高性能な製品を低価格,低環境負荷で消費者に提供し,継続的に購入してもらう必要があります。これらを実現するためには,製品やその部品について,将来の再利用,再製造,アップグレードを考慮する必要があるため,構成部品が容易に交換可能である製品のアーキテクチャを導出する必要があります。
 本研究室では,サプライチェーンマネジメントやアップグレードの概念に基づき,持続可能性の高い製品について研究しています8)。環境負荷やコスト,品質等の複数の観点から評価することで,低環境負荷だけでなく,コストや品質等も同時に満足する製品のアーキテクチャを導出します。また,その計算を可能とするシステムを開発することで,設計者の負担を軽減し,意思決定を支援します。
 なお,本プロジェクトは,University of Wuppertal(ドイツ)電気通信大学山田哲男研究室との共同研究プロジェクトです。  

8) Masato Inoue, Shuho Yamada, Shogo Miyajima, Katsuhide Ishii, Rina Hasebe, Kazuhiro Aoyama, Tetsuo Yamada and Stefan Bracke, A Modular Design Strategy Considering Sustainability and Supplier Selection, Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing, Vol. 14, No. 2, doi:10.1299/jamdsm.2020jamdsm0023, (2020.04).

アップグレード設計

サプライチェーン設計

自動車リサイクルパーツの二酸化炭素削減効果測定

近年,自動車のリユース部品が注目されています。一般的には,リユース部品を使用することで,コストを大幅に削減できるだけでなく,環境負荷も低減できると言われていますが, その効果の定量的な評価は行われていません。本研究室では,自動車部品の材料調達から製造,廃棄までのライフサイクルにおいて,地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの一つである 二酸化炭素排出量に注目し,自動車のリユース部品を利用することによる二酸化炭素の削減効果に対する定量的評価を行っています。また,ユーザ価値,環境,コストの総合的評価に基いて自動車を補修する際のオプション(リサイクル部品/新品部品/買い替え)をユーザに提示する手法9)についても提案しています。
 本プロジェクトは,NGP日本自動車リサイクル事業協同組合と富山県立大学森孝男研究室との共同研究エコプロジェクトです。 エコプロジェクトの紹介ウェブサイトは,こちら。動画(YouTube)は,こちら
 なお,2014年には,日本機械学会 設計工学・システム部門より,D&Sコンテスト優秀表彰受賞,2021年に経済産業大臣賞を受賞しました。 日刊自動車新聞(2016年4月6日4月7日7月21日2017年8月31日2021年3月29日)や交通毎日新聞(2016年4月11日)等にも掲載されています。  

9) 小林峻,藤田光伸,森孝男,杉本淳二,早川明宏,山田 周歩,井上全人, 自動車補修オプションの製品価値・環境負荷・コストの観点による適合性評価(自動車エンジンへの適用),日本機械学会論文集,Vol. 86, No. 891, DOI:10.1299/transjsme.20-00163, (2020.11).

自動車リサイクル

プロジェクト

自動運転プロジェクト

長崎県対馬市と連携協定を締結し,対馬における自動運転車両の社会実装化を目的とした活動を行っています。レベル4「高度運転自動化」での自動化を目標としており,明治大学自動運転社会総合研究所の活動の一環としてプロジェクトを実施しています。 道路の中心に自動運転車両のみが認識できる「ターゲットラインシステム」により,2022年5月に自動運転レベル2での実証実験を行います。

自動運転1

研究所所有の自動運転実験車(トヨタエスティマハイブリッド)です

自動運転2

人や障害物を検知しながらマップ上のパスを自動運航します

自動運転3

LiDARによるリモートセンシング技術を使ってマップを作成します

研究室の様子

入口

入口は土足厳禁のため,室内はいつも清潔です

2階建相当の天井

2階建相当の天井の高さがあるため,開放感が抜群です

個人用ロッカー

個人用ロッカーが用意されています

個人用の机・椅子・パソコン

個人用の机,椅子,PC,モニタを使用できます


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