時事通信占領期世論調査 全10巻

出版社名:大空社
ISBN:4-87236-900-9
発行年月:1994年04月
販売価格:112,136円(税込)      

 私が最初に手がけた史料集。 占領期の世論に関する最初の本格的な史料集だろう。
 1橋大学の吉田裕教授が、川島君の業績になればと言って、出版社を紹介してくださった。
 学内でも面倒を見てくれる人など中々いないのに、世の中には学会で知り合ったというだけでこんな世話をしてくれる人もいるのか、といたく感激したものである。吉田先生はこの種の感謝感激は、あまり歓迎しない人なので、ここでそっとお礼を申し上げます。ありがとうございました。

  構 成

■ 第1巻
  @食糧危機突破に関する世論調査(1946年8月)

食料メーデT、世田谷住民による宮城デモの直後に行われた調査。統計結果のほかに、地主、自小作、小作、農業会、各地農民の意見を収録。

 A日本民主化1ケ年の動向分析・別冊世論調査集計表(1946年8月)

新憲法、婦人代議士、公職追放、財閥、教育、地方自治、警察、労働運動、宗教など20の設問から民主化1ケ年目の国民意識を分析。

 B第90議会の成果に関する世論調査(1946年10月)

戦後初の総選挙、倒閣運動、GHQの支持を得て成立した第1次吉田内閣について、約半年後に実施された議会、内閣、政党に対する国民の評価。

 C警察制度の改革に関する世論調査(1946年10月)

警察の信頼度と制度、警官の装備と待遇についての調査。全国の有識者300名に対する特別意見調査、各種別集計表を含む。

 D救国貯蓄運動に関する世論調査(1946年11月)


■ 第2巻
 @統制に関する世論調査(1947年1月)

闇取引、食料の配給制、公定価格等、自由経済か統制経済かの是非を問う調査。各種別集計表を含む。

 A政局に関する世論調査 (1947年●月)

吉田首相の年頭の「不蓮の輩」発言、これに対する労働勢力の2・1スト実施決定という政局の中で内閣の是非と次期内閣について東京都内を対象に調査。

 B隣組制度廃止に関する世論調査(1947年2月)

部落町内会の是非、隣組の代替案、家庭配給制度について調査。各種別集計表を含む。

 C2・1ゼネストをかえりみて (1947年3月)

マッカーサーのゼネスト禁止命令の直後にゼネストの是非、官公吏のストの是非を調査。職業、地域、年代別等の集計表、調査員への注意を含む。

 D財閥解体に関する世論調査 (1947年2月)

財閥解体に対する関心度と評価、財閥株式売買に関する世論調査。職業、地域、年代別等の集計表、調査員への注意を含む。

 E支持する政党 (1947年3月)

4月の衆参同時選挙、統1地方選挙を前に行われた政党選好の調査。

 Fインフレに関する世論調査 (1947年3月)
 G財政に関する世論調査 (1947年5月)


■ 第3巻
 @資料−衆議院議員選挙(1947年4月)
 A新内閣について(1947年5月)

本調査が行われたのは、4月25日総選挙の後であり、単独で過半数を占める政党がなくなり政局の焦点は連立を巡る動きに置かれていた。

 B物価引下げ運動に関する世論調査 (1947年5月)
 C新聞に関する世論調査結果表 (1947年7−9月)
 D無記名普通預金制度に関する調査 (−947年8月)
 E日本民主化のあゆみ (1947年10月)

新憲法、国会、公職追放者、治安、地方自治、農地改革、労働運動、女性の政治意識等15の設問により民主化2年目の日本の軌跡を検証。


■ 第4巻
 @新聞に関する世論調査(1947年9月)

新聞用紙配給委員会の要請により行われた新聞鰐読の選好調査。調査結果は当時、未公表にされた。新聞選好に関する府県別集計表を含む。


■ 第5巻
 @所得税予定申告納税制度に関する世論調査 (1947年11月)
 A財閥解体に関する世論調査(1947年12月)

経済力集中排除法制定を受け、財閥株公売を目前に再度おこなわれた財閥解体に対する国民の評価。職業、地域、年代別等の詳細な集計表を含む。

 B塩の需給に関する世論調査 (1947年●2月)
 C支持する政党 2947年12月)


■ 第6巻
 @内閣支持について(1948年1月)

片山連立内閣並びに社会党政権に対する支持の調査。

 A生活必需品で何が高いか(1948年1月)
 B金の行方−1万円の使いみちを探る 2948年1月)
 C1948年に解決してもらいたい問題 (1948年1月)
 D教育に関する世論調査(1948年1月)

教育基本法、学校教育法成立後、新学期を前に6334制、文教予算のありかたと民間からの寄付の是非について調査。各種集計表を含む。

 E祝祭日に関する世論調査 (1948年1月)

現行の祝祭日、新たに設ける祝祭日、体育祭・文化祭・芸術祭を祝祭日とすることの是非をめぐり国民にとって何が祝うべき日かを問う調査。

 F支持する政党(1948年1月)
 G電話に関する調査(1948年2月)
 H法人電話に関する調査(1948年2月)
 I新聞に関する世論調査(1948年3月)
 J全国世論調査基本計画(1948年)


■ 第7巻
 @内閣の経済政策に対する態度〔英文報告書〕(1948年6月)
 A高額紙幣に関する世論調査(1948年7月)
 B所得税に関する世論調査(1948年8月)
 C電信に関する調査(1948年9月)
 D国旗について(1948年9月)

祝日の国旗掲揚について、国旗をもっているか、持っていて掲揚しないものの理由についての調査

 E次期内閣について(1948年10月)

昭電疑獄で次々と逮捕者を出し動揺する芦田内閣に対し国民の批判はいよいよ高まる。本調査は次期政権と政党選好について行った調査。

 F煙草に関する調査 (1948年lO月)
 G支持する政党(1948年10月)
 H支持する政党(1948年11月)
 I選挙(1948年12月)
 J国民は「宝くじ」をどうみるか(l948年12月)
 K生活必需品で高いものは(1948年12月)
 L1949年に解決してもらいたい問題(1948年12月)


■ 第8巻
 @電話に関する調査〔普及について〕(1949年1月)
 A選壷丁予想研究調査(1949年2月)

1948年12月、アメリカ大統領選挙でアメリカの主な調査機関全てが選挙予想に失敗する。本調査はこの教訓に基づき、翌年1月の総選挙に際し行われた研究調査。

 B所得税に関する調査(1949年3月)

大蔵省主税局、更生決定後に予定申告納税制度の方法、課税、徴税方法等につき事業者を対象に実施。

 C国民はどんな理想の生活を考えているか(1949年4月)
 D証券に関する調査(1949年5月)

証券処理調整協議会との提携による調査。証券民主化とその復興経済への影響、株購入について。

 E好さな国嫌いな国(1949年6月)

占領下の国民の国際観を明確に表した調査。都市郡部、業種、年齢別等。

 F税制改革についての世論調査(1949年10月)

シャウプ勧告、税制改革に対する関心度、意見について職業別、所得別、教育別におこなった調査。


■ 第9巻
 @喫煙の習慣と嗜好について (1949年2月)
 Aシャウプ税制改革についての世論調査 2949年11月)

国税庁との提携による調査。前回の補足調査、関東中心にシャウプ勧告に対する国民の感想と期待、各業種、階層から見た利書関係など。

 B吉田内閣支持について(1949年−1月)
 Cリーダースダイジェストについての調査(1950年2月)

当時、読者150万人を誇ったリーダース・ダイジェストの普及についての調査。マーケティング的性格を持つ反面、アメリカ文化に対する日本人の意識を読み取ることができる。

 D税についての宣伝効果調査(1950年11月)
 E社会保障に関する世論調査(1950年11月)
 F宗教・信仰についての調査〔英文報告書〕
 G朝鮮戦争に対する神戸市民の初期の反応


■ 第10巻
 @『時事世論』第1号(1947年4月)
 A『時事世論』第2号(1947年9月)
 B大阪特別市に関する世論調査 (1947年7月)
 C労働者並びに労働状況に関する世論報告(19周7年11月)

労働基準法、組合の運営と方針、争議の是非、賃金体系、総同盟・産別・日労の是非、農民に対する意識、片山内閣の是非等についての調査。

 D証券民主化に関する調査 2948年4月)

2月に未曾有の株式ブームがあり、証券民主化運動についてどう思うか、株をもっているかを調査したもの。専門家の意見調査を含む。

 E貯蓄に関する調査(1948年7月)
 F所得税に関する調査(1949年3月)
 G広告は無駄なく効果を上げて居るか(1949年8月)
 Hソ連の原爆開発、中共進出、永世平和(1949年11月)

ソ連の原爆開発成功について、中共の広東進出の是非、憲法の永世平和は可能かどうか等、激動の国際情勢に向けて日本の姿を問う調査。

  書 評

  研 究

 敗戦後の九月二四日、「日本政府のニュース統制の排除、各国の外電通信提供の自由及び政府の助成機関たる同盟通信社の特権剥奪」の指令を受け、同盟通信社は解散しその業務は共同通信、時事通信に引き継がれることとなった。「同盟通信社解散に関する覚書」(一九四五年一〇月三一日締結)によれば、共同通信は「新聞社および放送協会を対象とする新聞通信」を、時事通信は「一般購読者を対象とする時事通信、経済通信、 出版事業等を経営するをもってその目的とする。従って原則として調査局、経済局所属の人員ならびに報道局、連絡局および写真部の残留社員を採用」とある。時事通信社はこの覚書を受け一九四五年一石一日に発足した。

 時事通信社の創立趣意書には「時事通信社は政府と大資本とより独立して報道の自由を確保し責任ある通信を発行する」とあったが、その設立自体が同盟からの引き継ぎであり、その後の調査部門の歴史には、しばしば、半官半民的な要素が見られた。しかし、その他方、同盟の組織綱を引き継いだことは全国的な調査を容易にし、他の報道機関・調査機関に対し優位な立場となり、占領軍当局からその分析について信頼を得るに至る要因であった。時事通信社内に世論調査を担当する調査局が設けられたのは一九四六年四月一日のことである。(川島高峰「解説」より)

 論文「戦後世論調査事始」[pdf]

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