研究のページ
確率微分方程式モデルによる気象時系列解析
冬季北半球中高緯度におけるZ500の長周期変動データを,主成分分析によって得られる卓越モードで張られる相空間に射影して解析します.相空間上に射影されたデータから確率微分方程式モデルを構成し,予測可能性評価について研究しています.第1モードはAO,第2モードはPNAパターンと対応しているため,大気長周期変動をそれらのモードの張る相空間における軌道の力学として考察することは気象学的にも意義があります.
気象データの機械学習的モデリング
モード展開を用いた手法以外にも,機械学習的手法を用いた低次元記述がデータ解析に役に立ちます.Self-Organizing Map や Generative Topographic Map のような方法や,Variational AutoEncoder や Generative Adversarial Network のようなニューラルネットワークを用いた生成モデルもデータの性質を詳らかにする可能性を秘めています.
遅延座標埋め込みと再構成に関する代数幾何学的研究: Groebner-Takens framework
遅延座標を用いた遅延座標埋め込みによる力学再構成手法を Groebner 基底の手法を用いて理解します.全体の力学から部分的な観測変数への縮約は消去理論を用いて表すことができますが,さらにその逆である再構成も同様に blow-up によって表現することができます.単に遅延座標埋め込みで「アトラクタを再構成した」というのではなく,構成的に力学系の変数を構成することでデータ駆動的力学モデリングにつなげます.
遅延座標埋め込みによるスカラー時系列解析の数学的構造
遅延座標を用いてベクトル化する時系列解析の方法論は埋め込み理論と呼ばれ,Takensの埋め込み定理に代表されるようにトポロジカルな数学的正当性が示されています.これを定量的な解析につなげるため,Hilbert-Schmidtの積分作用素論やSturm-Liouville理論からのアプローチによって遅延座標埋め込みの数学構造を研究しています.この手法は時系列データに対するスペクトル解析に対応しており,時系列データから特徴的な周波数モードを取り出すことによって,複雑な振る舞いをする時系列データからも元の現象を特徴付ける不変集合を抽出することができます.
経験的セル・オートマトン構成法による数理モデリング
空間・時間変数がともに離散状態のみを取り,その時間発展がセルの局所規則によって決まる数理モデルをセル・オートマトン(CA)と言います.この局所規則をデータだけから決定する方法が経験的CA構成法です.この手法によって,データから対象となる現象の骨子となる数理モデルを構築することができます.
幾何学的手法による時系列解析
時系列データを相空間における空間曲線とみなすと,微分幾何学における曲線論によって特徴付けすることができます.これによって時系列データの時間発展を記述する新しいモデリングが可能です.また,空間データからリーマン計量を定めることでデータから多様体を構成し,特徴的なデータ構造を抽出することもできます.これによって時系列データの軌道が乗る曲面を抽出して,その時間発展の理解に結びつけることがねらいです.
密度勾配依存応力モデルの数学解析
連続体モデルの応力テンソルにその連続体の密度勾配に依存する項を導入するモデルです.モデル方程式は非線形偏微分方程式系になります.解の存在や一意性の証明や,単純剪断流の場合にこのモデル特有の定常解であるサイクロイドに対する解析を中心に研究します.