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各種清楽譜における九連環 1870年代篇

since 2008-8-8 最新の更新 2012-10-6
[声光詞譜(1872)]  [月琴楽譜(1877)]  [清楽曲牌雅譜(1877)]
  [月琴手引草(1877)]  [明清楽譜摘要(1877)]   [明清楽歌譜集(1877)]   [花月余興(1877)]
[清楽秘曲私譜(1878)]

明治前期
声光詞譜(1872)
「袖珍折本」、天地人の3巻。原刊は明治5年(1872)だが、その後、何度も版を重ねた。

下記の写真の本は、1877年の版である。「雪・月・花」の三冊セットの豆本。
工尺譜の右横の音長表記法が、曲ごとにバラバラであることに注意。
九連環は、薄い墨字の○。茉莉花は、朱の○と縦線。剪剪花は、墨字による傍点。……
月琴 清楽 工尺譜 平井連山 月琴 清楽 工尺譜 平井連山
明治十年九月十一日出版御届 同年同月 刻成
編輯者 京都府平民 吉見重三郎 下京廿四(=24)区上平野町 四百五十八番地住
出版人 同     高橋 品  上京卅(=30)区上本能寺 前町三百八十二番地住


下記の写真の本は、1878年の版である。
奥付「明治十年十二月十七日御届/同 十一年一月十一日板権免許/大阪府下第一大区四小区/高麗橋二丁目四十三番地
著者兼出板人 平井連山」
 
学習者が、墨点と朱線で、工尺譜にそれぞれの音長を書き込んでいる。
工尺譜の右横に墨点がN個うってあれば、N倍長く伸ばす。
工尺譜の文字と文字のあいだに朱の縦線で結んであれば、音は半分短い長さになる。
『声光詞譜』は明治5年の序文があり、その後、何度も増刷されたペストセラー。「天・地・人」三冊からなる。
下に掲げる二冊も同じ『声光詞譜』だが、書き込みがなく、まっさらである。
(別本その一)↓奥付がなく、実際の刊行年はわからない。

(別本その二)↓明治20年(1887)に福井県で翻刻出版された本。字体が微妙に違うことに注意。

奥付に「明治廿年十月十一日御届/仝年仝月三十日出版/翻刻出版人 福井県平民 寺木長右エ門/越前国足羽郡福井/錦上町三拾六番地/ 発兌人 福井照手上町書肆/岡崎左喜介」
※越前国足羽郡(あすわぐん)、福井照手上町→現在の福井市の一部。寺木長右エ門は別の本では「寺木長右衛門」表記も多い。

このように、清楽の学習者は、師匠に入門して曲を習い、自分で音長を書き込んでいった。
そのため、明治前期までの清楽譜で書き込みのないものは、それだけを見ても、曲を再現演奏できないものが多い。

月琴楽譜(1877)
中井新六著 大阪,明治10.7
清楽譜の集大成ともいうべき清楽譜である。 「元亨利貞」の四冊からなる。 収録曲も多く、歌詞は詳細で、後の清楽譜にも大きな影響を与えた。
例えばこの「九連環」の歌詞も、類書の多くでは割愛している後半部の歌詞まで、漏れなく記録してある。
本書は、研究者が備えておくべき清楽譜本の一つである。

本書の序文(漢文)には、清楽の歴史は当時からおよそ百年前、長崎で清客の江芸閣が伝えたことに始まる旨が書いてあり、 この序文も史料として重要な価値をもつ。



清楽曲牌雅譜(1877)
河副作十郎(何杏村)著  大阪,明治10.11
何杏村は長崎の中国人通訳で、日本に帰化して河副作十郎と名乗った。
幸い本書は、波多野太郎編『月琴音楽史略 曁家蔵曲譜提要』(『横浜市立大学紀要』人文科学第7篇・中国文学第7号,昭和51年10月5日)に影印収録されている。



月琴手引草(1877)
山本小三郎編
京都:大谷仁兵衛,明10.10

九「蓮」環、と誤記されている。

明治の九連環の工尺譜は、旋律の冒頭を「上上工尺」と記すもの(『月琴楽譜』など)と、「上工尺」(『清楽曲牌雅譜』など)に二分できる。本書は前者である。



明清楽譜摘要(1877)
佐々木僊編
京都:石田忠兵衛,明10.9

素朴な工尺譜である。



明清楽歌譜集(1877) 2冊
小さな折り本。明治10年10月1日出版御届、京都・宇喜多小十郎 編輯。※奥付では「宇喜多」、目次の直後は「宇喜田小十郎」。以下の画像を参照のこと。
明清楽,九連環
明清楽,九連環
明清楽,九連環
明清楽,九連環
明清楽


花月余興 一〜五(全5冊・譜之部)
明治10年11月27日御届 同10年12月6日版権免許 編輯人 平井れん 大阪府下第壱大区四小区/高麗橋二丁目四十三番地
出版人 中井新六 大阪府下第四大区四小区/堂島裏二丁目九番地
売捌所 小谷卯兵衛 大阪府下第壱大区八小区/備後町四丁目三十番地





清楽秘曲私譜(1878)(全2冊)
小さな折り本、「乾・坤」2冊でセット。明治11年11月「盧白間人」による序文あり。
 

収録曲は、 乾の巻…三国史(ママ)「碧破玉 桐城歌 双蝶翠 四不像」、翠賽映「碧破玉 桐城歌 双蝶翠 串珠連」
坤の巻…雷神洞「前段 後段」


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