開講に当たって−受講する学生諸君へ−
昨今、憲法改正の是非をめぐる議論が活発となっています。この講座では敗戦直後期から憲法制定時までの日本人の天皇観、憲法観、民主主義観、憲法の制定過程を振り返り、さらに昨今の80年代までの改憲論の経緯を概略、90年代の改憲論を考察します。
私が最も忌避したいのは、とにかく憲法問題をタブー扱いにしてしまうことです。改憲=国家主義、反動主義と見たり、護憲=戦後民主主義の盲目的な信奉と見たりするような、単純化された実のない議論を私は望んでいません。改憲か、護憲かといった立場を決めてしまう前に、人生で一度は、ゼロから憲法を考えなおす機会があってもいいでしょう。
この短い機会を通じて、結論は何であれ、「私達の憲法」という言葉を実感することができるために、今、我々にとって必要なこととは何なのかを、私は君達と共に模索したいのです。
講義要綱
- 第一講 日本人の民主主義理解
- 第二講 新憲法公布前後の国民意識の状況
- 第三講 改憲の論理と護憲の思想
- 第四講 公布後五〇年改憲・護憲の位相
第一講 日本人の「民主主義」理解
- 導入 左翼も右翼もうそつきや!!、日本人はみんな嘘つきや??
−憲法をめぐるダブルスタンダード−
- 国体観念からの出発 −明徴から象徴へ−
- 日本国憲法の制定過程
第1講レジュメ
第1講 課題
第二講 新憲法公布前後の国民意識の状況
- 「天皇ニ告グ」(第22回衆議院選挙公報より)−食料危機と天皇−
- 1945−1946年における民衆の憲法認識
- 1947年における民衆の憲法認識
第2講レジュメ
第三講 改憲の論理と護憲の思想
- 独立講和と60年安保
- 高度経済成長期の憲法認識
- 80年代の改憲論
第四講 公布後五〇年改憲・護憲の位相
- 90年代におけるダブルスタンダードの崩壊 −冷戦構造、バブル、憲法制定過程の神話−
- 憲法イメージの多様化 −改憲・護憲から護憲的改憲・創憲へ−
- 読売改憲案と簇生する民間の改憲試案
- アンケート結果の検討
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