本研究室ではヒトと動物の幸せな環境の提案を目指し、3つのテーマを挙げています。
「化学物質やストレスなどの環境因子が引き起こす障害の解明」
「ストレス耐性など生体に有利な性質を獲得させる方法の検索」
「不安・社会性・学習・摂食などの行動を制御する神経内分泌学的機序の解明」
上記テーマの一環として行った研究、「生後24時間以内のエストロゲン様化学物質曝露がラットの行動に及ぼす影響」について紹介します。
畜産動物からヒトに至るまで、その環境中には様々な化学物質が存在し、中には生体内におけるホルモンの作用をかく乱する物質が多様に存在します。畜産物質が曝露されうるホルモン様物質としては、ホルモン製剤はもちろん、飼料植物に含まれる成分、飼料に含まれる保存料や残留農薬の一部などがあります。ホルモンの中でも、エストロゲンはげっ歯類などの脳に構造的、機能的な変化を引き起こすことが知られ、その作用は形成的作用と機能的作用とに分けられると考えられています。
エストロゲンの形式的作用は発達期におこる不可逆的なもので、未発達で可塑性に富んだ神経組織に作用して神経細胞の形態や神経回路を固定します。従って、この時期にエストロゲン様作用をもつ化学物質に曝露されると、正常な脳の分化が阻害される場合があります。一方、機能的作用は神経細胞や神経回路の活動を賦活するもので、多くは可逆的です。エストロゲンが作用する神経機構は、生殖、摂食、情動、高次機能と多岐にわたります。しかし生後直後のホルモン様物質曝露がどのくらいの量でどのような影響を引き起こすかについては一部しか解明されていません。そこで本研究では生後24時間以内にエストロゲン様物質を曝露し、学習行動、不安様行動、摂食行動、生殖行動について検討しました。その結果、生後24時間以内の17α-ethinyl estradiolは2 mg/kgの濃度でメスラットの性行動を抑制し (Komine et al, 2017. Journal of Applied Toxicology.)、その100分の1濃度で受動回避学習試験の成績を低下させることを明らかにしました (Shiga et al, 2016. PLoS One. 11:e0146136.)。
本研究室では主に行動学的解析手法を用いて研究しています。
本研究室で行っている実験方法の一部を紹介します。
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