step10 課題レポート:Webを用いた調査
あるテーマを設定し、Webを用いて情報を収集するのは、検索の鉄人演習でやったトリビアの答探しにくらべて、一段高度な判断と検索スキルを必要とする。
課題の説明
調査テーマ
各自、興味のある時事問題(テーマ)を1つ選び、Webを利用した調査を行い、結果をWord文書のレポートにまとめて提出すること。テーマは何でもよいが、調査を始めてみて、Webによる調査に適さないとわかったら、無理に続行せず、他のテーマに変更する勇気も必要だ。
調査対象
調査するWebサイトには、以下のものを含めること(すべてを網羅することは求めていない)。
- 各新聞社のサイト
- 読売、朝日、産経、毎日、日経……
- 各通信社のサイト
- 時事通信、共同通信……
- 匿名掲示板
- 2ちゃんねる、Yahoo掲示板……
同じテーマでも、新聞社、通信社によって報道の傾向(社の方針)が違うのがわかるはずである。どう異なるかを把握しておくこと。また、匿名掲示板では、嘘の情報(つまりデマ)、誹謗中傷なども多いから注意すること。
スケジュール
調査とレポート作成の手順を、コマ単位で大ざっぱに描くと、図10-1のようになる。次回までにテーマを決め、次回はテーマに沿ってWebから情報を集め、素材のWord文書を作成する。次々回にそれを元にレポートを作成、提出する。各自選んだテーマについては、次回、テーマ調査票に記入してもらい、チェックする。テーマを没にすることはまずないが、時事問題とは言いがたいもの(好きなアーティストの紹介とか)は変えてもらうし、数枚のレポートではまとめきれそうもない大きすぎるテーマについては、何かしら切り口を設けて縮めてもらう(例:「TPP交渉」→「TPP農業分野の交渉」など)。

調査フェーズ
留意点
図10-2に、調査作業のイメージを示す。
- 決めたテーマを数個のサブテーマに分け、調査の仕事量を見積もる。調査時間はアウトプット(知的成果物)の分量に応じて決まると考えてよい。この課題の場合だと、たかだか数枚のレポートが書ければよいのである。
- 数個のサブテーマに関して、粒度(詳細さ)※1のばらつきが少なくなるように、平均して調査する。
- Webで調べがつかなかった事柄については、書籍その他のメディアから情報を補ってもよい。
- 調査先のページの内容を、レポート作成に利用できるように、素材のWord文書にコピー&ペーストする。その際、調査先がわかるように注意する(後で参考サイトにまとめるため)。
1 粒度は土木工学の用語で、砂や石などの粒の大きさのこと。図書館情報学やターミノロジー学では、転じて情報のまとまりの大きさを指すようになった。厳密に数値化できる尺度ではないが、意識すると知的生産の精度が上がる。

レポート作成フェーズ
レポートのまとめ方
レポートは、以下の形式でまとめる。
- レポートの書式
- A4版縦使い、横書き、40字×35行。
- 分量
- 5枚~10枚(それ以上の場合は、よほどの力作か、コピペの山か、どちらかである)。
- 選んだ時事問題の、簡潔で中立な解説(特に、一般になじみのあいテーマの場合は詳しく)。
- 新聞・通信各社がどのように報道しているか(またはしていないか)。記事を列挙するのではなく、自分なりの文章に整理して、その中に引用すること。
- 公式のメディアで報道されていることに対して、匿名掲示板(非公式のメディア)ではどのような意見・評判があるか。また、匿名掲示板でしか得られない新たな情報は何か。デマと思われる情報は何か。
- 得た情報を使って、自分の文章で考察(まとめ)を書く。
- 調査に利用したWebサイトの一覧(検索サイトは除く)。論文の参考文献にあたる情報である。各項目は、サイト名、URL、調査日付の3つ組で記述すること。URIだけの羅列は不可(URIは機械が読む情報で、人間が読むものではない)。日付が必要なのは、Webサイトの変更は自分でコントロールできなくても、ある時点で確かに情報があったことを主張(クレーム)するためである。
留意点
- 表紙を独立させ、本文以外のすべての部分をそこに書く。
- レポートの構成を決め、構成要素(章・節・項など)に割り当てる。
- 構成要素ごとに分量を見積もる。
●レポートの構成例
- 序論
- 章の見出しは「はじめに」など。そのレポートに何が書いてあるかを明示する。タイトルに一般的でない語があるときには、その定義も。
- 本論
- 調査結果をまとめた部分。調べた内容の引用を自分の言葉(糊の文章)で継ぎ合わせたものでよい。章・節の見出しは選んだテーマに即した表現にすべき。
- 公式性の高い情報。事実関係や経緯。
- 非公式な情報。世間の意見や評判。
- 結論
- つぎのような章から構成される。見出しもこのままでよい。
- 考察
- 自分が考えたことを、自分の言葉でしっかりと書く。ここでは引用禁止。この部分の充実度や出来映えでレポートの評価が決まる。
- おわりに
- レポートのまとめ、今後の展開(論文などの場合。今回の課題では不要かもしれない)。個人的な動機・感想などを述べたい場合はここに。
- 参考サイト
- サイト名、URL、調査日付の3点セット。多くの項目で日付が共通な場合はまとめてもよい。
- 考察
優秀作品の紹介
過去の授業で提出された調査レポートの中で、比較的よくできているものをいくつか紹介しておく。各自、レポート執筆の参考にするとよい。