新元素・超重元素の探索
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新元素・超重元素の探索

 元素周期表は,どこまで続くのでしょうか?
 現在,118番元素のオガネソンまでが発見されています。しかし,119番以降の元素はまだ発見されておらず,元素周期表がどこまで続くのかは,現代の科学でも解明されていない大きな謎の一つです。
 原子番号が大きい元素は「超重元素」と呼ばれ,加速器を使って重い原子核同士を衝突させることで人工的に作り出されます。しかし,原子核が重くなるほど,陽子同士の電気的な反発力が強くなり,原子核は不安定になります。そのため,超重元素の多くは非常に短い寿命で崩壊してしまいます。
 一方,原子核の世界では,陽子や中性子の数によって原子核が特別に安定化する「殻構造」が存在します。この効果によって,非常に重い原子核でも比較的長い寿命を持つ可能性があり,そのような原子核が集まる領域は「安定の島」と呼ばれています。安定の島がどこに存在するのか,そして新しい元素はどこまで作り出せるのかは,原子核物理学の重要な研究課題です。
 私たちの研究室では,加速器から得られる重イオンビームを標的原子核に衝突させる「重イオン核融合反応」を利用して,超重元素の研究を進めています。超重元素が生成される確率は極めて低く,膨大な数の原子核を衝突させても,目的の原子核がわずか数個しか生成されないこともあります。こうした希少な原子核を効率よく分離・検出し,その生成過程や放射性崩壊を調べることで,超重元素の性質を明らかにしようとしています。

研究内容 #

重イオン核融合反応による超重元素の合成 #

超重元素を作り出すためには,加速器で高速に加速した原子核を標的原子核に衝突させ,2つの原子核を融合させる必要があります。しかし,原子核同士が融合する確率は非常に小さく,さらに融合してできた原子核の多くは核分裂によって失われてしまいます。そのため,超重元素を合成することは非常に困難です。

一方,原子核の殻構造によって,特定の陽子数や中性子数を持つ超重元素が比較的安定に存在できる「安定の島」が理論的に予測されています。この安定の島に到達し,より長い寿命を持つ未知の原子核を発見することは,超重元素研究の大きな目標の一つです。

私たちは,国内外の研究機関との国際共同研究による新元素探索実験に参加し,119番以降の未知の元素の発見を目指しています。こうした国際的な研究活動を通して,元素周期表の限界に挑戦するとともに,未知の超重元素が存在する可能性を探っています。

重元素の崩壊分光と新しい検出器の開発 #

重い原子核は,α崩壊やβ崩壊,核分裂など,さまざまな過程を経て別の原子核へと変化します。こうした崩壊に伴って放出されるα線,β線,γ線,X線や核分裂片を測定することで,原子核の種類や内部構造,崩壊の仕組みを調べることができます。特に,重元素の放射性崩壊を詳しく調べることは,原子核の安定性や核分裂のメカニズムを理解するうえで重要です。

私たちは,重元素のさまざまな放射性崩壊を捉えるため,複数の放射線を組み合わせた測定手法の開発に取り組んでいます。特に,わずかな数しか生成されない希少な原子核から,できるだけ多くの情報を得るため,高い検出効率や優れたエネルギー分解能を持つ新しい検出器の開発を進めています。こうした検出器開発と崩壊測定を通して,これまで観測が困難だった重元素の崩壊現象を明らかにすることを目指しています。
関連する研究
・ 検出器の開発

超重元素の原子核構造と安定性の解明 #

超重元素がどこまで存在できるのかを理解するためには,原子核内部の殻構造を明らかにすることが重要です。原子核の質量は,陽子と中性子がどれだけ強く結びついているかを反映しており,その精密測定から原子核の安定性や殻構造を調べることができます。私たちは,多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF-MS)を用いて,超重元素の質量を直接測定し,原子核の殻構造を調べています。こうした研究を通して,超重元素の安定性を支配する仕組みを明らかにし,「安定の島」の理解につなげることを目指しています。
関連する研究
・ 原子核の精密質量測定