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2007年10月1日 日刊工業新聞
進むクローンブタ研究
明治大 正確な医学データを入手へ
大型の医学用実験動物としてはこれまでイヌを用いることが多かったが、最近は動物愛護の観点から、敬遠される傾向にあるという。代わりに注目されているのがブタ。体や臓器の大きさのほか、ウシやヒツジと違って雑食のため、消化器官の構造が人間と近いなどの利点がある。明治大学の長嶋比呂志教授らは、ブタの実験動物としての利用を研究している。中でも、体細胞クローニング技術を駆使したクローンブタの作製では高い評価を得ており、新薬の開発や新しい治療法への利用が期待できる。(小川淳)
“第4世代”作製
ほ乳類での体細胞クローンでは、世界で初めて誕生した“ヒツジのドリー”が有名だが、これまでもヒツジ以外にマウス、ラット、ウシ、ウマ、ネコなど多くの種類で誕生している。クローンブタも2000年の誕生以来、研究が盛んに行われており、医療用だけでなく、優れた形質を受け継ぐ食肉用としても将来有望な技術とされている。
糖尿病モデルも作製 新薬・治療法開発に一役
最初のクローンブタが誕生したのが04年4月。ブタの唾液腺から分離した幹細胞の核を取り出し、別のブタの卵子の核と入れ替えた。その後、母胎へと卵子を1度に100個ほど入れて子供を産ませた。生まれた子供は幹細胞を提供したブタと遺伝子情報が同じとなる。
そこからさらに世代を重ね、07年7月には“第4世代”のクローンブタを作製することに成功した。「成功率は約2%」(長嶋教授)。
ほ乳類ではマウスで“第6世代”が誕生しているが、ブタで“第4世代”クローンが生まれたのは世界で初めてのことだ。大型動物では例えばウシは“第2世代”止まりになっており、死産や奇形もブタより多い。代を重ねるたびに遺伝子の傷が蓄積したと見られるが、ブタの場合、“第4世代”でもこうした遺伝子の傷の蓄積が比較的少ないという。このため、長嶋教授はブタで「第5世代、第6世代と作れる可能性が高い」と見ている。
遺伝子を均一に
クローンブタの世代を重ねることで、生まれてくるブタの遺伝的特徴を均一にすることができる。マウスと違い、通常のブタは遺伝子のバラつきが多く、例えば薬剤を投与しても効果が薬剤によるものなのか、遺伝子的な違いによるものなのか区別が難しくなる。その点、同じ体細胞から誕生したクローンブタなら、遺伝子データがまったく同じなので、医学的なデータを取る際、より正確なデータを取得できるようになる。
難病の疾患モデル
また、例えば再生医療で自分の細胞から新しい臓器を作製して、病気の臓器と取り換える際のモデルとしても期待できる。移植した際の効果や拒絶反応の有無などが確認できるようになる。
一方、長嶋教授はクローンブタの作製技術を応用して、バイオベンチャーのバイオス医科学研究所(神奈川県平塚市、浦上研一社長、0463-25-5105)と共同で糖尿病疾患モデルのブタの作製にも成功している。まず通常のブタの卵子に顕微授精を行う際に、精子に糖尿病の原因遺伝子である「変異型ヒト肝細胞因子」を乗せた。すると受精するときに精子に付着した遺伝子が卵子に取り込まれ、生まれてくる子供に疾患遺伝子が組み込まれる。次に、こうして作製したブタの胎児の体細胞から核を抜き出して別の卵子に核移植すると、疾患遺伝子のあるクローンブタが作製できる。
ブタは、生後数日から随時血糖値が1デシリットルあたり200ミリグラムを越える高血糖状態を維持しており、これは人間の糖尿病の診断基準にあてはまるという。
また、遺伝的にまったく同じ糖尿病の疾患モデルであるため、薬剤による糖尿病の治療効果を確かめる際、遺伝子の違いによる差異が生じない。これまで糖尿病の疾患モデルのブタを作製するには、すい臓を切除したり薬剤処理を行う必要があったが、クローンブタなら正確なデータが取得できるうえ、より効率的に作製できる。
今回の実験では糖尿病を発症させたが、導入した同じ遺伝子でも条件を変えれば肝臓や腎臓の疾患モデルのブタを作製できるという。長嶋教授は「心臓や脳神経などほかの疾患モデルも作りたい」と話している。
 
2007年8月7日 朝日新聞
クローン豚、第4世代へ
コピーのコピーのコピーのコピー
明大教授が成功 再生医療に弾み
動物の遺伝的コピーを作る体細胞クローン技術を繰り返し使い、豚のコピー(第1世代)のコピーのコピーのコピーに当たる「第4世代」を作ることに、明治大の長嶋比呂志教授(発生工学)らが成功し、6日発表した。同じ条件の豚を、豚の通常の一生を超えるような長期間、実験に使えることになる。豚は人間と体の仕組みが似ており、再生医療研究などに弾みがつきそうだ。
長嶋教授らは、これまで作ってきた「第3世代」の健康な豚から取った細胞から作製したクローン胚(はい)50個ほどを代理母・豚の子宮に移植。先月23日に3頭が生まれ、2頭が正常に育っているという。長嶋教授によると「世界初」という。
紙のコピーも、何度か繰り返すうちに画質が劣化するように、体細胞クローン技術でも遺伝子に傷のようなものがつくと考えられ、何回までコピーできるのかはよくわかっていない。マウスでは理化学研究所などのグループが「第6世代」を作製している。
また長嶋教授らはベンチャー企業のバイオスと共同で、人間の糖尿病に似た病気を発症するモデル豚の作製にも成功した。生後数日で、糖尿病の症状がみられ、解剖でインスリンを作る膵臓(すいぞう)の細胞に異常も確認できたという。
今回の「第4世代」クローン技術を糖尿病モデル豚に応用すれば、かなり長い間研究を続けることができるという。
長嶋教授は「豚は生理学的にも解剖学的にも人間に近く、実験動物として有望。今後、治療法の効果や安全性の評価に役立つように、さらに精度や効率を高めたい」と話している。
 
2007年8月7日 日本経済新聞
糖尿病研究用のブタ クローンで開発 明大など
明治大学の長嶋比呂志教授とバイオベンチャーのバイオス医科学研究所(神奈川県平塚市)などは六日、クローン技術を使って糖尿病を患う実験用のブタを誕生させた、と発表した。従来手法でも糖尿病モデルブタをつくることはできたが、クローンブタでは遺伝情報が同じブタを何匹も誕生させることができ、新薬開発や治療法開発での利用が期待できる。
ブタの卵子と精子とを顕微授精する際、糖尿病にかかわる変異遺伝子を導入、成長した胎児から体細胞の核を取り出した。この核を別のブタの未受精卵の核と置き換えてクローン胚(はい)をつくり、子宮に戻した。生まれたクローンブタは生後数日から高血糖状態になり、重度の糖尿病の症状を示した。
研究チームは同日、クローン操作を繰り返し四世代目にあたるクローンブタを誕生させることにも成功した。
 
2007年8月7日 毎日新聞
第4世代クローン豚
明治大など成功 糖尿病の個体も
クローン豚の体細胞からクローンを作る反復生産で第4世代のクローン豚を世界で初めて作ることに明治大などの研究チームが成功し6日、発表した。さらに、遺伝子組み換えにより糖尿病のクローン豚を作ることにも成功。豚は臓器の特徴や大きさがヒトに似ており実験に使われる。クローンの反復生産が可能になったことで、糖尿病などの治療法開発や、再生医療の有効性や安全性の評価への利用が期待される。
同大の長嶋比呂志教授(発生工学)らは04年、豚の唾液(だえき)腺の細胞核を、核を抜いた未受精卵に移植してクローン卵子をつくり、雌豚の子宮に入れて出産させた。同じ方法で、このクローン豚から第2世代を、第2世代から第3世代を作り、7月に第4世代を誕生させた。
クローンの反復生産は、染色体の末端にあり細胞の老化の指標とされる「テロメア」の長さが短くなるために不可能とする見方もあった。これまで、マウスでは第6世代のクローンが、大型動物では牛が第2世代まで報告されている。今回のクローン豚の第2、第3世代のテロメアの長さに異常はなかった。
一方、同大とベンチャー企業「バイオス医科学研究所」(神奈川県平塚市)は、ヒトの糖尿病の原因遺伝子を遺伝子組み換えにより豚の未受精卵に導入、成長した胎児の細胞からクローン豚を作成した。胎児からは導入した遺伝子が作るたんぱく質が確認され、生まれた13匹のうち3週間以上生きた3匹は、高血糖など糖尿病の症状を示した。
長嶋教授は「医療研究用の実験動物は、個数を確保しなければならず、クローンによる反復生産が可能になったことで利用価値が高まる」と話している。【須田桃子】
 
2007年4月3日 日経産業新聞
明大と筑波大など 臓器も光るクローンブタ
サンゴ遺伝子組み込む 再生医療に有望
明治大学と筑波大学などの研究チームは、臓器や組織がだいだい色に光るクローンブタを作製することに成功した。サンゴの遺伝子を組み込む。識別可能な状態で肝臓を光らせることもできるようになり、再生医療や異種移植の研究に役立つという。
明大農学部の長嶋比呂志教授、筑波大学の小野寺雅史講師、理研脳科学総合研究センターの宮脇敦史グループディレクターらは、沖縄などに生息するサンゴの一種、ヒラタクサビライシにある遺伝子「huKO」を使った。特定の光をあてるとだいだい色に発光する特徴を持つ。
huKO遺伝子をウイルスに取り込みブタの胎児の細胞に感染させて核に導入した。この細胞の核を取りだして、あらかじめ核を除いておいたブタの卵に入れクローン胚(はい)を作った。
429個のクローン胚を約100個ずつに分け、4匹の雌ブタに移植したところ、すべての豚が妊娠し18匹のクローンブタが生まれた。
クローンブタの脳、心臓、肺、膵臓(すいぞう)、腎臓、軟骨、眼球など24カ所の組織を調べるとすべてだいだい色に発光、細胞レベルで遺伝子が導入されていた。
クラゲの遺伝子を使って緑色に光るクローンブタはすでに開発されている。ただ、肝臓の細胞などは細胞自身が同じ緑色に光る性質があり、識別しづらかった。サンゴ遺伝子だと光る色がだいだいで、移植した組織かどうか見分けがつく。
ブタの臓器・組織の形や機能は人によく似ており、将来的にはドナー不足が深刻な移植の材料になるとも言われている。クローンブタだと、拒絶反応の出にくい臓器や組織を作ることもでき、再生医療にも有望。ブタを光らせる技術は、移植後、臓器や組織がきちんと機能しているか調べる研究に役立つ。
 
2004年8月26日 日経産業新聞
クローン豚量産化へ
明大と生物科学研 生産に成功
明治大学の長嶋比呂志農学部教授と財団法人日本生物科学研究所の共同研究グループは、体細胞クローン豚の量産技術開発に乗り出す。生産したクローン豚は新薬開発の研究用として製薬会社や研究機関向けに2006年度以降に販売を始める計画だ。クローン動物はこれまでに羊やウサギなどでも例があるが、安定して量産する技術の開発が課題となっていた。
 
 
 
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