TeXファイルと統合環境の利用
適切なTeX統合環境を利用する
LaTeXでタイプセットするのはTeX統合環境ソフトウエアを使えば簡単である。
WindowsならTeXWorksを、
MacOSならTeXShopを使おう(MacOS用のTeXWorksもある(^^;)。
自分のパソコンで利用するときも同様。
拡張子 .tex とTeX統合アプリケーションの対応付け
拡張子 .tex が付いたアイコンをダブルクリックするだけでTeX統合アプリケーションを起動できるように、 拡張子とアプリケーションの対応付けを行っておこう。
TeX統合環境ソフトウエアはエディタ機能も持っているので、そのまま文字を入力して編集作業も可能だ。 TeXソースファイルを複数のファイルに分割して(つまり、複数のTeXファイルを合併して)大規模なTeX文書を作成することができる。 複数ファイルを同時に扱えるテキストエディタでそれらを編集・保存し、これらファイルを読み込む指示を記入したTeXファイルをTeX統合環境ソフトウエアを使ってタイプセットするようにして、大規模文書を作成できることがTeXシステムの利点の1つだ。
TeXシステムはGUI(Graphical User Interface)ではなく、本来CUI(Character User Interface)で、処理目的に応じた命令(コマンド)と処理対象ファイル名を指定してターミナルから文字列入力するシステムである(非常に多数のコマンド集合がシステムを構成している)。
たとえば、LaTeXでTeXソースファイルをタイプセットして、PDFファイルを生成するには次のようなコマンドを経由する必要がある(記号 % はプロンプトで、入力する必要はない)。
% platex source.tex % dvipdfmx source.dvi
こうしたコマンドが目的のファイルに有効であるために、実はファイル指定のためのあれこれがあり、一般ユーザには敷居が高くなっている。 これはLaTeXでのタイプセットが難しいわけではなく、GUIで命令を指示を伝えないようにシステムを単純化していることによる結果である。 TeXシステムは無料で配布されていて、GUI的に利用するための統合環境ソフトウエア(integrated environment)が多く開発されてきた(これもほとんどが無料で配布されている)。 Windows/MacOSで利用できる TeXStudioや TeXWorks、MacOSの TeXShop はその代表的ソフトウエアである。 これらを利用するには、インストールされているTeXシステムを統合ソフトウエアの環境設定で指示すればよい。 その設定さえしてあれば、LaTeXのタイプセットはたいへん簡単である。
TeXソースファイル
TeXソースファイル(source file)とは、LaTeXを含むTeXシステムでタイプセットするために入力するプレインテキストファイルである。 TeXソースであるためには、ファイル拡張子 .tex を付けなければならない。
ファイル拡張子を常に表示するように設定しておこう(たいへん重要なことだ)。
- Windows
- [フォルダオプション]/[表示]/で、「タイトルバーに完全なパスを表示する」にチェックを入れ、「登録されている拡張子は表示しない」のチェックを外す。
- MacOS
- Finder/[環境設定]/[詳細]で「すべてのファイル拡張子を表示」にチェックを入れる。
TeXソースファイルのファイル名
TeXソースファイルのファイル名の命名について、以下を注意しておこう。
- ファイル名は半角英数字を使う ファイルに収められる文字の符号化や改行文字はエディタで様々に変換することができるが、ファイル名それ自体の文字コードの取り扱いは微妙である。 複数OSを利用したり、Webでの配布などを考慮すると、ファイル名として半角英数字を使うのが無難である。 また、TeXソースファイルで半角と全角の記号(特にローマ字や記号)を恣意的に混在させるとタイプセットエラーの発見が難しくなるので十分に注意しよう。
- ファイル名に空白文字を使わない
TeXソースファイルをタイプセットするために統合環境ソフトウエアを使う場合でも、TeXシステムを構成するコマンドを起動してファイル名を渡して処理している。 ファイル名に空白(特に半角空白)があると、TeX処理系を誤動作させてしまう可能性があるからだ。 どうしても区切りとして空白的にしたい場合には、アンダーバー ( _ )を使うとよい。 たとえば、time_is_changing.tex のように。
TeXファイルの文字コード
テキストファイルの文字コードは悩ましい問題であるが、取り扱える文字集合の大きさと海外とのやり取りなどの互換性を考えると、現在ではUTF-8は標準的である(事実、WindowsやMacOSでは内部的にはUTF-8で文字処理を行っている。)。 他のファイルでもそうなのだが、テキストファイルの文字コードは今後はUTF-8としよう。
以下で紹介するTeX統合環境ソフトウエア(WindowsならTeXWorksを、MacOSならTeXShopなど)では、エディタ機能も備えており、直接に文字入力してファイル保存してタイプセットすることができる。 TeXWorksやTeXShopの実習室のデフォルト文字コードはUTF-8になっている。
もう一つ悩ましいものに不可視文字である改行コード(改行文字)の選択がある。 決まり事ではないので自分の都合でテキストエディタで改行文字コードを設定してよいのだが、 Windowsではしばしば CR+LF、MacOSではしばしば CR、Linuxではしばしば LF という符号の組み合わせて1つの改行文字とする作法が広く使われてきた(CRはキャリッジリターン、LFはラインフィード)。 改行文字を見つけると、しかるべくアプリケーションでは文字列をそこで改行して表示するのである。 筆者はさまざまな理由から、テキストファイルの改行文字コードを LF に設定している。
TeXタイプセットでの改行の扱いを知る
TeXシステムでは、テキスト内の1文字だけの改行コードはタイプセットに影響せず、明示的に指示しなければならない(HTMLでは、連続する改行文字もブラウザの表示には何の影響も与えない)。 段落改行(字下げする改行)をする場合には1行以上の空行かまたはTeXコマンド \par で指定する。 また強制改行(break)する場合にはコマンド \\ で指定する。 以降のドリル演習で、LaTeX文書での改行の様子をよく観察して、この事情をよく理解しよう。
したがって、改行文字の割り当てをどれにするかは、主に利用するコンピュータ環境に応じて決めてよい(筆者は UTF-8 / LF でテキストを書くようにしている)。 つまり、Windowsを多用するならば CR+LF、MacOSを多用するならば CR、Linuxを利用したりプログラムスクリプトを書くことが多いのであれば LF でというように。 適切なテキストエディタを利用すれば、必要に応じて文字コードや改行コードはいつでも変更することができる。 UTF-8で書かれたテキストを他の小さい文字集合を表す符号化 ShiftJISやISO2022JPなどに変更すると文字落ちする場合があるので注意しよう(UTF-8は他の文字符号化では表示できない文字を表せるためだ)。
タイプセットしてみる
試しに、サンプルファイルTeXファイルの例(UTF-8)をダウンロードしてタイプセットしてみよう。
生成されたPDFファイルが自動的にプレビューされる。 その仕上がりとTeXソースファイルがどのように対応しているかを慎重に吟味するとLaTeX文書がわかってくる。 TeXでは、半角記号 ( % )から行末(改行文字)までがコメント(comment)とみなされ(コメントアウトされてしまうという)、タイプセットには影響しない。 サンプルファイルで、コメントアウトされている行を検討し、コメントを外してみよう( % 記号を取り去る)。
TeXWorksでタイプセット
アプリケーションTeXWorksを起動して、TeXWorksで設定した文字コード(デフォルトはUTF-8)のTeXファイルを開く(読み込む)。
あるいは、直接に新規にLaTeXファイルを作成する(ファイル名+ 拡張子 .tex で保存)。
TeXWorksのウィンドウ左上隅にある[pdfpLaTeX]の左にある緑ボタン?を押してタイプセットする。
タイプセットに成功すると、別ウィンドウに生成されたPDFファイルがプレビューされる。 エラーがあれば、ログ・ウィンドウにエラー内容と発生した箇所の行数が表示される。 該当箇所あるいはそれ以前に遡って、その原因を探りファイル内容を修正し、再度タイプセットボタンを押す。
TeXShopでタイプセット
アプリケーションTeXShopを起動して、TeXShopで設定してある文字コード(実習室ではUTF-8)のTeXファイルを開く(読み込む)。
あるいは、直接に新規にLaTeXファイルを作成する(ファイル名+ 拡張子 .tex で保存)。
TeXShopのウィンドウ左上隅にある[タイプセット]ボタンを押してタイプセットする。
タイプセットに成功すると、別ウィンドウに生成されたPDFファイルがプレビューされる。 エラーがあれば、ログ・ウィンドウにエラー内容と発生した箇所の行数が表示される。 該当箇所あるいはそれ以前に遡って、その原因を探りファイル内容を修正し、再度タイプセットボタンを押す。