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3日目(12/21)

text by 猫耳さん

故宮

 さて京劇ツアーの後編、3日目から始めましょう。この日も相変わらず雪が降り最初に行った天安門(てんあんもん)広場は真っ白でした。ここで戯曲学院の生徒である王さんと合流。天安門(てんあんもん)をくぐって故宮へ向かいます。この雪の中、観光客は結構いました。故宮見学をしながら、ところどころで王さんに京劇のポーズを教えてもらったりして、記念撮影。私は元々不器用なので撮影専門でしたが。いやぁ、京劇俳優さんはやっぱりカッコイイです。王さんは男性なのに女性のポーズも上手。中腰になるような苦しいポーズに耐えながら、皆さん笑顔で写っていました今回は京劇の舞台「暢音閣(ちょうおんかく)」も見学し、そこでもまた京劇ポーズで撮影。殆ど我々の貸切状態でした。王さんはとても優しく、添乗員さんに手袋を貸してあげたり、荷物を持ってあげたり、とても親切なので皆の人気者になり、こっそり携帯で写真を撮る人も・・・(でも本人にバレバレ)。

 バスを待つ間にいたお土産もの屋で、お店のお姉さんにラストエンペラーの(兄弟の?)甥にあたる人がいるので、写真を撮りたい方は一緒にどうぞ、と言われました。その人に書を書いてもらうこともできるとか(これは有料)。私の祖父の従姉妹にあたる人が中国の宮家(というのか?)に嫁にいっているという話しを母から聞いていたので、もしかして遠い遠い遠〜い親戚?と一瞬グラッときました。でも、お土産もの屋の客引きをやっているのを見ると興醒めです。

 故宮の北側に出て次は景山公園(けいざんこうえん)で茶芸をみました。日本語をあやつる女性がお茶を入れてくれて「この中に中国語ができる人いますか」と聞かれると皆一斉に城主様に注目。場主様は中国語で「ちょっとだけ」とおっしゃったのですが、あまりにも初心者の発音がお上手なので私は笑ってしまいました。今回のガイドさんが城主様のことを添乗員さんに「あの人は上海人(しゃんはいじん)か」と聞いていたそうな・・・先生ですから当ったり前なんですけれど、とにかく中国語がお上手で中国人が外国人と気がつかないくらいです。それなのに突然、初心者に成り下がった(?)城主様は本当に茶目っ気たっぷりのお方です。

 その後は老舎茶館(ろうしゃちゃかん)で昼食。残念ながらこの日は京劇をやっていなかったので、食べることに集中しました。

 午後は湖広会館(ここうかいかん)へ。ここで王さんとはお別れし、私たちは地元の人ばかりの劇場で京劇鑑賞。少し城主様に説明していただきましたが、ラブコネディやヤクザ同士の抗争とか・・・でも演目はわかりません。この内容については城主様にお願いしましょう。あ〜今日も遅くなったので続きはまた明日以降にでも。盛り沢山なので書ききれません。後編の後編もお楽しみに。

 そうそう、城主様。清朝(しんちょう)皇女の衣装セットは最初300元(約4500円)だったのに、城主様が値切って下さったから260元になったのでは? 確か購入したお二人は、あまり中国語が話せなかったから、てっきり城主様が値下げ交渉をなさったものだと思っていました。最終的には260元で買っていましたよ(やっ安い!)。彼女たちは年に2回は着ていくところがあるから大丈夫と言っていましたので、ご安心下さいませ。
 


雪の天安門広場


故宮で京劇ワンポイントレッスン
→動画を見る(1:13 225kbpss)


大和殿をバックにはい、ポーズ!
→動画を見る(1:02 )


王さんのワンポイントレッスン2
→動画を見る(1:44)


故宮内にある劇場、暢音閣
→動画を見る(1:49)

注 by加藤先生

>戯曲学院の生徒である王さん
 四年生の王紅涛(ワン ホンタオ)さんです。専門は武浄(顔にくまどりを塗って立ち回りを演ずる役柄)で、石山雄太(いしやまゆうた)さんと戯曲学院付属中学校で同期生だった人です(中国語で「中学」はハイスクールの意。高校も含む)。
 王さんは前日の学内公演では「鐘馗嫁妹(しょうきかめい)」の鐘馗を演じたのですが、残念ながら珠市口(チューシーコウ)の劇装店の商店街にツアーの皆さんをお連れするため、王さんが舞台に出る前に学校をあとにしてしまいました。当初の私の心づもりでは、まず20日の学内公演で鐘馗を演ずる王さんをツアーの皆さんに見ていただき、翌21日、平服姿の王さんに故宮で鐘馗のフリを教わったりして盛り上がるつもりだったのですが、学内公演の演目の上演時間が変わったため、王さんの晴れ姿をみなさんにお見せすることができませんでした。王さんごめんネ!
 王紅涛(ワン ホンタオ)さんは16歳のとき、レスリー・チャン主演の映画「さらば、わが愛」にも、京劇の師匠に科班(かはん)(京劇俳優養成塾兼児童劇団)でしごかれる生徒の一人として出演しました。師匠が死ぬ前後の場面で、後ろのほうに出てます。ビデオをお持ちの方はチェックしてみてくださいね。といっても、王さんの顔をしらない人はチェックのしようがないですけど。
 故宮から老舎茶館(ろうしゃちゃかん)へと移動するバスのなかで、王さんはあの映画の撮影のときの思い出とか、京劇若手俳優としての本音トークなどを語ってくださいました。

>中腰になるような苦しいポーズに耐えながら、皆さん笑顔で写っていました。
 このほか、雪のなかで、王さんに京劇のチョコチョコ歩き「円場(ユアンチャン)」とか京劇の手の動かし方「雲手(ユンショウ)」も教えていただきました。はたから見たら、あやしげな新興宗教の団体みたいに見えてしまってたかも(^^;;;

>今回は京劇の舞台「暢音閣(ちょうおんかく)」も見学し
 劉暁慶とレオン・カーフェイが主演した映画「西太后(せいたいごう)」で、皇帝が熱河(ねっか)に蒙塵(もうじん)し、避暑山荘で「安天会」(孫悟空)を見る場面がありますが、あの劇場の場面は熱河(ねっか)ではなく実はこの「暢音閣(ちょうおんかく)」で撮影したものでした。「あそこにレオン・カーフェイが、あそこに劉暁慶がすわってたんですよ」と指さしたら、ツアー参加者の一人でレオン・カーフェイのファンが興奮しておられました。

>もしかして遠い遠い遠〜い親戚?
 おお、猫耳さんのノーブルなご容貌からそれとなく察してはおりましたが、やはり猫耳さんは高貴な血筋をお引きだったのですね。

>でも、お土産もの屋の客引きをやっているのを見ると
 チベットのラサに行くと、新中国になってポタラ宮から追われたチベットの高僧や貴族の子孫が、管理人や掃除夫としてポタラ宮で働いてるらしいです。故宮を追われた満州人の皇族の子孫が故宮のおみやげ屋さんにつとめているのも、父祖ゆかりの場所で働きたいという気持ちがあるのかもしれませんね。

>日本語をあやつる女性がお茶を入れてくれて
 彼女は、私たちと同行してくれた王紅涛(ワン ホンタオ)さんも日本人だと思いこんでいました。彼女が日本語で王さんに「湯飲みはこう持ってください」話しかけても、王さんは日本語がわからずポカンとしてました。横で見ていて面白かったです。

>午後は湖広会館(ここうかいかん)へ
 以前NHKで放送されたドキュメンタリー番組「京劇最後の女形(おんながた)・虞美人(ぐびじん)よ永遠に舞え」でも出てきた有名な劇場です。夜は外人観光客向けの演目が多いのですが、昼間は中国人向けの演目を上演してます。この日は風雷京劇団による「上天台(じょうてんだい)」「紅娘(こうじょう)」「嘉興府(かこうふ)」の三本でした。  この劇場は緞帳や幕のない純中国式舞台なので、検場人が机や椅子を出し入れするのが丸見えで面白いです。また「嘉興府(かこうふ)」の立ち回りも、純中国式舞台で見ると客席に近いせいで非常な迫力がありました。

>そうそう、城主様。清朝(しんちょう)皇女の衣装セットは最初300元(約4500円)だったのに、城主様が値切って下さったから260元になったのでは?
 すみません、たぶん猫耳さんがお書きになった金額のほうが正しいです。  私が値切った、というより、私は購入したお二人に「こういうところでは値切るものなんですよ」とアドバイスしました。もっとも彼女たちは二人とも最初から目が「買うっきゃない!」モードになっていたため、お店の人も260元までしか負けてくれませんでした。もちろん、それでも日本で買うよりもずっと安いですけど。

全聚徳


正乙祠の票房の様子


北京に来たらこれを食べないわけにはいかない、北京ダック


熱弁を振るう辛先生。隣はカンヌ特別審査員賞受賞の廖琴さん
→動画を見る(1:42)


こうすればかわいく見えます
→動画を見る(0:51)

 さて、前回は湖広会館(ここうかいかん)で京劇を見たところまででしたっけ。「嘉興府(かこうふ)」という演目はちょっと珍しい衣装というか、片肌脱いだ格好での登場に驚きました。また左右対称でないレンプもあまり観たことがありません(かなり恐いです。ああいう方と楽屋ですれ違いたくありません)。城主様、この演目の簡単なあらすじをご紹介いただけると嬉しいです。舞台の上をところ狭しと暴れまわり、城主様がおっしゃる通り、迫力に満ちていました。

 湖広会館(ここうかいかん)を後にして、次は正乙祠(せいおつし)の票房(ひょうぼう)へ。2階にあがり、戯楼(ぎろう)をひとまわり。なかなかできないことで面白い経験をしました。階下では唱のうまい女性が唱っていましたが、あとで聞いたらプロだとか・・・どうりで上手な筈です。最後のほんの少しの時間だけでしたが、票房(ひょうぼう)の雰囲気を味わうことができました。票房(ひょうぼう)はなんとなく気後れして行けなかったため、連れて行っていただいて本当によかったと思います。正乙祠(せいおつし)を出てからは歩いて瑠璃廠(るりしょう)へ行ったのですが、もう辺りは暗くなり、雪で道も凍っていたため、ツルツル滑ります。そこで城主様があみ出した(?)凍った道の歩き方とは・・・京劇で女性が歩く時のチョコチョコ歩き。円場(ユアンチャン)というのでしょうか、これが滑ることなく凍った道もスゴイ勢いで進み、早いこと早いこと!城主様は最高です。

 瑠璃廠(るりしょう)でお買い物タイムをとった後、北京ダックの夕食、ツアー最後の晩餐(ばんさん)です。末永(すえなが)さんという日本人女性、旦那様の辛(しん)さん(京劇学校の先生)と供に、すっごく綺麗な女優さんが2人もいらっしゃったので、宴席は華やぎました。皆で自己紹介をしながら楽しく食事。城主様は自己紹介を同時通訳して下さいましたが、殆ど同時どころか、次に言うことを想像して未来通訳までなさっていました。辛(しん)さんが京劇は基礎が大事だと熱弁をふるっていましたが、本当にそう思います。若い俳優さんたちは基礎を嫌う傾向にあるとか。その中でも基礎を一生懸命やってきた人が伸びて、成功するのでしょう。京劇だけでなく何事においてもそうかもしれません。


注 by加藤先生

>「嘉興府(かこうふ)」という演目
 『緑牡丹全伝(りょくぼたんぜんでん)』29回ー33回にもとづく芝居です。唐(とう)の時代の初めのはなし。王倫(おうりん)という名前のたいへんな悪党がいました。王倫(おうりん)の父親は浙江省(せっこうしょう)嘉興府(かこうふ)(府は行政単位の名前)の知事となったので、王倫(おうりん)はそれを傘にきてますます横暴になりました。正義の味方・鮑賜安(ほうしあん)(白ひげ・くまどり・片肌脱ぎのあの老人)は王倫(おうりん)を暗殺するため、自分の娘の夫である濮天鵬たちを、夜、王倫(おうりん)の屋敷にしのびこませます。濮天鵬たちは逆に捕まってしまい、処刑されることになります。処刑の寸前、鮑賜安(ほうしあん)たちが救出にかけつけ、大立ち回りの末、王倫(おうりん)たち悪党一味を倒して、めでたしめでたしーーという芝居です。
 来日公演ではあまりお目にかからない演目ですが、中国では昔からよく上演されてきました。

>また左右対称でないレンプ
 京劇では、悪党の一味とか、歴史的に極悪人のレッテルを貼られた人物は「筆誅(ひっちゅう)」として左右非対称のくまどりを描かれてしまうことがあります。

>次は正乙祠(せいおつし)の票房(ひょうぼう)へ。
 湖広会館(ここうかいかん)での(夜の)京劇観劇が外国人むけの観光コースに組み入れらているのとくらべると、正乙祠(せいおつし)はロケーションが良いのに外国人観光客にはあまり知られていませんでした。しかし昨年、NHKのドキュメンタリー「アジア古都物語」第一回「北京」で正乙祠(せいおつし)が取り上げられてから、日本人観光客にもそれなりに知られるようになりました。
 ちなみに湖広会館(ここうかいかん)でも、日曜日に票房(ひょうぼう)があります。

>票房(ひょうぼう)はなんとなく気後れして行けなかったため、
 もしも夏の夕方だったら、瑠璃廠(るりしょう)の街角の露天の票房(ひょうぼう)とか、天壇公園(てんだんこうえん)の露天の票房(ひょうぼう)とかにも行くことができたのですが、ちょっと残念でした。

>これが滑ることなく凍った道もスゴイ勢いで進み、早いこと早いこと!
 2008年の北京オリンピックでは、円場(ユアンチャン)の走りかたによる氷上競走が公開競技になる、ーーという噂はもちろんありませんが、あの走り方をマスターしていると凍結した路面上でも転倒することなく走れるので便利です(ただし良い子はマネしないように)。
 今回のツアー参加者のひとりYさん(「アイラブニューヨーク」の紙バッグを常に携帯していた笑い上戸のかた)は、あの氷のうえでの円場(ユアンチャン)の歩きかたをたいそう気に入り、「自分がいま通っている大学のキャンパスで絶対に流行らせたい」と同学のIさんと北京空港の待合いロビーで誓っておられました(実話)。もしかすると、東京都内の某大学のキャンパスで来年、あの走り方が流行するかもしれません。

>末永(すえなが)さんという日本人女性、旦那様の辛(しん)さん(京劇学校の先生)と供に、
 末永(すえなが)麻子(あさこ)さん、通称「まーず」さんのホームページ「戯曲菜単」 http://moyongmazi.hp.infoseek.co.jp/index.html へは、弊サイトのリンクコーナーからもリンクを張ってあります。旦那様の辛(しん)雨歌(うか)先生は「覇王(はおう)」というハンドル名? で上掲のホームページに顔写真入りで紹介されています。

>すっごく綺麗な女優さんが2人もいらっしゃったので、
 呂慧敏(りょけいびん)さんと廖琴(りょうきん)さんです。呂さんの専門は「花旦(かたん)」で、売水(ばいすい)の侍女を演じたお写真を見せてくださいました。廖琴(りょうきん)さんの専門は「武旦(ぶたん)」で、白蛇伝の白素貞を演じたお写真を見せてくださいました。
 廖琴(りょうきん)さんは中国西南部の苗族(ミャオぞく)の出身の京劇女優さんで、京劇の舞台にも立ちますが、韓国資本による中国映画『Cry Woman(哭婦人)』に主演しました。この映画は日本未公開ですが、2002年のカンヌ映画祭に「ある視点」からの作品として出品され、みごと審査員特別賞を受賞しました。近い将来、『Cry Woman』を日本の映画館なりレンタルビデオ店で見かけたら、主演女優・廖琴(りょうきん)さんをチェックしてください。

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