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2日目(12/20)

text by 猫耳さん

戯曲学院

 翌日は中国戯曲学院を訪問。いくつかの授業を見学しました。韓国からの留学生も混じっている授業もありました。私が一番印象に残っているのは80歳になる女形(おんながた)の先生が女生徒に教えていたこと。みるからに女形とわかる小柄な上品なお爺様はすっごくステキな方です。優しそうで、時には厳しい表情で自分のもっているものを若い世代に伝えていくという雰囲気がとてもよく、私もああいう方なら習いたいと思ってしまいました。なんと私が以前お会いしたことのある王金(ワンジン)[王路(ルー)]先生の同級生だとか・・・ああ、北京にはなんて素晴らしい京劇俳優さんたちがいらっしゃるのでしょう。齢80にして現役! 羨ましいです。カッコよすぎる!う〜む、人間は定年してからが勝負だな、なんてことまで考えたりしました。

 お昼は学食で食事。だいたい5元(75円くらい)で食べられます。学食に刀削麺(ダオシャオミェン)があったのには驚きました。しかも注文すると本当に削って鍋の中にいれて茹でます(そうじゃなきゃ刀削麺(ダオシャオミェン)ではないだろうが)。観光客用のパフォーマンスでしか見られないと思っていたら、まさかここでみられるとは・・・感動!

 食後は学内の本屋さんで買い物。VCDなどが安く買えるのでついつい買い込みました。京劇ファン垂涎の本屋です。そして期末試験でもある学生が行なう舞台を見学したのですが、その前に楽屋訪問。学生さんたちの緊張した様子に頑張れ!と心の中で声をかけました。舞台はやはり学生さんだけあって新鮮な感じで、イッパイイッパイの人もあれば、余裕のある人も。楽隊が間違ったり微笑ましい場面も時にはありました。

 


2年生の授業風景


院生の授業の様子。河南省の地方劇の学生さんだそうです


こんなにちっちゃいレンゲ
→食堂の動画(1:15 225kbps)

注 by 加藤先生

>80歳になる女形の先生
 お名前は李金鴻(リー ジンホン)先生です。猫耳さんがお書きになっているとおり、王金(ワンジン)[王路(ルー)]先生と中華戯曲専科学校(拙著『京劇』208頁、322頁参照)での同期生だったので「金」の字を共有しています。故・李玉芝(りぎょくし)さんの先輩でもあります。
 授業参観のときは、三人の若い女生徒に尼僧の基本演技を教えていらっしゃいました。小柄なかたですが、80歳には見えず、60代に見えました。女生徒たちに、目の演技や微笑のタイミングをみっちり御指導なさっていましたが、温和で愛想のよいかたで、その後、私どもとの記念撮影に快く応じてくださったほか、立ち話でしたがいろいろ歓談しました。

>だいたい5元(75円くらい)で食べられます。
 5元の高級?メニューもありましたが、私が注文した刀削麺(ダオシャオミェン)は3元(日本円で約45円)でした。刀削麺(ダオシャオミェン)も拉麺(ラーメン)も、注文を受けてから、目のまえで料理人が麺のカタマリから作ってくれます。「学生食堂」とはあなどれぬ、本格的な手打ち麺でした。麺のつゆは、肉味噌ダレとトマト卵スープのどちらかを選べます。
 中国戯曲学院の先生は「あの食堂、味はイマイチだったでしょ?」と言ってましたが、私はおいしくいただきました。

>期末試験でもある学生が行なう舞台
 中国戯曲学院四年生(大学四年生)による舞台でした。俳優も楽隊も学生さんで、観客は先生や同級生・後輩、そして私達でした。沈健瑾(しん けんきん)さん(李光(りこう)先生の夫人)も来ていて、 開演前、舞台上で楽屋から出て来た私達と挨拶(あいさつ)をし、会食に李光(りこう)さんが来れなくなったお詫びを言われていました。演目は「春閨夢(しゅんけいむ)」「秦瓊観陣(しんけいかんじん)」「売水(ばいすい)」「淮河営(わいがえい)」「鐘馗嫁妹(しょうきかめい)」(鐘妹さんのHNの由来となった芝居)など8演目で、一般の劇場で観客に見せる舞台と全く同じように上演しました。
 
・『春閨夢(しゅんけいむ)』あらすじ
 後漢末、『三国志』にも出てくる公孫?(こうそんさん)が劉虞(りゅうぐ)と戦争したときの話。若い女性・張氏は、新婚半月で夫を兵隊にとられたが、夫は戦死して遺骨さえ帰ってこなかった。張氏は夢のなかで悲惨な戦場をさまよい、死んだ夫と束の間の再会を果たす。拙著『京劇』180頁参照。
・『秦瓊観陣(しんけいかんじん)』あらすじ
 隋(ずい)の時代の末の争乱期。英雄・秦瓊は、悪い権力者に憎まれ、武術試合をさせられることになる。実は武術の試合にことよせて秦瓊を殺すのが、悪い権力者の目的だった。試合の前日の夕方、秦瓊は馬に乗り、親友の王周といっしょに翌日の試合会場を見て回る。王周は秦瓊に、明日は試合とは名ばかりで、実は秦瓊を殺すための陰謀なのだよ、と打ち明ける。秦瓊は悩む。そのとき、秦瓊の顔見知りの山賊が物売りに変装してあらわれ、翌日の試合で秦瓊を救出することをこっそり暗示する。
・『売水(ばいすい)』あらすじ
 ある立派なお屋敷に、お嬢様と、お嬢様にお仕えする侍女が住んでいた。お嬢様には、立派な婚約者がいたが、婚約者の家がおちぶれてしまったために、お嬢様の父親は、婚約を破棄してしまった。お嬢様の元婚約者は、家がおちぶれたため、今は町を歩きまわり水を売ってその日ぐらしをしていた。
 お嬢様につかえる侍女は、なんとか二人のよりをもどしてあげようと、あれこれ手を考えた。ある日、お嬢様を花園に連れ出し、水売りとなった元婚約者に引き合わせようとした。だが、元婚約者はなかなか来ない。侍女は、花にちなむ言葉を歌いつつ時間をかせぐのだった。http://home.hiroshima-u.ac.jp/cato/KGZms.html に詳しいあらすじを載せてあります。
・『淮河営(わいがえい)』あらすじ
 前漢の高祖・劉邦(りゅうほう)が死んだあと、彼の妻の呂后(りょこう)が政治を牛耳り、皇帝の地位が呂氏に乗っとられそうになったころの話。淮王(わいおう)の劉禅(りゅうぜん)(たまたま『三国志』の劉備の息子と同名だが、別人)は、劉邦(りゅうほう)と呂后(りょこう)のあいだにできた息子で、大軍をひきいる実力者だった。彼は、呂后(りょこう)を自分の実の母親だと信じていたので、呂氏が劉氏から天下を奪うつもりなら、それでもよい、と思っていた。漢の忠臣たちは呂氏の専横を憎み、劉禅(りゅうぜん)のところに行き、衝撃の真相を告げた。「淮王(わいおう)さま、実はあなたは呂后(りょこう)の子供ではありません。あなたの本当の生みの親は趙姫(ちょうき)という人です。趙姫(ちょうき)は呂后(りょこう)に惨殺されたのですよ」と。が、劉禅(りゅうぜん)は、自分と呂氏一族の仲を裂くため大臣たちがウソを言っているのだと思いこんで激怒し、かえって忠臣たちを逮捕してしまう。正義の人物である田子春は、劉禅(りゅうぜん)のもとに行き、趙姫(ちょうき)が呂后(りょこう)によって殺された当日のようすを生々しく訴え、劉禅(りゅうぜん)が真実に目覚めるよう決死の説得を試みる。−−名優・馬連良(ばれんりょう)が得意とした演目の一つ。

 
 先生たちに見つめられて緊張して足がふるえてる人、服のすそがひっかかってめくれたまま演技しつづけて見兼ねた先生に注意された人、など、内部上演ならではの光景もありましたが、さすがは中国戯曲学院。全体のレベルは高く、学生さんたちの演技も真剣そのもので、迫力がありました。
 ただ、次の目的地があるため、最後まで見ることができず、「淮河営(わいがえい)」が終わった段階で抜け出ねばならなかったのは残念でした。

石山さん

 学校を後にして京劇に衣装やグッズを売っているお店に案内していただき、狭いお店の中で値切ったりしながら楽しくお買い物。夕食に本当は李(り)光(こう)先生がいらっしゃる予定だったのですが、袁世海(えんせいかい)さんの件があったため、いらっしゃることができず本当に残念!と思っていたらナント石山雄太(いしやまゆうた)さんが登場。きゃ〜と女性軍は(いえ、男性も)大喜びです。お正月の番組取りなどでお忙しい中わざわざいらしていただきました。これも城主様の顔の広さゆえ、ううっ来てよかったと思いました。石山さんはとても謙虚な感じの方です。にこやかに対応して下さって本当に感激です。これからもご活躍を期待します。

 2日目の締めは王府井(ワンフーチン)の散策。屋台を覗いたり、昔の北京を模した一角で買い物をしたり・・・充実した一日でした。

 


石山さんを囲んで記念撮影



石山さんと加藤先生の2ショット

注 by 加藤先生

>京劇に衣装やグッズを売っているお店
 珠市口(チューシーコウ)の劇装店街です。京劇の服だけでなく、テレビドラマの時代劇で使う衣装や鎧・武具とか、ヤンコ踊りの太鼓やセンス、各種お化粧品などさまざまなグッズを売っています。
 私たちのメンバーのなかで、テレビの時代劇で使う(京劇でもまれに使います)清朝(しんちょう)の皇女の衣装(頭・服・くつ)一セット320元ナリ、を購入した女性が2人もいました。他人事ながら、彼女たちは日本のどこであの服を着るのでしょう? (^^;;;

>ナント石山雄太(いしやまゆうた)さんが登場
 石山さんは、連日中国京劇院で正月番組収録のための舞台稽古で、翌朝は天津(てんしん)のテレビ局に番組収録のため行かねばならぬというハードスケジュールのあいだをぬって、特別に来てくださいました。感謝!
 今回のメンバーひとりであるYさん(男性)は、熱心な中国語学習者です。十年以上前、NHKテレビ中国語講座(山下輝彦(やましたてるひこ)先生)のなかのドラマ「東京の屋根の下」に石山さんが出演したとき、どんな役でどんなセリフを喋ったのかまでYさんは正確に記憶していたので、石山さんも私もビックリしました。また今年の来日公演のとき石山さんにファン・レターを書いて送った、というIさん(女性)も、本人に会えて感激していました。  

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