芳村弘道・西川照子・津崎史『対談 私の白川静』(エディシオン・アルシーヴ 2018/2/20)第五章より引用。
先生は「白川学」について、こうおっしゃいました。 「学問というものは、誰々の、という固有名詞が付いている間はまだ本物でないの。『白川静』が消えて初めて本物になる。そうやね、百年、三世代経て、僕の仕事が残っていたら、その時はね、もう『白川静』はいないの。それでね、『白川静』って女の人? という具合にね、男か女か、どこで生まれたんか、いつ死んだんか、なあんにも、その個人については知られてへんというのが一番ええの」。 素敵な言葉です。それでもなお、私たちは「白川学」を知りたくて、「白川静という人」を追いかけます。先生の俊足に追い付くことは出来ないけれど、私たちも走ります。 |
以下、http://www.ritsumei.ac.jp/profile/pressrelease_detail/?id=167 より引用
2019/04/01 白川文字学で読み解く新元号「令和」“令”は神のおつげを聞いている姿から。“和”は軍門のしるしの形と誓いを収めた器から。 立命館大学広報課 本日、2019 年5 月1 日から施行される新元号「令和」が公表されました。この「令和」に込められた意味を、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所は、故・白川静名誉教授(以下、白川静博士)が築いた「白川文字学」にもとづき、「すばらしく、なごやかな時代」と読み解きました。 それぞれの文字の成り立ちと意味は、プレスリリース全文をご覧ください。 (プレスリリースのPDFファイル) |
“令” “令”は、象形で神官が冠をつけてひざまずいて神意を聞いている形です。古くは「令・命」二つの意味に用いています。元々は
「神のおつげ」、そこから「おふれ」「いましめ、おしえ」「よい、ただしい、めでたい」「させる、いいつける」等の意味を表すようになり
ました。 ※「令」の書き方について 明朝体 ゴシック体 教科書体 菅官房長官が掲げていた墨書の文字は、明朝体、ゴシック体、教科書体のいずれの活字のデザインとも違っていました。文化庁「常用漢字の字形・字体に関する指針(報告)」に示された通り、「手書きの文字にはさまざまな書き表し方がある」というメッセージがこめられているのではないでしょうか。 “和” “和”は、会意で「禾」+「口」で表されます。「禾」は軍門(陣営の門)のしるしの形であり、「口」は「誓いを収めた器」とされていま す。軍門の前で講和の誓いを行うと、平和になります。また別字に「龢」があり、「龠(やく)」は笛の象形で、「調和する」意味があります。 |
参考 YouTube 津崎史『白川静と万葉集』 前編 https://youtu.be/i-mmT0SSmek 後編 https://youtu.be/rISWbdMyv-U 白川静先生は、本当は日本の古代の文化を研究したかった。『万葉集』をやるために比較として『詩経』を選び、『詩経』をやるために同時資料として漢字の研究にとりくんだ。漢字で30年かかり、民俗学や神話学にも広がり、最後に本懐である『万葉集』に戻ってきた。若き日の白川静先生が『万葉集』にひかれた理由は、福井に生まれた幕末の歌人・橘曙覧(たちばなあけみ)の「独楽吟」の影響である。 「たのしみは まれに魚烹(に)て 児(こ)等(ら)皆が うましうましと いひて食(く)ふ時」「たのしみは そぞろ読みゆく 書(ふみ)の中(うち)に 我とひとしき 人をみし時」「たのしみは 数(かず)ある書(ふみ)を 辛(から)くして うつし竟(を)へつつ とぢて見るとき」 |