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原点回帰・論語の読み方

最初の公開2019-3-5 最新の更新2019-3-5-

2千5百年前の孔子の言行録『論語』は、古典の中の古典です。「学びて時にこれを習う。また、よろこばしからずや」「徳は孤ならず。必ず隣あり」等、孔子が残した言葉は、人生を考え、自分が生まれた時代を生きる勇気を与えてくれます。東洋のみならず、世界各国の言葉に翻訳されて広く読まれているゆえんです。
 現代の私たちが読む『論語』本は、近代的な訳解書形式です。ビブリオグラフィーの視点から言えば、今から2千年以上前の最初の『論語』は、現代の本とも江戸時代の本ともかけ離れたものでした。 『論語』は孔子の著作ではありません。孔子の死後、弟子や孫弟子が記憶していた言葉をもとに、長い歳月をかけて成立した世代累積型集団著作です。紙が発明されるよりずっと昔、古代の『論語』は木簡に手書きした巻物でした。当時の漢字は、西洋のアルファベットのように丸みを帯びた古代文字でした。訳注はおろか、句読点すらまだありません。漢字がびっしりと並んでいるだけでした。
 古代人の『論語』の読み方も、現代人とは全然違いました。一語一句の理解はあとにして、まず素読し、筆写し、ひたすら暗記しました。古代人はおおらかで、謙虚でした。聖人の真意は、音読の音声や文字そのものの中に隠れているのだから、自分が理解できなくても後世に正確に伝えればよい、と信じていたのです。『論語』の原点にあるこのような読書のコンセプトは、仏典や「聖書」など古代の聖典とも共通するものです。
 21世紀を生きる私たちにとって、『論語』の訳解書は有用です。が、史上最初の『論語』がどんな書物であったかを知り、古代人の視点を理解することも大事です。本講座では、古代文字で復元した「原点版『論語』」を教材として、現代と古代の両方の視点から『論語』の名言を熟読玩味します。

★非完結書物から自己完結書物へ
弁士の存在を前提とする無声映画から、トーキーへ。書物の進化も同様。

★筆写材料の変化と書物の進化
 亀甲獣骨文字(甲骨文字)、金文、石鼓文、木簡・竹簡などの硬い材料。絹や紙などの軟らかい材料。
★漢字に見る書物の変遷の名残り
冊(サツ、サク)木簡や竹簡を革紐などでつなげたもの。本来はサク。一枚だけなら短冊(タンザク)。同音「策」も使った。
典(テン、のり)冊に丌(き)を加えたもの。
編(ヘン、あむ) 冊を綴じたもの。
版(ハン・バン) 木簡。版画の版。
籍(セキ、ふみ) 竹簡の文書を重ねておくこと
巻(カン・ケン、まき)書籍を保管するため、ぐるぐる巻いたもの。

★素読、侍読(侍講)、講釈、会読、訳読

そどく【素読】( 名 ) スル 意味を考えないで,文字だけを声を出して読むこと。そよみ。すよみ。 「論語を−する」(大辞林 第三版の解説)

じどく【侍読】〔「じとう」とも〕「 侍講(じこう) 」に同じ。 「春水は浅野家の世子−として屢(しばしば)江戸に往来した/伊沢蘭軒 鷗外」(大辞林 第三版の解説)

じこう【侍講】@君主に侍して学問を講義すること。また,その人。侍読。A明治時代,天皇・東宮に書を講じた官職。(大辞林 第三版の解説)

【侍講】 〇隨師聽講,研讀學業。後漢書.卷六十四.盧植傳:「植侍講積年,未嘗轉眄,融以是敬之。」 〇職官名。為帝王講授文史經書,漢時雖有侍講之稱,但未以為官名。唐始置侍講學士,宋兼置侍講。元、明、清三朝,翰林院倶有侍講學士及侍講。(『漢典』http://www.zdic.net/c/d/13b/300728.htm 2016-2-4閲覧)

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