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三国志の人間観
――古典からサブカルチャーまで――

http://www.geocities.jp/cato1963/20131116.html
最初の公開2013-11-15 最新の更新 2014-2-10


【内容】 「三国志」を一度も読んだことのない人も、この古典作品の本質を理解できるよう、豊富な映像資料を使いつつ、作品の根底にある中国的な人間観について解説する。今から1800年前の史実を土台にした三国志の物語は、日本でも絶大な人気を博してきた。日本人は漢文としての三国志のほかにも、江戸時代は歌舞伎や浮世絵で、昭和世代は小説で、平成世代はパソコンのシミュレーションゲームで、時代とともに独自の三国志文化を創ってきた。一見、荒唐無稽な現代日本における「三国志」のアレンジも、古典としての「三国志」のポテンシャリティーの発揚に他ならない。
 古典としての「三国志」は、日本の古典には該当ジャンルが存在しない「人間観文学」である。「天の時、地の利、人の和」と「知、情、意」という二つをキーワードに、中国の人間観の本質を、わかりやすく論じる。

三国志は、すべての「次元」において面白い。他の文芸作品(例えば『論語』とか『西遊記』など)は、必ずしもそうではない。
「歴史シミュレーションゲーム」にできる「歴史物語」は、意外と少ない。
0次元点。禅の悟り、等。
1次元線。言語の線状性(linearity)。文字文芸、ラジオ劇、等。
2次元(2D)平面。絵画、写真、映画、漫画、動画、等。
2.5次元(2.5D)物体の裏側や内部に関する情報がないこと。 サブカルの俗語ではフィギュア、アイドル声優、コスプレ、など。舞台演劇やSLG(シミュレーションゲーム)の本質も2.5D。
3次元(3D)立体、現実界。史跡、彫刻、茶道、等。
4次元科学的には「ミンコフスキー時空(時間を第4の次元とする)」「空間が4次元あるもの」。俗語では「異次元」「電波系」等。
cf.PDFファイル「
京劇のコンセプトの特異性 ―歴史と「次元」の視点から― 」2013.3.7
http://www.youtube.com/watch?v=3eANm5IqDMg&feature=share&list=PL6QLFvIY3e-n0EnGjE8kL9BTngsOSZwA9

神戸市長田区の人々が、復興するための絆として選んだのは、
「三国志」だった。なぜ? ここに「三国志」の本質を考えるヒントがある。
京劇の諸葛孔明
神戸市長田区の商店街のコスプレ

魏は天の時、呉は地の利、蜀は人の和。
中国語「人際関係」「智謀学」
(1)「三国志」の乱世
 184年 黄巾の乱。
 208年 赤壁の戦い。
 220年 後漢、滅亡。三国時代の開始。
 234年 蜀の諸葛孔明、五丈原で陣没。
 239年 邪馬台国の女王・卑弥呼が、魏に遣使。
 280年 西晋が中国を再統一。

 参考:中国の王朝  (夏)、殷、西周、春秋、戦国、秦〜前漢〜後漢〜三国、・・・

(2)三つの「三国志」
漢文の正史『三国志』陳寿(233年-297年)の著。いわゆる「魏志倭人伝」も含む。
古典小説『三国志演義』14世紀ごろ成立か。作者は羅貫中あるいは施耐庵とも。
アレンジ系(自由訳、翻案)吉川英治『三国志』、横山光輝の漫画『三国志』など。


三国志,京劇,曹操,三国志フェス (3)ことわざや故事成語の宝庫


(4)三国志の魅力
         さまざまな男たち・・・「士」「侠」「漢」
諸葛孔明関羽
雅俗共賞劉備趙雲
張飛


階層人物の例必要な知恵
リーダー劉備(玄徳、昭烈帝)大戦略(暗黙知、結晶性知能、知性的)
スタッフ諸葛亮(孔明)戦略(形式知、流動性知能、知能的)
ライン関羽、張飛戦術
フロント趙雲戦闘術
フリー簡雍技術、ユーモア、その他

(5)中国古典の人材観・・・「三国志」の周辺

〇中国語の諺「人挪活、樹挪死」(人は動いてこそ生きる、木は動くと死ぬ) cf.石の上にも三年
 「三十年河東、三十年河西」cf.上り坂、下り坂、「まさか」
 「少不読水滸、老不読三国」「男不読金瓶、女不読西廂、老不読三国、少不読水滸」
 「劉備的江山是哭出来的」cf.判官贔屓、「説曹操、曹操就到」cf.噂をすれば影・・・

○インテリジェント(知能的) と インテレクチュアル(知性的)。
『老子』「大巧如拙、大弁如訥」。 大巧は拙なるが如く、大弁は訥なるが如し。

○流動性知能 と 結晶性知能
『論語』雍也第六「子曰、知者楽水、仁者楽山。 知者動、仁者静。 知者楽、仁者寿」。
 子曰く「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は寿(いのちなが)し」と。
     →水を楽しむ=流動性知能。山を楽しむ=結晶性知能。

〇『論語』為政第二「子曰、君子不器」。
     子曰く「君子は器(うつわ)ならず」と。

〇伊尹(いいん)の土功──『淮南子』(えなんじ)斉俗訓
 故伊尹之興土功也、修脛者使之蹠钁、強脊者使之負土、眇者使之准、傴者使之塗、各有所宜、而人性齊矣。胡人便於馬、越人便於舟、異形殊類、易事而悖、失處而賤、得勢而貴。聖人總而用之、其數一也。
 故に伊尹の土功を興すや、修脛(しゅうけい)なる者には之をして钁(くわ)を蹠(ふ)ましめ、強脊(きょうせき)なる者には之をして土を負はしめ、眇者(びょうしゃ)には之をして准せしめ、傴者(うしゃ)には之をして塗らしむ。各(おのおの)宜しき所有りて、人の性は斉(ひと)し。胡人は馬に便に、越人は舟に便なり。形を異にし類を殊にするもの、事を易(か)ふれば而ち悖(もと)り、処を失へば而ち賤しく、勢を得れば而ち貴し。聖人は総(す)べて之を用ふ、其の数は一なり。


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