作品紹介

最新刊から順に、代表的な小説作品を紹介します。

SIP 超知能警察(2021 双葉社)
2023年大藪春彦賞候補作!
なんと前作から10年もの間が空いてしまいました。世間的にはこういうの「再デビュー」というのでしょうか。畠中恵(『しゃばけ』)さんからご紹介いただいた出版社の担当者から「警察小説を」との注文を受けて七転八倒しましたが、最後には私・山之口洋しか書けないSFテイストの近未来警察小説に仕上がりました。英国執事風のAI刑事(?)・ジーヴスも活躍します。
双葉社による紹介:戦争と犯罪の境界がなくなった近未来、AI捜査を武器に、敵対国家、テロリスト、犯罪者を取り締まる「超知能警察」が誕生した! 2029年、科警研で情報科学を研究する逆神は、三つの異なる事件の検証を命じられる。だがそれは、東アジアの安全保障をも脅かす危機の端緒にすぎなかった。現役AI研究者の著者が放つ、近未来ハイテク警察小説。
暴走ボーソー大学 (2011 徳間書店)
房総の下流大学でのびのびしすぎた青春を謳歌する学生たちに襲いかかる突然の災難。大学を設立した学校法人秋元学園が突如経営破綻、房総自由大学を「解散」すると言うのだ――それじゃ、おれらは卒業できないわけ? すでに留年必至だった四回生の部長・シンジをはじめ『極楽鳥研究会』のメンバーたちはあわてふためく。だが、ひょんな経緯から『顧問』にされた非常勤講師・行行林(おどろばやし)とも協力しながら調べてみると……あるわあるわ、学生たちを食い物にする大人たち(秋元理事長、文科省加瀬局長、房総田辺組組長ら)の陰謀の数々。なんとここは、ブラック企業ならぬブラック大学。秋元理事長がはじめから○○のためだけに建てた大学なのだった。 ブラック大魔王 vs. 下流大学の七人の極楽トンボたち――はたして不揃いすぎる彼らは、大学廃校という巨大な流れをせき止め、無事に卒業できるのか? メンバーたちは、それぞれの特技(高所平気症、ナンパ、録り鉄……)を生かして廃校劇の内幕を暴き、とまどい、ズッコケながらも対抗策を模索する。
ステキな表紙イラストはスカイエマさん。表紙から裏表紙まで、主要登場人物7人全員が「ボーソー」している贅沢な絵柄です。エマさんはこの作品のためにノリノリでお仕事をしてくださり、もう一枚、表紙絵の案を書いてくれました。こちらも勝るとも劣らない出来映えで、作者としては捨てがたかったのですが、題字や帯など、他の要素とのレイアウト上の問題で、こちらに決まりました(今回使わなかった絵は、後に文庫の表紙として復活しました!)
「おれらの大学(ガツコウ)が無くなるぅ!?」 帯の推薦文は、畠中恵さんと森見登美彦さんにいただきました。ご両人とも賞の後輩ながら今や大流行作家! お二人とも、過分なお言葉をお寄せいただき、ありがとうございました。
麦酒アンタッチャブル(2008 祥伝社)
今度のは(いつものことながら)これまでのどの作品とも違うテイストの「役人コメディ」。自分で説明するのはむずかしいから、公式の解説を借りれば、
「コップ5杯のビールなら、3杯は税金だ」財務省酒税課に出向中のキャリア警官魚崎は、アルマーニを着る変わり種官僚の根津に、ある秘密パーティへ誘われた。熱気あふれる会場に集う怪しげな紳士淑女。彼らは非合法の麦酒自家醸造家たちであった。魚崎は、自らも密造に手を染めてしまう。だが、これこそ、自称特別捜査官・根津の狙いだった!アンタッチャブルな暴走官僚に翻弄される魚崎。そして、自ビール愛好家たちとの、妄想だらけの闘争!悪夢の脱税取締の行方は!?芳醇なコク、極上のキレ味!傑作エンターテインメント誕生。
ビールと言えばこの人! というわけで、デビュー以来大変お世話になっている椎名誠さんにお願いして、
「嬉しくて怖くて ビール好きにはヤバイ話だ でも最後にぐわっと元気が出るぞ。」
というありがたい帯をいただいた。装丁は松昭教さん。表紙は「枝豆を載っけたキリスト」とばかり思っていたら、バッカスだとのこと。本文挿絵は浅賀行雄さん。本文中のわずかな記述からキャラを造形していただいた手腕に舌を巻く。特に敵役カポネの「ちょい悪オヤジ」風のルックスには書いた本人が笑い出してしまった。
天平冥所図会 (2007 文藝春秋)
別冊文藝春秋」に6回にわたって掲載された連作歴史中編『天平DINKS』を、ほとんど全面的に改稿した作品。
人々が闇に息づく魑魅魍魎を信じ、共に暮らしていた天平時代。平城宮で葛木連戸主と広虫の役人夫婦が幽界顕界とびこえて活躍する!
青丹よし奈良の都は~と万葉集に歌われた華やかなりし天平時代。権謀術数を巡らすのは重役でも、下っ端役人とはいえ否応なくその争いに巻き込まれ、上手く立ち回らねば無実の罪を着せられ、職を追われ、下手すれば命さえ狙われる。大仏建立に絡む行方不明事件をきっかけに親しくなったちょっと歳の離れた葛木連戸主(かつらぎのむらじへぬし)と和気広虫カップル。この二人がやがて夫婦となって、時に怨霊の力も借りつつ、権力悪に立ち向かう! 史実をもとに花開く、会心の天平ファンタジー絵巻登場。
瑠璃の翼 (2004 文藝春秋)
ノモンハン事件(ハルハ河戦争)の空を舞台に、実在の飛行戦隊「稲妻部隊」隊長・野口雄二郎(山之口洋の祖父)と、戦闘機パイロットたちの活躍を描いた歴史小説。生き残ったパイロットや関係者たちへの丹念な取材をもとに、国境の空で繰り広げられた激闘を活写しています。主人公と交流のあった北原白秋の詩も絡め、日本航空史を縦糸に、参謀と兵や国民の狭間に咲いた一将校の人生を横糸に、昭和史の一時代を描いたスペクタクルです。
われはフランソワ (2001 新潮社)
長編第二作は、中世フランス最大の詩人・フランソワ・ヴィヨンを主人公とした空想歴史小説です。 出版のときの宣伝コピーから…… 「大泥棒にして人殺し、だのにフランス文学史上最高の抒情詩人と今なお讃えられる破天荒な男-フランソワ・ヴィヨン。謎につつまれていたその生涯を現代に甦らせたピカレスクロマン。」
第125回直木三十五賞の候補作品に挙げていただきました。受賞作は藤田宣永さんの『愛の領分』(謹んでご冥福をお祈りいたします)。
0番目の男 (2000 祥伝社文庫)
最近わりあいメジャーになった感がある祥伝社400円中編シリーズの、第一期21点の中の1冊です。
2010年、深刻な環境破壊などの危機を打開するため、クローン技術によって優秀な人材を「大量生産」する計画に協力した環境工学技術者マカロフは、千人のクローン人間の「親」となった。七十年の人工冬眠の後、彼が見た、成長した「分身」たち――あり得たかもしれない別のマカロフたちの姿とは?そして「オリジナル」の運命は? 起こり得る未来を描く、感動の傑作SF!
いよいよヒトクローン誕生が噂される時代になって、なんだかひしひしとデジャブを感じています。
オルガニスト(1998 新潮社)
第10回日本ファンタジーノベル大賞 大賞受賞作。小説デビュー作です。この作品以前には小説など書いたこともないため、突然のデビューで在庫のなさにあたふたしました。出版のときの宣伝コピーから。「交通事故で肉体の自由を失ったある天才オルガニストの、音楽に賭ける純粋な思いは、やがて師との確執を生み、さらに巨大な悲劇につながってゆく。愛と友情、才能、信仰、芸術、テクノロジーが織りなす、バロック・ファンタジー!」後に、NHK『青春アドベンチャー』でラジオドラマ化。奇しくも声優・塩沢兼人さんの遺作となってしまいました。