2-7 コンピュータの使用

明治大学情報コミュニケーション学部教授
メタ超心理学研究室 石川 幹人

 本項では,PSI実験でのコンピュータの使われ方,および問題点について触れる。

<1> PSI実験へのコンピュータ導入

 初期のコンピュータは大型だったので,主にデータの解析に使われた。ラインは1962年,大量のESPテストのデータ解析に初めてコンピュータを使った。ESPターゲットを初めてコンピュータで生成・提示したのは,シュマイドラーで1964年のことである。コンピュータは,時間的転移効果(4-6)などの隠れたパターンの発見から,それらの統計的分析まですぐに広く使われるようになった。他の研究者が集めたデータの中から,別の研究者が特徴的な傾向を見出す有力な道具となる(4-5)一方,不審なデータもコンピュータ分析によって発見された(1-7)。
 コンピュータ技術が進歩し,小型化・マイコン化がなされると,実験システムの自動化に貢献するようになる。ホノートンらは1986年,ガンツフェルト実験の自動化を行なった(3-2)。アレクサンダーは1999年,脳波を使った自動PSI実験システムを作成した。また,自律走行ロボットが作られてPSI実験に応用された(3-6)。
 コンピュータゲーム感覚のPSI実験も,被験者を飽きさせることが少なく,とくに子供のPSI実験には最適である(4-4)。ブラウトンは1986年に,サイコロゲーム(OINK)をコンピュータ画面上で行なうPSI実験を実施した。その後,トランプ占いや株式売買シミュレーション,ロールプレーイングゲーム(RPG)にPSIの要素を組み込んだものも作られた。

ブラウトン(OINKの実験を見守るブラウトン氏,RRC提供)

 パソコンが普及すると,持ち運びのできる実験システム(3-7)が作成でき,さらにそれを複製して他の実験者に再実験してもらうのが容易になった。ホノートンらは1986年,ESPerciserというESP実験ソフトをアップルBASICで作成した。その後,パソコン上で多くの実験ソフトが開発されている。
 インターネットが利用できるようになると,さらに可能性が広がった。1995年にはビールマンが,1998年にはシュタインケンプが,インターネットを介した遠隔PSI実験を行なった。変わった実験としては,マクダーモットが1997年に,インターネットの回線速度をPSIで変える実験を行なった(遅くするほうは有意な結果が得られた)。ポ−ル・スティーヴンスは1998年に,レーザービームを使った乱数発生器の出力に,WWWを介して遠隔地から影響を与える公開実験を行なったが,被験者と実験サイトの間の距離に依存しない,有意な結果を得た。
 現在では,インターネットを利用して,全地球的に協力してPSI実験を進めるプロジェクトも進行している(3-7)。

<2> PSI実験ソフトの実際

 次のWEBサイトでは,PSI実験の体験が可能である。実験データを収集しているサイトもあるので,説明(英語)をよく読んで利用されたい。

サイコロゲーム
http://www.pni.org/research/anomalous/dice/

ESPカード
http://moebius.psy.ed.ac.uk/~paul/zener.html

FreakiFifi
http://moebius.psy.ed.ac.uk/~fiona/fifiintro.html

過去遡及的PK(3-5)
http://www.fourmilab.ch/rpkp/experiments/contents.html

リモートビューイング(3-3)
http://www.gotpsi.org/bi/gotpsi.htm

PSIアーケード
http://www.psiarcade.com/

直観診断(2-4)
http://www.psiarcade.com/diagnose/intro.html

<3> コンピュータ使用上の利点・欠点

 PSI実験をコンピュータによって自動化する利点は多くある。まず,実験の進行・記録がソフトウェアの形で実現されるので,誤りが少なく確実な実験が実施できる。そしてそれによって,実験者がこまごまとした仕事から解放されるので,実験中,他の必要な仕事に専念できる。実験者が被験者に与えてしまう心理学的な影響も軽減できる。それは結果的に,リラックスした雰囲気の実現につながるだろう。将来的には,実験システムを被験者に貸し出して,実験者不在のまま被験者の自宅などで,確実なPSI実験ができるようになるだろう(8-5)。
 コンピュータ使用上の問題は,主に利用者の過信にある。コンピュータを慎重に利用すれば,防ぐことができるだろう。まず,コンピュータによる分析には誤りがないとは限らない。ソフトウェアのプログラムに誤りが内在しているかもしれない。2つ以上の(できれば2人が異なるプログラミング言語で書いた)ソフトウェアで相互にチェックすると確実である。PSI実験によく使われる乱数(2-3)も,偏ってないかどうかチェックが必要である(各種の乱数検査法がある)。記録されるデータも,実験者などによって作為的に書き換えられてしまう可能性がある(1-7)。改ざんしにくい紙などに自動印字して,その都度証拠を残すように工夫すべきである。将来は,認証技術を利用して確実に証拠を残せるようになることが期待される。
 未来を予知したと思ったら,その情報を未来の出来事より前に書き込んでおき,予知の証拠とするようなWEBサイトの利用法も考えられる。

予知情報の記録サイト(英語):http://mainportals.com/precog.shtml
↑以前のサイトはリンク切れしていたので改訂した。
(情報をお寄せいただいた村上氏に感謝する。2004年1月)

<X> 付記

 本項の内容はSSPにおけるブージュア氏の講演をもとにしている。彼はRRCのコンピュータ・スペシャリストである。
ブージュアボブ・ブージュア氏


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