新ウェブサイトの公開について
2009年6月、明治大学古代学研究所は、「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」として新たにスタートいたしました。 それにともない、当研究所のウェブサイトのURL(アドレス)は、 「http://www.kisc.meiji.ac.jp/~meikodai」 に変更となりました。お気に入りやブックマークなどに登録されている方は、お手数ですが設定のご変更をお願い致します。 当ウェブサイトは文部科学省学術フロンティア推進事業(2004〜2008年度)の研究成果を掲載しております。各種データベース、今後の研究会のお知らせ等は、新ウェブサイトでご確認ください。
プロジェクトの構想
これまでの古代文化研究は、歴史学(日本史・東洋史・西洋史)・考古学・文学・美術史学・文化人類学などの分野で個々に行なわれてきた。また、共同研究の場合もせいぜい2分野にわたるか、歴史学の地域別分野の共同研究であった。 本研究では、歴史学・考古学・文学・美術史学・文化人類学の学問分野を統合し、学問分野から個別的に構想される古代の枠組みではなく、古代の「ひと(人)」「もの(物)」「こと(言説)」に対する全体史的な古代学(古代文化学)の構築を企図している。そのため、重点的研究領域「日本文化研究」のうち、「日本古代文化における文字・図像・伝承と宗教の総合的研究」をテーマに掲げ、万全の共同研究体制を構築した。 具体的には、新たな視点から3つのサブプロジェクトを組織する。各サブプロジェクトには、課題に必要な学問分野の研究者を配置し、文字どおり共同に研究が実施できる体制をつくる。データベースの作成など、RA(明治大学大学院博士後期課程の院生)の調査・入力作業は共同研究室で行なう。このサブプロジェクトを主軸にして研究し、さらにそれぞれの研究成果を有機的に結合して、古代文化に対する総合的研究の達成を意図するものである。 @ 国家形成と文化・宗教 東洋史と西洋史との比較から、日本列島社会の成り立ちと古代文化の根源を探る A 文字・画像研究 出土文字資料と画像資料から、日本古代文化の基層に迫る B 伝承・宗教文化研究 古代の伝承・文学・宗教的諸相から、今日に通底する精神・文化世界を浮き彫りにする。
研究組織と特徴
各サブプロジェクトの特徴
研究は、3つのサブプロジェクトを中心にして、研究する態勢をつくっている。各サブプロジェクトには、研究分担者がRAとともに研究するが、サブプロジェクト別の研究課題は次のようになる。 サブプロジェクト@「国家形成と文化・宗教」 東洋史と西洋史との比較から、日本列島社会の成り立ちと古代文化の根源を探る。 *弥生・古墳・律令期の権力構造の解明 *西洋古代国家との比較研究 *国家形成論の理論的構築 サブプロジェクトA「文字・図像研究」 出土文字資料と画像資料から、日本古代文化の基層に迫る。 *出土文字資料のデータベース構築 *意思の伝達法として、文字資料と律令法との比較研究 *日本古代の画像資料における宗教思想・文化の研究 *中国石刻資料の集成と日本の文字資料との比較研究 サブプロジェクトB「伝承・宗教文化研究」 古代の伝承・文学・宗教的諸相から、今日に通底する精神・文化世界を浮き彫りにする。 *物語と説話文学にみえる宗教性の研究 *祭祀における表象と伝承の関連を分析・総合化 *中国・韓国との伝承・祭祀の比較研究 各サブプロジェクトの相関関係を図解すれば、下図のようになる。
研究計画の概要と特徴
サブプロジェクト@ 西日本の弥生墳墓データベースは、これまで地域ごとに個別的な集成が行われてきたのに対し(例えば吉備や山陰のみに限定)、対象地域を相当拡大していることが大きな貢献である。これによって、弥生墳墓の微細な地域差を明らかにすることができるし、さらに階層関係が進んだ地域とそうでない地域の違いが分別できることになる。 関東の後期古墳データベースも、対象地域を広くとったことにより、別々の地方自治体に属したために、単一の古墳群であるにもかかわらず、異なった古墳群と認識されていた例などを抽出し、今後の研究の基盤形成に貢献できた。さらに大きな意義は、これまで学界であまり注意が払われてこなかった、削平された小古墳も重視し、前方後円墳以外の中小古墳を初めて集成したことである。このプロジェクト前半に取り組んだ対象地域である栃木県は古墳の集成が遅れていた地域であるため、関東の古墳研究への寄与も大きい。 また、国家形成史の一環として都城の歴史的研究を継続する。日本列島における都城の変遷の実態と都城における政事の研究は、歴史学・考古学の研究に資するだろう。 サブプロジェクトA 墨書土器データベースは、日本で唯一の公開データであり、出土文字資料研究の前提となる画期的なデータ集成である。このような全国的な墨書土器の釈文データベース構築することは、初めての試みである。特に、関東地方から出土した墨書土器の釈文が画像とともに閲覧できるため、釈文のみが一人歩きする弊害を避けるとともに、墨書土器研究の裾野を広げることが可能となり、今後の出土文字資料研究の基礎となる。このデータベースは、今後の墨書土器研究の範になるであろう。 また、文字瓦に焦点をあて、全国的な集成をことは日本最初であり、今後の文字瓦研究の画期となるだろう。この成果により、古代手工業生産の実態を考古学的に検証できるようになるばかりか、歴史学・日本語学などの隣接諸分野との協業の道が開かれる。 令集解データベースの構築・公開は、日本古代史学界の念願であり、研究者・学生が自由に文字列を検索できることになる。この結果、古代史の重要史料の一つであり、かつ難解な『令集解』がより活用しやすくなり、今後の律令法研究にとって大きく貢献することになる。 石刻史料の集成は、国内外で研究への関心が高まっている。とくに中国南北朝から隋唐時代にかけては密度の濃い研究として評価を高めているが、その際、必ず研究の起点として引き合いに出されるのが、『新版 唐代墓誌所在総合目録』(東洋史研究室)であり、継続して刊行する北朝・隋代の目録などにより古代学研究所の業務が注目されている。 サブプロジェクトB 『遺老説伝』は、史書ではなく説話集であることから、これまで歴史学からほとんど無視されてきた資料である。現在、テキストデータベースの作成と、本文校訂・注釈という基礎的作業を進めている。本研究は、沖縄関連文献の歴史学偏重を解消し、文学・民俗学・民話学、および歴史学等の研究に対して、一定の資産価値を持つという意味で、今後に益するところが大きい。 『源氏物語聞録』は新出資料であるため、翻刻紹介の意義も極めて大きい。徳島藩における藩主・藩士を対象とした、儒者による源氏物語講義という点でたいへん珍しく、近世における源氏物語享受史研究に貴重な資料を提供する。また、シンポジウムと著作を通じて、考古学と歴史学、建築史学から『源氏物語』の背景としての歴史を公刊し、源氏物語研究者がそれを作品論として深めることに資している。
研究分担者
律令制時代の王権と社会の研究、及び墨書土器のデータベース構築と文字資料と律令法との比較研究。
佐々木憲一
関東甲信越における弥生・古墳時代墳墓の地域性研究と国家形成論の理論的構築、及び文字瓦と瓦の研究。
第1サブプロジェクト研究総括。日本考古学からみた古代文化と国家形成論研究、及び日本考古学からみた文字・図像研究。サブプロ@とA担当。
第3サブプロジェクト研究総括。日本中古文学からみた物語・宗教研究。サブプロB担当。
古山夕城
西洋古代国家における墓制祭祀と神話研究と、日本古代との比較。
石川日出志 (平成17年より参加)
有富純也 (平成20年より参加)
明治大学古代学研究所 研究推進員
研究施設等
古代学研究所の共同研究室(現在は、11号館地下1階)は、本プロジェクトの研究推進に関して本部事務室としての役割を持つ。また、外部の共同研究者が利用できる施設でもある。 古代学研究所は、毎週月曜日〜金曜日の10時〜17時に常時開室するようにし、毎日、嘱託職員が勤務して、会計を含む日常的な業務を担う。そして、RAが数人勤務し、業務に従事する。土曜・日曜日も使用することが可能である。 また、墨書土器データベースの作成をはじめとする、各種アルバイト(大学院生)の作業は研究所を使用して行なっている。こうして作成された諸資料や、各地で収集した史・資料の保管庫にもなっている。