8.芥子(けし)の実の教え 「諸仏尚不免」(『阿含経』)を読むための補助線 昔のインドの話。吉離舎瞿曇弥(きるしゃくどんみ。Kisagotami)という名の若い女がいた。 彼女は裕福な家の若い嫁だった。ある日、彼女の幼いひとり息子が死んだ。 彼女は悲しみのあまり発狂し、冷たくなったわが子の死体を胸に抱くと、町に出て、だれか子供の病を治せる者はいないか、必死でたずねまわった。 「お願いです。この子の病気を治してください。ぐったりとして息もできず、体は冷たく、背中には青黒い斑点ができてるんです」 町の人びとは同情したものの、何もできなかった。 最後に、この狂った母親は、わが子の死体を胸に、祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の釈尊(しゃくそん)のもとを訪ねて、 「お願いです、この子を助けてください!」 と必死で頼んだ。すると釈尊は言われた。・・・・・・ もし、あなたが釈尊だったら、彼女にどう答えるか。 オリジナルの説話の結末はパーリ語仏典「長老尼偈・注」に書いてあるが、それと関係なく自分で考えよ。 解答・解説は授業で。キーワードは「真層現実」。ヒントは『漢文力』第2部第4章。 |