HOME > 哲学的問題集 > このページ
5.「how」と「why」
「不知為不知」(『論語』)を読むための補助線

 昔の中国の話。ある男が結婚し、妻の実家でいっしょに暮らすことになった。
 数ヶ月後、妻の実家では、この婿(むこ)は頭が良くないのではないかと疑った。
 あるとき、舅(しゅうと)は盛大な宴席をもうけて親類を招き、婿の知能を試すために質問した。
「君は勉学を積んだそうだが、きっとものの道理をよく知っているはずだ。さて、そこでたずねるが、鴻鶴(こうかく)(オオトリやツル)がよく鳴くのは、なぜか?」
 婿は、
「自然にそうなのです(原文:天使其然)」
 と答えた。舅は続けてたずねた。
「松柏(しょうはく)が冬でも青々としているのはなぜか?」
「自然にそうなのです」
「道ばたの木の幹にコブができてるのはなぜか?」
「自然にそうなのです」
 舅はあきれて言った。
「君は全くものの道理を知らぬ。いったい、何を勉強してきたんだ。いいかね、鴻鶴がよく鳴くのは頸項(けいこう)(くび)が長いからだ。松柏が冬でも青いのは芯(しん)が強いからだ。道ばたの木にコブがあるのは車があたってすりむけたからだ。自然にそうなったはずがない」
 舅が得意満面にそう答えると、婿は、
「私が見聞したところをもってお答えしてもよろしいでしょうか?」
 とたずねた。舅が「言ってみなさい」と答えると、婿は、
「×××××××・・・・・・?」
と反論を述べた。その答えを聞いた舅は、何も言えなくなってしまった。

 さて、婿は何と反論したのだろうか。これは漢文の笑話集『啓顔録』に書いてある話だが、オリジナルとは関係なく自分で考えてみよ。

解答・解説は授業で。キーワードは「既知、未知、不可知」。ヒントは『漢文力』第2部第1章。

[] [] [大画面]