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1.「異常」と「正常」の区別はどこまで可能か
「安知魚之楽」(『荘子』)を読むための補助線

 作曲家の團伊玖磨さんは、生まれつき色覚が異常で、緑色と赤色の区別がつかなかった。
 しかし彼は小学生になるまで、それを自覚せず、世界中の人は自分と同じように色が見えているのだと思っていた。(『漢文力』47−48頁)。
 もしここに「生まれつき、緑色が赤色のように感じられ、赤色が緑色のように感じられる」という「赤緑逆転」(せきりょくぎゃくてん)の色覚異常をもつ人がいたと仮定する。
 團伊玖磨さんは小学校の図工の時間に花の絵を描いたとき、他人と違う色の絵の具を使い、それで色覚異常が判明したわけである。しかし、赤緑逆転の色覚異常をもつ人の場合、結果的に絵の具は正しく選択できる。信号の色も、旗の色も、万事が同様である。とすると、

(1)この人は、自分が死ぬまでのあいだに、自分の色覚が異常であることに気づくであろうか?
(2)あなた自身、自分が赤緑逆転の色覚異常をもっていないと、論理的に証明できるか?

解答・解説は授業で。 キーワードは「独我論」。 ヒントは『漢文力』第1部第2章−第4章。

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