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 拙著『漢文力』の装丁(そうてい)をしてくださった南伸坊先生が、なんと、拙著の書評を新聞に書いてくださいました。感激!

平成16年(2004) 9月12日(日) 『産経新聞』書評欄より

【旬を読む X氏の一冊】イラストレーター・南伸坊『漢文力』
加藤徹著(中央公論新社・1890円)

書き手の面白さが爆発

 著者の加藤徹さんは、嘉藤徹のペンネームで『倭の風』『小説封神演義』など小説も書く、大学の先生である。
 専門の中国文学の方では、中公叢書で出した『京劇−「政治の国」の俳優群像』でサントリー学芸賞を受賞したと、著者紹介に書いてある。
 私は、これらの事を全く知らないでいた。だから、書店でこの本を見つけても、縁がなかったかもしれない。
 ところが、私がこの本を読んでとても面白く、ひとにもすすめたくなるくらいにひきつけられてしまったのは、この本の装丁をしたからなのだった。
 以前、自分が装丁をしてかかわった本を、こんな欄で紹介しようとしたところ、それはコマルということになった。つまり関係者の仲間ボメのようなことになるのがマズイということらしかった。
 しかし、装丁者というのは、本の内容に関しては実は関係者ではないのだ。早目の読者ではあって、本になる前のゲラ刷りというのを読むのだが、読んでいるうちにモーレツにひとにすすめたくなってしまった。
 この本は、ジャンルとしては昔から「よくあるタイプ」である。「中国古典に学ぶ知恵」とか「中国古典故事成語」とか、役にも立つだろうし、勉強にもなるだろうが、自分では買って読まないなといったジャンル。
 ところがこの本は一味違う。
 帯にこうある。「正解は古典にあり!」。そうして正解の問題が沢山ちりばめてある。たとえば「松田優作が今も人気のある理由は?」とあって正解は『老子』にあるらしい。
 「心霊写真の幽霊はヌードでなければならない?」というのの正解は『論衡(ろんこう)』にある。
 「負けてばかりの劉邦が天下を取ったのはなぜか?」というのは『十八史略』に。
 天職につくのは、ほんとうに幸せか? ←『韓非子(かんぴし)』
 自分と他人はちがう世界を見ている? ←『荘子』
 自分のみたい夢をみる技術は果たしてあるか? ←『列子』
 という具合に、さまざまな疑問の解答が、中国古典にある…という形で書きすすめられているのである。
 この本は、中国古典の紹介本とか、漢文的思考法の本、という形をとりながら、実は、理科的、哲学的好奇心や、現代的な話題、視点をもった著者自身のおもしろさがバクハツするスーパーエッセイなのだった。おもしろくてタメになる本だ。
 みなみ・しんぼう 昭和二十二年東京生まれ。イラスト、装丁など多方面で活躍。著書に『本人の人々』ほか。


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