2019年11月23日(土)明治大学「アカデミックフェス」2019 at 駿河台キャンパス 企画名 九尾の狐カフェ Nine-Tailed Fox Café 2019(加藤 徹)12:00〜18:00 アカデミーコモン2F ROOM-D(A5会議室) コーディネーター:加藤 徹 コンセプトは「学術喫茶」。お客様にお休みいただきながら、学問の面白さに触れていただく休憩所的スポットです。お気軽にお立ち寄りください。 雰囲気は、学園祭の教室展示。テーマは、古今東西の「九尾の狐」。教員や学生が常駐し、お客様とパネル展示の図像や動画を見つつ、九尾の狐について気軽に雑談をします。 「九尾の狐」はアジア共通の伝統的キャラクターです。日本語ではキュウビノキツネ。中国語では“九尾狐”(ジウウェイフー)。韓国語では“구미호” (クミホ)。英語では“nine-tailed fox”。日本では、那須の殺生石の説話が有名ですね。 九尾の狐は、三千年のあいだ、アジアを駆け巡ってきました。昔の書物や芝居だけではありません。現代の日本や中国、韓国では、漫画やアニメ、テレビドラマなどで九尾の狐の新しいキャラクターが続々と誕生しています。いにしえの玉藻前(たまものまえ)は十二単(じゅうにひとえ)姿の貴婦人でしたが、現代の漫画『非人哉』(ひとにあらざるかな)ではTシャツに短パンのカジュアル女子です。まさに、古今東西、逍遙自在、雅俗混交、不羈奔放! 「大学って、どんなところ?」「大学の人と、気軽に雑談をしてみたい」というかたも、単に腰をおろして休みたいかたも、どなたも大歓迎です。 |
吉川英治『三国志』小説本編の冒頭部より
「茶を」 役人は眼をみはった。 彼らはまだ茶の味を知らなかった。茶という物は、瀕死の病人に与えるか、よほどな貴人でなければのまないからだった。それほど高価でもあり貴重に思われていた。 「誰にのませるのだ。重病人でもかかえているのか」 「病人ではございませんが、生来、私の母の大好物は茶でございます。貧乏なので、めったに買ってやることもできませんが、一両年稼いでためた小費もあるので、こんどの旅の土産には、買って戻ろうと考えたものですから」 (中略) 「おまえ茶をのんだことがあるのかね。地方の衆が何か葉を煮てのんでいるが、あれは茶ではないよ」 「はい。その、ほんとの茶を頒(わ)けていただきたいのです」 彼の声は、懸命だった。 茶がいかに貴重か、高価か、また地方にもまだない物かは、彼もよくわきまえていた。 その種子は、遠い熱帯の異国からわずかにもたらされて、周の代にようやく宮廷の秘用にたしなまれ、漢帝の代々(よよ)になっても、後宮の茶園に少し摘まれる物と、民間のごく貴人の所有地にまれに栽培されたくらいなものだとも聞いている。 また別な説には、一日に百草を嘗めつつ人間に食物を教えた神農はたびたび毒草にあたったが、茶を得てからこれを噛むとたちまち毒をけしたので、以来、秘愛せられたとも伝えられている。 いずれにしろ、劉備の身分でそれを求めることの無謀は、よく知っていた。 ――だが、彼の懸命な面(おももち)と、真面目に、欲するわけを話す態度を見ると、洛陽の商人も、やや心を動かされたとみえて、 「では少し頒けてあげてもよいが、お前さん、失礼だが、その代価をお持ちかね?」と訊いた。 (以下略) |
山泉煎茶有懐 山泉にて茶を煎て懐い有り 白居易 坐酌泠泠水 坐して酌む 泠泠の水 看煎瑟瑟塵 看て煎る 瑟瑟の塵 無由持一碗 一碗を持して 寄与愛茶人 茶を愛する人に寄せ与うるに由無し 山の中の泉で煎茶を楽しみながら思ったこと。透き通った冷たい山の水をくんで茶を点てると、緑色の細かい泡がふつふつと見える。残念だな、都会に住む茶の愛好家に、この至福の一杯を飲んでもらう方法がないとは。 |