研究テーマ紹介

熱音響

熱音響現象とは,熱エネルギと音エネルギの相互変換を行う現象で,環境に負荷を与える廃熱を有効利用する手段として,冷凍機や発電機などへ応用した熱音響エンジンの実用化が考えられている.しかし,実用化には,廃熱が低質なエネルギであることや入熱方法が確立されていないことなどの問題がある.
本研究では,この解決策として,熱音響エンジンをマルチシリンダ化することにより,音波の特徴である「重ね合わせの原理」を利用し,複数のシリンダから音波を集め,エネルギを足し合わせられるかを検証する.また,入熱方法として,熱を有効的に輸送できるヒートパイプを用いた熱交換器の検証を行う.

成層流

安定温度成層流とは温度の異なる二つの流体の密度差によって生じる浮力の影響で層を形成する流れであり,熱や運動量などの混合が抑制できる.これまでの研究から,水平配管内の管内流を安定温度成層化することで乱流が抑制され,管内の圧力損失が減少することが明らかになった.これより管内流を成層化させることにより,ポンプ動力を削減させる効果が期待できる.本研究では,成層化による省エネルギー技術の確立に向けて,一般的な流路系に使用されるT字形,Y字形等の合流管を用いて成層化を試みる.

伝熱面

電子機器などの高性能化が進み、これらからの発熱を効率よく除去する技術が重要となっている。一般的に熱交換器の伝熱に強制対流熱伝達が用いられており、その効果を向上させるための手法として伝熱面の粗面化があげられる。
本研究では、報告例の少ないショットピーニング加工に着目した。これまでの研究においてショットピーニング加工を施した粗面が熱伝達率向上に有効であるとわかった。熱伝達率向上の理由の一つにショットピーニング加工による乱流促進が考えられる。しかし、この加工が乱流を促進する原因については解明できていない。そこで乱流境界層内において、ショットピーニング加工面が流れ場に与える影響の調査を目的とする。

日射・温熱環境

夏期炎天下に駐車した自動車の車内温度は外部気温よりも著しく高温となる.それにより,乗車時の不快感や熱中症を生じる.自動車内の温熱環境は様々な要因が影響しているが,その中でも日射(ふく射熱)が与える影響は大きい.そこで日射がどのように車内温熱環境及び乗員に影響を与えるかを分析することにより,乗車時の快適性の向上につながると考えられる.本研究では,5分の1スケールの自動車モデルを作成し,内部温熱環境を測定する.そこから熱中症指数や作用温度といった指標を用いて体感温度を評価する.又,フロントガラス角度,および天井面積の違いが車内温熱環境にどのような影響を及ぼすかを解明する.

IH

ガス加熱を用いる加熱方法はCO2の排出,排熱による環境負荷,ガスによる危険性などが問題となっている.これらの問題を解決するための加熱方法として,電気加熱が挙げられる.その中で,応答性,制御性,熱効率に優れている誘導加熱に着目する.誘導加熱は,家庭用のIHクッキングヒータや鉄などの誘電体を溶かす溶解炉など用途は様々である.しかし誘導加熱は加熱領域がコイル上のみとなる局所加熱であるため,広範囲な鉄板などの加熱領域に対して適さない.加熱領域を広げることができれば,更に誘導加熱を多様化できると考えられる.そこで本研究では,誘導加熱装置を移動させ,加熱領域を広範囲化することを目的とする.

セラミックスの乾燥

セラミックスの多くは粒界を含む微構造を高度に制御した多結晶体であり、多くの課程を経て製造される。しかし、様々な振る舞いを示すことから取り扱いが極めて困難である。そのため、これまで熟練した技術者・技能者の経験に頼って製造されてきたが、経験のみでは解決できない多くの課題も山積みしてきている。湿潤成形体の乾燥工程における理論統一が得られていないこともこのひとつである。そこで本研究では、湿潤成形体の乾燥工程における水分移送に関する研究を行い、メカニズムを解明することを目的とする。